God is in the details ~神は細部に宿る~

一箱古本市専門店《吉田屋遠古堂》主人のぐうたらな日々。。。。

あなたは音質重視派?臨場感派?それとも・・・

2005-09-17 17:10:10 | その他
 さて、bootlegのもう一つの楽しみは、未発表音源に出会えることである。これも二つのパターンがあって、ライブ録音のものと、デモテープやアウトテイク(つまり製作段階で没になった曲)あるいはアルバム未収録などのもの。

 ライブ録音はスタッフなどがライン録音したものを横流しする場合と、会場に密かに録音機材を持ち込んで録音する場合がある。まれに、ラジオなどで放送されたものを録音してレコードに仕立てる場合もある。
 これは、たとえばライブ用にアレンジがかわってたり、そのステージ限りのゲストが出演していたり、調子が良かったり悪かったり、MCが聞けたりととにかく同じものがない。Peter Gabrielが曲の入りを四回もとちったり、Peter GarielのステージにゲストでPeter Hammillが出でいたり、Peter HammillとC.J.Smith二人だけのツアーがあったり、Joy DivisionがSection23(だったっけ?)とセッションしていたり、Kevin AyersのツアーメンバーにPolice加入前のAndy Summersがいたり・・・絶対に正規発売されないもの目白押しである。

 さて、ライン録音の場合は当然のことながら、音質がいい。あとはバランスとプレスの質の問題であるが、妙に音をいじってかえって聞きにくくなってしまうケースもなくはない。CD時代になるとかなり音質が向上し、たとえば1987年のJethro Tullのアコースティックツアーのものなどオフィシャルよりも良いぐらいだ。

 その一方で、実際にはこれがbootlegの主流なのだが、会場に密かに機材が持ちもまれる場合は、一般に音質は良くはない。最近は小型のデジタル録音機材が発達しているものの、アナログ時代にはワンポイントマイク付きのカセットレコーダーが主流で、「モノラル録音」「マイクの方向がころころ変わるので音位が安定しない」「指向性マイクでないので、観客の歓声がでかい」等々、音質に関しては一般に正規盤の足下にも及ばない。

 たとえば、1982年にミルトンケインズでPeter GabrielがGenesisと共演した伝説的なイベントでは、同じステージにたいして複数のbootlegが製作されている。なかでも質/量ともに充実しているのは「gabacaburiel」であるが、実際に人気があるのは「six of the best」であるという。前者は割合クリアに演奏がおさめられているのに対し、後者ははっきり言ってよほど集中しないと演奏が聞こえないほど歓声がでかい。おいおい、録音係!お前の歌は聴きたくないからマイクの前で歌うな!!と突っ込みを入れたいほどだ。
 では、なぜ後者のほうが人気があるのか?もちろん、bootlegと知っていて手を出すのは、かなりのファンといえるのだが、実際にイベントに出かけた人間にも、いけなかった人間にも、このイベントは本当に重大な出来事だったのである。そして、このイベントの真のクライマックスは,Peterがかつて在籍していたGenesisのレパートリーの途中で歌詞を忘れ、観客の大合唱がそれを助ける場面である。なんと感動的な!
 そう、このアルバムに針を降ろしたとたん、まるで自分がその場に居合わせたかのように思えるのである。究極の臨場感!  bootlegを買う多くの人たちは、演奏を聴きたいだけではなく、その場にいたかったのである。
  オフィシャルのライブ盤の場合は、そのツアーのなかで演奏の良いものを継ぎ合わせて一つのコンサートを再現する場合が少なくないのに対して、bootlegの場合は、だいたいにおいて一回のコンサートをまるまる(あるいはそのハイライトを)収録しているのが常である。最高の演奏を揃えるのがオフィシャル、そのとき一回限りの演奏の記録がbootlegといえるかもしれない。そういう意味では、 bootlegのほうがより臨場感があってスリリングであるといえよう。

 アウトテイクやデモをおさめたものが出回るようになったのは、比較的最近(とはいえ、20年ぐらい?)のことである。かのBeatlesの「Ultra rare tracks」(うろおぼえ)シリーズには、1枚まるごと「strawberryfields~」のアウトテイクスというのもあったっけ。 ちょっとちがうけど、Peter Gabrielのオーストラリア盤ライブ3枚組のD面にはコンサート前のサウンドチェックの様子が21分間収録されていた。貴重といえば貴重な音源ではあるが・・・ちなみに、この時のコンサートのハイライトでは「across the river」というシングルB面の曲を16分間演奏しているのだが、さらに続けてアンコールで同じ曲を3分30秒演奏している。

 Joy Divisionのアウトテイクスを愛聴していたのだが、後年になってさらに充実した音質のいいCDが発売になったというのもある。

 さて、bootlegというのは、どちらかといえば組織的に作られるものである。そのため、bootleg専門のレーベルというのも存在するし、パッケージを開けるとカタログが入っていたりするものもある。そういった大きな組織はコレクターや業界関係者とコネクションを持っており、大量の音源を入手できる立場にあるらしい。ちなみに少数ではあるが日本国内プレスのbootlegも存在しており、来日公演を収録したbootlegもある。しかしながら、収録された国と製作される国は必ずしも一致してはいない。著作権の保護期間の短いイタリアで製作されるケースが多く、他の国であれば違法と見なされるものでも著作権フリーで誰でも発売できてしまうという状況もある。こうなるとほとんどどれがbootlegかわからない。

