前回に続き、「
先住民族サミット宣言文」です。
人類が自然を操り支配できるという考えは誤りであると考える・・・なかなかすてきだと思うのですが。。
これだけのことが行われ、これだけの宣言が採択されたということが、ほとんど世界に知られていないということは、じつに世界の情報が片寄っているということを示しているのではないでしょうか?
これからも、世界でサミットが開かれる度に、先住民族もまたサミットを開き、彼らの視点からの彼ら自身の言葉を発していくことが採択されました。
これからの世界に必要なことだと思います。
彼らがなによりも大切にしている、“世界のバランスを保つ”ために。
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我々の抱える問題と懸念
我々は、この地球の現状にかんして多大な懸念を抱いている。
「母なる自然」は我々を育んでくれる。
我々は、G8 諸国によって促進される「人類が自然を操り支配できる」という考えに基づいた経済成長モデルと近代化は誤りであると考える。
この支配的思考と実践が、気候変動、世界的食料危機、石油価格高騰を招いた原因である。
貧困や、富を持つ者と持たぬ者の格差を拡大し、平和への道を見えなくするこれらの問題は、正にG8 諸国が今回の北海道サミットで取り組もうとしているものである。
我々の抱える問題と懸念は以下の通りである。(略)
G 8 への我々先住民族からの提言
我々の価値観は、互いへの敬意、母なる地球への敬意、そして私達の家族、共同体であり、我々が繋がる全ての生命体への敬意に基づいている。
我々の宇宙観と哲学、伝統的な暮らし、持続可能な消費手段、生き方は、持続可能な世界に繋がる最も効果的な道筋であると考える。
悲しくも、極度に商業化、個別化された消費・個人主義的な世界の中で、我々の価値観は本来それらに取って代わるものとして、先住民族のためだけではなく、その他全ての人類のための指針となりうるにも関わらず、主流から排除されている。
従って、我々はG8 に以下の22 項目を実行するように求める。
1.
先住民族の権利に関する国際連合宣言を効果的に実行し、先住民族に影響する政府開発援助、投資、政策、そして計画には、この宣言を主要な枠組みとして利用すること。
2.カナダ、アメリカ合衆国、そしてロシア政府は、それぞれの国の先住民族が、先住民族の権利に関する国際連合宣言を採択するよう各国政府に要求していることを尊重すること。
そして、ニュージーランド、オーストラリア両政府が同様に採択するよう圧力をかけること。
3.国連による「気候変動枠組条約」(UNFCCC)の全ての過程に先住民族の効果的な参加を確保し、促進すること。
そして地域的な気候変動影響緩和と適応策についての先住民族の作業部会を設立すること。
4.気候変動の緩和対策が先住民族とその共同体に及ぼす悪影響について、先住民族との共同査定と評価を行い、この問題に取り組む為の行動をとること。
5.再生可能なエネルギー資源の一部としての巨大水力発電ダムを排除し、またそれらへの資金提供を停止すること。
原子力エネルギーをクリーン・エネルギーとしてとらえる提案を拒絶すること。
6.我々先住民族共同体における、小規模、地方で管理がなされる太陽熱、風力、水力と潮力を用いた再生可能なエネルギー計画の発展を、技術的そして財政的援助を通じて推進、協力すること。
7.島嶼諸国や海抜の低い沿岸地域の水没、永久凍土層の融解による土地の浸食と破壊、強力な台風とハリケーンや干ばつによる砂漠化など、気候変動の影響のために自分達の国を強制的に去らなくてはいけない先住民族の移住を可能にするため移民法を改正すること。
8.森林や水域の持続可能な管理と利用、そして生物多様性の維持を確保するための我々の生物的資源の保全など、先住民族が世界に提供している環境のサービス(安全な大気、安全な水、肥沃な土壌など)への対価として、企業、政府が財政上や他の手段を通じて、我々に補償するよう求めるキャンペーンのために財政的な支援を提供すること。
