とめどもないことをつらつらと

日々の雑感などを書いて行こうと思います。
草稿に近く、人に読まれる事を前提としていません。
引用OKす。

インスピレーションを阻害する学習のジレンマ

2018-09-08 23:17:36 | 哲学・学術・教育
学習は大事だ。それは誰でも分かるだろう。

世のあまたに生まれたインスピレーションのひらめきと、その検証作業を経て理論的に事実であると認められた体系を効果的に学習し、その知体系を利用して運用することは、現代における高度社会を運用する上で不可欠のものだからだ。

勉強するごとに新しい発見と理解があり、「こうすればいいのか」と言う知的発見の体験がある。


しかし一方で弊害が発生する。
学習したことが全てであると信じ、その知体系の樹形図の先端に実を実らせることばかりに没頭し、新たな木が別にあることを探求する心を減じる。
あるいはそんな他の木があることも推測しない。認識しない。予測しない。
ここで言いたいのは、自分で答えを出す力が養えない、などのレベルの低い話ではない。
人間が今の社会で十全と思ってしまっている先に未来を構築してしまうと言う不全の話である。

それではその先どうすべきなのか? 

学習してきたことを全て捨て、既存に構築された知体系や、人間の認識そのものを疑い、そして新たな真理を発見せしめうることをなすべきなのである。
そしてできうるならば、新たに発見された木と、既存に存在していた木を比較して、更なる知体系を構築すべきなのである。
しかし、学習をより多くなしてきた者が、それが故に、今まで蓄積されてきた全てを捨て去ることはできるのか? 
可能性はゼロではないが、しかしそれは達成するに非常に困難な課題となる。

今の知識が全ての知識として十全ではない。それは歴史の数直線を見れば分かる。

ローマ時代、その当時のローマ人は高度社会を築いており、自らの社会が最新で最先端と言うことを自認していたが、しかし彼らは数字のゼロを概念として保持していなかった。

センメルヴェイスが医療従事者の手洗いを推奨する前、病院内での感染症発生率は今よりも高く、医療従事者は受け入れなかったが、手洗いをすることによってその感染率を大幅に下げた。

既存の認識では誤っている可能性がある。
通俗的に、鏡に映った姿は左右逆だと言う認識で語られるが、正確には逆になっているのは左右ではなく前後である。
古代からの天動説で人々が認識していた”事実”とは、火星や金星はその動く軌道が安定しない”惑う星”(惑星)だったのだが、今は地動説が台頭し、太陽の周りを楕円軌道を描いて進むが、地球からの観測では一定軌道を描かない、と言う認識に帰着した。

六世紀のコスマス層は、その自らが得た聖書の記述の知識通りにギリシャで発見された「地球球体説」を全面否定し、その知体系を「キリスト教地誌学」に著した。

その他、未来の新発見の見立てを考えれば、今の我々が未発見のまま、「最新で最先端」の社会を生きていると誤認し続ける可能性がある。

通俗的に社会の技術的進化とは、地球上のどこかに偏在する”先行した未来的発想”を見つけ、普遍化することにある。
カラー液晶での携帯電話が出たての頃、世界の科学者や未来予測学者は日本の女子高生が持つ”ケータイ”に注目した。日本人の手からこぼれ落ちる未来の破片を持って、今に普及させている(悲しきかな、今は日本人はその舞台から姿を消したように思われる)。

が、偏在した未来を発見して普遍化させるその他にも、自らが新たな哲理的発見に挑んでも良いように思われるのである。

その時にジレンマに悩まされることになる。
今まで得ていた既存の知識、既成概念が邪魔をする。
この時、既存の知体系に対してその先端に果実をつけるのではなく、その木を否定し、別の木を探しにいかなければならないというジレンマにとらわれる。
知体系の樹形図を深く理解してしまったのなら、その木から離れることはままならない。


無論、既存の知体系の樹形図の先端に果実を実らせることは、この社会において最重要課題であり、99%以上の労力を人間社会はここに注力すべきだ。
一方で、人類の知体系を構築するのであれば、別の果実を実らせる木を探しにいく旅があることも忘れてはならない。

日本の芸能の進むべきプロセスの訓示として「守破離」と言うものがある。
最初は師匠の教えを守り、次にそれを完全に修養したならばそれを破り、そして最後はその基礎から離れていく、と言うものだが、樹形図の根っこから果実に向かうまでの道のりで、これは一本の木から離れることを意味していない。

本来あるべき知体系の空白の発見とは、人間の既存認識の枠の外にある。
人類の認識そのものを超えなければいけない枠に存在している。
そこに到達するにはどうすればよいか。
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