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中沢新一氏の「熊から王へ」を読んでみました。
リンクは張っておりませんが、アマゾンなどでご購入になれます。
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(引用ここから)
北米アメリカ・北西海岸インディアン諸部族に関する記録によると、このあたりの人々は夏と冬の生活形態にドラスティックな変化を行います。
夏の間は共同のテリトリーで漁労や狩猟を行います。
この季節には「首長」がみんなのリーダーとなります。
冬になると、みんないっせいに夏の小屋を放棄して、一つの場所に集まってきます。
そこには大きな共同の祭りのための建物が建てられていて、その建物を中心にして、冬の村が作られます。
それまでは家族中心の生活でしたが、冬になるといくつもの「秘密結社」が作られ、人々はそれぞれのポジションに従って、どれかの「秘密結社」に属することになります。
日本の冬の祭りで言ったら、「講」とか「座」にあたる組織がこの「秘密結社」なのです。
アザラシ組、ワタリガラス組といった集団ごとに、お祭りが行われるわけです。
このお祭りでは、とても複雑な構成をもった入社式が行われます。
北西海岸部インディアンの世界で一番重要な儀式は、「アザラシ結社」のものだと言われています。
この結社は数ある中でも一番格が高いと言われています。
ここでは「ハマツァ」の儀式が行われます。
「ハマツァ」とは「人食い」を意味しています。
この結社では一人前の結社員になるとは、立派な「人食い」になることを意味しているのです。
壁をくりぬいて出来た穴のむこうから、若者が踊りながら出て来ます。
彼が「人食い霊」の親玉に食べられ、その親玉の口から外に向かって「食いたい」「食いたい」と叫びながら出てきた時には、この霊と同じ「人食い」になったと考えられているのです。
「人食い」の精霊に食べられることによって、「人食い」の秘密を授けられ、そして自分自身が「人食い」に生まれ変わる。
これがお祭りの最高段階です。
これはどういうことなのでしょうか。
それは、その地では夏と冬の生活パターンがまるで正反対を向いた、逆転関係にあるからです。
夏は狩猟の季節ですから、人間が動物を殺します。
ところが、冬にはこの関係が逆転して、人間が「人食い」に食べられます。
この「人食い」の「首長」である精霊は、森を住みかとしている大いなる「自然」の主です。
この怪物に「食べられる」ということは、動物霊もそこを住みかとしている「自然」によって食べられてしまうわけですから、冬の期間の権力の所在場所は自然のふところ深くにあるということになるでしょう。
この「対象性社会」の倫理が、このような奇妙な祭りを作りだしたのです。
新石器時代の宗教思想とは何か、というのはとても難しい問題ですが、わたしには北西海岸部インディアンの祭りに表現されているこの考え方こそ、
国家の祭儀だとか、いわゆる大宗教だとかの思想が登場する以前に、地球上に広く実践されていた宗教思想のエッセンスを表現するもののように見えるのです。
この祭りは、一つの実存思想の証言なのです。
祭りと戦争はどちらも日常的な暮しの外に出て行って、普通の状態ではありえないような力を発揮してみせるものですし、破壊や消費が盛大に繰り広げられるところまでそっくりです。
すぐれた戦士は、より強力な「人食い」であるということです。
この人々の戦争の目的は、本来失われたバランスを取り戻すのが目的ですから、報復が完了したらそれで十分で、けっして大量虐殺などということは行われません。
これは新石器的な社会に一般的な特徴で、たしかに戦争は行われますが、全面的な征服戦とか虐殺戦はめったにおこりません。
こうして新石器的な社会には4種類の性格の違うリーダーが存在することが分かります。
1番目は、夏の狩猟の季節を指導する「首長」です。
2番目は、冬の季節に中心的な存在となる「秘密結社」のリーダーです。
3番目は「戦士」のリーダーです。
4番目のリーダーとしては、シャーマンをあげなければならないでしょう。
この4つの種類のリーダーを、アメリカリンディアンをはじめとする新石器的な社会では、2つにわけて機能させようとしています。
つまり「首長」と、秘密結社+戦士+シャーマンのリーダーとを峻別しているのです。
あとの3つのタイプには共通性があります。
それは、彼らの活動が「冬」を中心としたもので、もっぱら人間の理性の限界を踏み越えた領域で行われる活動に関わっています。
ところが夏の季節と世俗的な生活全般の指導を任された「首長」だけは、理性の限界内で「社会」に平和をもたらそうとしているのです。
(引用ここまで)
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ワタリガラスに関しては、以前アラスカインディアンのクリンギット族のことなど、取り上げてみたことがあります。
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トリンキット(Tlingit ['tlɪŋkɪt])はインディアン部族の一つで、アラスカ、カナダの先住民族。
正しい発音はクリンキット['klɪŋkɪt], もしくはクリンギット['klɪŋgɪt]。
もともとはフリンキット(Lingít)[ɬɪŋkɪt]と呼ばれていた。
彼らの自称は「リンギット」で、「人間」という意味。
アラスカからカナダのブリティッシュ・コロンビア、ユーコン川流域の太平洋沿岸の海と山に挟まれた環境に住み、発達した母系の狩猟採集社会を構築していた。
鮭やクジラを獲って暮らし、ポトラッチやトーテムポールの風習で知られる。
彼らの話すトリンギット語には数多くの方言がある。
豊富な木材資源を基に建築技術が発達し、巨大な木造家屋を作る。
19世紀末から20世紀初頭にかけ、流入した白人が持ち込んだ伝染病によって、トリンギットをはじめとする一帯のインディアンは壊滅状態となり、村単位で消滅した。
病死したトリンギットの遺体は、白人によって地面にあけた大穴に無造作に放り込まれ、墓標も立てられないまま1世紀放置された。
1990年代になって、トリンギットの有志により、葬られた遺体の検分が進められ、1世紀ぶりに遺骨が遺族のもとへと返還されることとなった。
日本のアイヌとは文化共通面が多く、表敬訪日しており、ここ数年来交流が続いている。
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