9.我々の食物に対する権利、我々の伝統的な暮らしの実践の権利、そして自己決定による発展の権利を保護し、尊重し、確保すること。
これは以下のことを意味する。
我々の食料資源として輪作、放牧、狩猟、採集、そして罠による狩猟、高地での農耕、海洋、沿岸地域での暮らし、手工芸品の発展などの伝統的な暮らしと生業用資源を我々が管理し、アクセスを保証することを確保すること。
我々先住民族共同体への、多額の助成金による安価な農産物のダンピング輸出を停止
すること。
我々の土地におけるバイオ燃料の生産拡大にたいして、我々の自由で事前の十分な情報を得た上での同意がない限りでは、猶予期間を設けること。
食料価格への投機を厳しく抑制すること。
食料カルテルとシンジケートによる食料の買い占めを犯罪とすること。
10.我々先住民族共同体での科学物質集約的な工業型農業の促進を止めること。
そして、我々の土地での遺伝子組み換え種の頒布を止めること。
禁止されている有害な化学物質と農薬、殺虫剤の先住民族共同体、特に開発途上国での、現在続いている利用と輸出を禁止し、処罰すること。
11.先住民族共同体における、先住民族の自由で事前の十分な情報を得た上での同意を得ずして、鉱物、石油、ガス、石炭等を採掘することに関与している多国籍企業の参入促進を停止すること。
我々の領土における環境破壊に関与し、我々の人権を迫害し続けるG8諸
国からの企業は、正義に照らして処断され、彼らが環境汚染しもしくは損害を与えた共同体への補償責任を要求されるべきである。
12.先住民族共同体における軍事化、超法規的殺害に反対する先住民族の運動を支援し、先住民族活動家のテロリスト扱いを速やかに止めること。
破壊的な開発プロジェクトや政策に対するわれわれ先住民族の正当な抵抗を抑制する目的での国家安全保障法や対テロリスト法の適用を止めることを求める。
13.国家による我々の権利侵害に対する異義申し立てを、国際連合の条約機関や、米州人権裁判所(Inter-American Court of HumanRights), アフリカ民族人権委員会(the AfricanCommission on Peoples and Human Rights )ヨーロッパ人権委員会(European Commissionon Human Rights)といった地域人権委員会や人権裁判所へ訴える活動に対し、技術的、財政的支援を通じて支援すること。
14.「アセアン人権憲章」(ASEAN (Association of South East Asian Nations) Charteron Human Rights)に「先住民族の権利に関する国連宣言」を盛り込むことを支持し、これが新設されたアセアン人権委員会の不可分の一部となることを確保すること。
15.我々先住民族共同体においてさらなる文化センターや博物館設立へ支援を提供すること。
多文化教育、二言語教育、先住民族の伝統的な口承教授法ならびに学びと知識獲得に関するローカルな方式を尊重することを通じて学習ならびに教育方法を利用すること。
先住民族言語を教授する言語コース利用を促進する教育機関やプログラムの設立に支援を提供すること。
16.先住民族の精神文化と先住民性の実践、伝承、そして維持という我々の人権と世代間への責任を認識し、伝統言語や慣習、儀式や儀礼を通じて未来の世代へ神聖なるものを残しそれらの継続を保証するための先住民族の聖地の保護を実行すること。
17.バイオテクノロジー企業、文化産業、国家、個人としての科学者や研究者による、先住民族の伝統的な知識、文化的表現(先住民族のデザイン、美術、工芸品、歌、音楽を含む)、人間の遺伝子資源を含む生物遺伝子資源等の盗用と略奪行為を差し止めること。