 一般にbootlegはアーティストにたいしてまったくのデメリットしかないので、ファンとしては絶対に手を出してはいけないのであるが、そこはファン心理。ついつい買ってしまうのである。こんな状況に業を煮やして立ち上がったのがかのFrank Zappaである。かれは自分に関するあまりにも膨大な数のbootlegを相手に、戦いを挑んだ。彼のbootlegの中でもっとも評判の高いbootlegを数枚選んで、格段に良い音質のマスターを使用した以外はまったく同じ内容・仕様で公式に発売したのである。名付けてbeat the boots!シリーズ。とはいえ、それほど売れ行きは芳しくなく、bootleg業界ではboot the beats!というbootlegまででる始末。

 ああ、道は険しいbootleg道(笑)たとえば、2枚組のLed zeppelinのbootlegを買ったとしよう。そのD面にいきなりbootleg制作者がやっているzepのアマチュアコピーバンドの演奏が収録されていたらどうします??ものすごく音質の良いGenesisのライブ盤、でもよくよく確認したら、オフィシャルのライブLDから音声だけ落として曲順を変えただけだったら、どうします?私的には前者は可、後者は不可です

海賊の盤にのせて、人が聞いたことのない音楽を聞こう

2005-09-16 22:07:15 | その他
海賊版、ブランドのコピー商品のことではない。

通常、bootlegブートレグ、略してブートと呼ばれることが多い。
つまり、製作者、著作権保有者の許可/許諾を得ずに非合法に販売される
音盤(レコード/CD/DVD)等のことである。
みんなやっているCDを無断でHDやCD-Rなどに複製する作業は、
販売を伴わなければ「違法コピー」であって、海賊版とは呼ばない。

 内容は大きくわけて2種類ある。一つは既に入手困難になってしまった既発表音源(オフィシャル)の無断再発である。
たとえば、私の持っている「Brian jones presents the Pipes of Pan at joujouka」や、「Amon Duul / Psychedelic underground」は、違法な再発版である。しかし、ジャケットはオリジナルLPそのままで、何食わぬ顔で店頭に並んでいた。ご丁寧に「限定再発」の冠をかぶって!!
 そこで、問題である。違法な無断再発であるのに、もともとの音源はどこにあるのだろう?まさか商品化するために制作した録音のオリジナル音源(マスターテープ)をレコード会社やアーティストが無断再発者に提供するはずもないし、そうしてもらったとしたら無断再発のブートにはならないわなぁ。ごく稀にレコード会社と険悪な関係になったアーテイストが自分でマスターテープを横流しすることがあるらしいけど。

 で、まぁレコード会社の関係者からマスターが横流しされるのはまだ良いほうである。ひどいのになるとレコード盤を再生して、それをライン録音してCD化するという荒技を使うものもある。Amon Duulのほうがこれで、ちょっと凄かった。使用したレコードが「針とび」するものだったのだ!!ご丁寧に一度針をあげて、少し進めて針を降ろすという親切さ(笑)

 そんな内容は見抜けない!しかし、夢の中でまでアルバイトに励むものが続出したという「廃盤洗礼」を受けたものたちにとって、「聞いてみたい」という気持ちは抑えがたいものであり、多少のリスクは覚悟の上であるし、高い授業料を払ってそうした経験を積んで、初めて「こりゃだまされた」とちょっと愉快になるようになるのである。決して粗悪品を見抜いて手を出さなくなるわけではないところが始末に負えない。限定再発にはご用心!!

 ちなみに廃盤洗礼とは、70年代末にイタリアものを中心に、プログレッシブロックのアルバムが軒並み廃盤になり(というよりあまり売れなかったから再プレスできなかったのか?)、新○レコードを中心に価格が時代を先取りバブル経済状態になってしまった状態を指す。その頃から断片的なものではあるが少しずつイギリス以外のプログレッシブロックの情報が入り始め、人々は先を争って狂ったようにまだ見たこともないレコードを、値上がり前に押さえようと必死だったのである。

「廃盤セール」の前日にレコード屋の前に出来る徹夜組、レコード棚(通称餌箱)から1コーナー全部抜いてレジで札束を払い、レコード屋の階段でやおら品定めをして不要レコードを買い取りコーナーに持ち込む奴、さらにはそいつが手元に残しておいたお目当てのレコードを「譲ってください」となきながら抱え込む奴(これは珍しく若い女性であった。訳あり??)。ああ、いやだいやだと思いながらも「今度の再発はギリシャ盤らしいですよ」との店員の会話を小耳に挟んで、即座に価格未定オーダーを入れた私も、充分自分が嫌になっている(笑)ちなみにそのときにオーダーを入れたのはPeter hammillの「OVER」であった。

それで思い出した。渋谷にある「マ○”ーレコード」はこれに目をつけて、貴重盤をダビングしたカセットテープを売っていたっけ。この店の店長はフレンドリーに「どんなの聞いてるの?」と声をかけてきて、こちらがなんと答えようとじゃあザッパなんてどう?じゃなきゃクリムゾンと勧めてくる人だった。店長は後年、ザッパがCDで再発になったとき、名盤「シーク・ヤブーティ」の解説を書いていたので、その道では有名な人だったらしい。比較的良心的な価格設定の店であった。この店で前出の「OVER」の中古が5000円で売りにでていたのだが、お金をとりに戻ったすきに他の人に買われてしまった。それを買った方と後に偶然話す機会があり、非常に申し訳ながっていた(笑)

あぁ、余計なことで筆が進んでしまった。ま、とにかくそこまでして聞きたい音が、そこにはあったのだ!!

以下、bootlegについてはつづく!