18.先住民族の集団的な伝統的知識や文化表現を尊重し保護するため、世界貿易機構(WTO)の「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定」(Trade Related Aspects of IntellectualProperty Rights Agreement(TRIPS))や、世界知的所有権機関(WIPO)の「実体特許法」を含む国家の知的財産権に関する法律および知的所有権制度を改正すること。
19.核拡散ならびに劣化ウラン弾の兵器としての使用を差し止めること。
先住民族の土地において、放射性廃棄物の投棄ならびに他の有害廃棄物の投棄を差し止めること。
20.先住民族女性として、先住民族女性、マイノリティ女性ならびに全ての女性に対する差別や暴力を廃絶するために、我々はG8各国に対し、「女性差別撤廃条約」(Convention onthe Elimination of All Forms of Discrimination against Women)の実施を強く支持することを求める。
21.先住民族の土地からアメリカ合衆国の軍事基地を撤去させ、先住民族女性に対するレイプの容疑をかけられた軍人を裁くことを求める。
また、先住民族の青年に向けての軍隊への強制的徴兵や募集を差し止めること。
22.日本政府が
アイヌ民族と協力して「先住民族の権利に関する国連宣言」を国内法として遂行し、実施することを強く奨励する。
さらにアイヌ民族を先住民族として認知した決議を敷衍し明確化するため、具体的な活動や政策改正を行うこと。
我々はまた、この決議をさらに履行する目的で設立された有識者懇談会の委員8 名の中にアイヌ民族が1 名しか含まれていないことに抗議する。
我々は日本政府に対し、この有識者懇談会のアイヌ委員の数を増加するよう求める。
先住民族自身への提言
我々はまた、先住民族として「先住民族の権利に関する国連宣言」を実施し、先住民族間ならびに他の支援団体やNGO との連帯の強化について議論を行い以下の点を確認した。
1. 将来に向けてG8 サミットと連動して先住民族サミットを開催する任務を継続するために先住民族によるネットワークを設立する。
カナダ先住民族に対しては2010 年カナダで開催のG8 サミットに向けて、先住民族サミットの開催を実現する組織づくりを促す。
我々はまた、イタリアにおいて先住民族の権利回復に取り組む諸団体に対して、2009 年イタリアで開催のG8 サミットと連動した先住民族サミットの開催を試みるよう促す。
2. 世界中の先住民族として我々は、「先住民族の権利に関する宣言」を自ら実施する責任を担い、本宣言がローカル、国内、地域、国際的レベルで効果的に実施される方法について議論すべく、国家、国連システム、他の政府間機関とともに、建設的な対話を持つことを確保する。
3. 「先住民族の権利に関する国連宣言」が上記の各主体によって実施されることを監視し確保するメカニズムとして、国連の先住民族問題常設フォーラム、先住民族の権利に関する専門家メカニズム、先住民族の権利と基本的自由の状況に関する特別報告者を利用する。
4. 「先住民族の権利に関する国連宣言」の広範な普及を行うため、マルチメディアの活用、先住民族が理解できる言語への本宣言の翻訳、その要点を簡単に伝えることができる汎用版の作成などを行う。
5. 「先住民族の権利に関する国連宣言」が幼児教育から高等教育までの学校に於ける教育カリキュラムの一部として取り入れられよう働きかける。
6. 世界から先住民族の言語を消滅するのを止めるため、マオリやその他の民族の経験を活かし、先住民族が自分の言語を流暢に話せる方法を学ぶ場所である「言語の巣学校」を設立し、模範とする。
7. 先住民族のための教育や勉強会を推進し、先住民族が「先住民族の権利に関する国連宣言」の概要をより深く理解し、また国家が「先住民族の権利に関する国連宣言」を履行しない場合に懸念を申し立てる国連、地域の人権機構と、裁判所などの既存の文書やメカニズムについて学ぶ事ができるようにする。
8. 先住民族問題を聴聞し取り組むとともに、国内法および国際法のもとで、先住民族問題が十分に扱われていない事項を審理する為の国際法廷を設置する。
9. 先住民族が自ら決めた開発のビジョンに沿って伝統的な暮らしや美術、手工芸品、その他の開発の形態を確立し強化しようとするイニシアティブを支援するため、先住民族グリーン基金を設立する。
10. 先住民族が所有し運営する文化センターを、国および自治体の管轄内に設置することにより、文化史を実践し、享受する基本的権利、および文化的遺産を自ら守り、享受する先住民族の権利を支持する。
11. 土地をめぐる裁判での先住民族の闘争および森林や伝統的な土地を先住民族の所有と管理の元に取り戻すための先住民族の闘争を支援る。
「先住民族の権利に関する国連宣言」の履行は、先住民族のみならずその他の人々や地球にとっても良いことである。
先住民族が地球に、そして親族―人間だけではなく植物、動物、その他の全ての生き物―に持続可能に配慮するやり方を続けられれば、これは全体への恩恵となる。
我々が民族の言語を話し、この多様な文化を持ち続けられたなら、世界の文化遺産はより豊かになるであろう。
我々の多様な経済的、文化的、精神的、社会的、政治的システムが支配システムと共存できれば、我々の子供に、そして次世代の子供への文化遺産はより豊かになるであろう。
我々の多様な経済的、文化的、精神的、社会的、政治的システムが支配システムと共存できれば、我々の子供に、そして次世代の子供に、さらに多様で希望に満ちた未来を残すことが可能である。
2008 年7 月4 日、以下の参加者の同意の下で本宣言がなされた。
アジア:
アイヌ(日本): 宇梶静江、萱野志朗、秋辺日出男、島崎直美、結城幸司、酒井美直、木幡カムイサニヒ、木幡弘文、ヒロトゥレシ(川上裕子)、酒井厚司
アミ(台湾):オラム・シン
イゴロット(フィリピン):国連先住民族問題常設フォーラム議長ヴィクトリア・タウリ・コープス
カナカナイ(フィリピン):ジョアン・カーリング
ジュマ(バングラディシュ):ディプティ
太平洋:
チャモロ(グアム):ファナイ・カストロ
ハワイ:プアナニ・バージェス、プアエナ・バージェス
ナティ・マニアポト(マオリ、アオテアロア):ホヘパ・ラウプト
ナティ・ランギヌイ、ナティ・トゥッワレトア(マオリ、アオテアロア):ザック・ビシャラ
ナ・プヒ、ナティ・カフ、テ・ララワ(マオリ、アオテアロア):エディ・ウォーカー
ナイタフ(マオリ、アオテアロア):ステーヴン・ケント
タラナキ、テ・アティ・アワ、ナティ・マニアポト、テ・アティ・ハウヌイ・ア・パパランギ(マオリ、アオテアロア):リアナ・プートゥー
ウチナンチュ(日本):ナカイマ・ケンタ
ヨータ・ヨータ(オーストラリア):ウェイン・アトキンソン
ヨーロッパ:
サーミ(ノルウェー):マグネ・オヴェ・ヴァルシ
米州諸国:
マヤ・カチケル(グアテマラ):ロサリーナ・トゥユック
ミスキート(ニカラグア):ロス・カニングハム
ナワァ(メキシコ):マルコス・マチアス・アロンソ
チェロキー(アメリカ合衆国):ジャクリーン・ワシレウスキー
コマンチ(アメリカ合衆国):ラドンナ・ハリス、ローラ・ハリス
イズレタ、タオス・プエブロ(アメリカ合衆国):ロン・ルッキング・エルク
ヘメス・プエブロ(アメリカ合衆国):ポール・トサ
モホーク(カナダ):ベン・パウレス
ラコタ・スー(アメリカ合衆国):マカ・アカン・ナジン・クリフォード
スタッリムック(リルワット)(カナダ):アティラ・ネルソン
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「先住民族サミット」HP
http://www.ainumosir2008.com/map5.jpg
wiki「先住民族の権利に関する国連宣言」
http://www1.umn.edu/humanrts/japanese/Jdeclra.htm