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「ムスリム安心・和素材提供・・文教大学学部生が考案、ネット公開」
朝日新聞2015・12・08
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手羽元と大根の煮物、手打ちうどんにおはぎ、、文教大・健康栄養学部の学生たちが、約40種におよぶ「ハラール・レシピ」を考案した。
宗教上の理由から豚肉やアルコールを口にできないイスラム教徒でも、日本での食生活を楽しめるよう工夫されており、インターネット上で公開されている。
「ハラール」とは、「イスラムの法で合法である」ことを指す。
近年はムスリムの生活への理解が進み、豚肉やアルコールを避け、牛肉や鶏肉もイスラームの教えにそって処分されたものしか使わない、といった「ハラール食」の取り組みが広がりつつある。
2020年開催の東京五輪でも、世界中から多くの観光客が訪れることから、注目を集めている。
ハラール事業を進める株式会社〝伝(つたう)″が、ハラール・レシピのウェブサイトを立ち上げることになり、ムスリムとの同居経験もある同学部の笠岡誠一教授に協力を依頼。
笠岡教授のゼミで学ぶ学生が、レシピを考えた。
「ハラール」の概要、使えない食材などは、事前に講義。
日本の家庭料理を念頭にしたレシピ作りを依頼した。
できあがった約40種のレシピは、日常的なおかずからデザートまで幅広い。
「かつおのガーリックステーキ」を考案した学生は「日本の美味しい魚を使った料理にしようと思った。煮魚だと調理にアルコールを使うから、洋風にした」。
「さつまいものお汁粉など、手軽で安心して食べられる料理を工夫した」という学生は、「レシピを通じてムスリムの日常を支援したい。日本人でも、ムスリムに料理を作ってあげる際などに利用してもらえれば」と話した。
今後もさらにレシピを増やしていく予定。
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桜井啓子氏の「日本のムスリム社会」という本を読んでみました。
リンクは張っておりませんが、アマゾンなどでご購入になれます。
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(引用ここから)
ムスリムにとって、目の前の食品が「ハラール(宗教的に許されたもの)」なのか、「ハラーム(禁忌)」なのかは、大問題である。
ムスリムが絶対に口にしてはならないとされているものは、アルコール類と、アラーの御名を唱えずに殺した動物の肉である。
特に「コーラン」の第5章3節は、食肉に関する禁忌について、次のように語っている。
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あながたたに禁じられたものは、死肉、血、豚肉、アラー以外の名を唱え殺されたもの、絞め殺されたもの、撃ち殺されたもの、堕落したもの、角で突き殺されたもの、野獣が食い残したもの。
ただし、この種のものでも、あなたがた自身がそのとどめを刺したものは別である。
また石壇に犠牲とされたもの、くじで分配されたもの、である。
これらは忌まわしいものである。
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つまりムスリムにとっては、豚肉は勿論であるが、日本で販売されている鶏肉や牛肉なども「ハラーム(=食べてはならない)」なのである。
そうなると日本人向けに売られている肉、ラード、ゼラチンなどを使用した一切の食品が問題となる。
しかし、肉類はともかく、焼き菓子などに獣脂であるショートニングが使用されているのかどうかといったことを判断するのはなかなか難しい。
そこで、名古屋モスクでは、日本で生活するムスリムのために、日本で日常的に販売されている食品の成分を詳しく調べ、リストを作成し、希望者に配布している。
そのリストには、ファーストフードの主要なメニューから、コンビニで売られているサンドイッチ、菓子、ベビーフード、調味料にいたるまで掲載されている。
リストには、ショートニングを使用していないパンやビスケット、ゼラチンを使用していないキャンディやヨーグルト、ラードを使用していない粉ミルク、肉エキスを含まないインスタント麺、保存用目的のアルコールが添加されていない味噌・醤油についての情報が載せられている。
味噌、醤油についてのアルコールで特に問題となるのは、保存のために後から添加する95度以上のアルコールであるが、微量であることから、「ハラール」か「ハラーム」かの判定はされていない。
こうしたリストがあるからといって、すべての人が微量のショートニング、ゼラチン、アルコール類に至るものを排除することに全力を尽くしているわけではない。
どの程度配慮するかは、あくまでも個人の判断にゆだねられており、疑わしいものは一切口にしないという厳格な人から、餃子やラーメンを食べながらビールを飲むのが最高、という人までいる。
一般的には、外食の際にはある程度妥協して、肉料理は避ける、酒類は口にしないこととし、できるだけ自宅で調理するといったもののようだ。
それでも出先で食事時になった時や、ちょっと何かを口にしたい時など、外食に頼れないのは辛いという。
「コンビニがムスリム用に「ハラール」マークのついた軽食や菓子類を販売するようになればずっと暮らしやすくなるのに」と言う人は多い。
ムスリム人口の増加によって「ハラール」食品の需要が拡増大し、1990年代にはこうした商品を取り扱う店が急増した。
日本国内の「ハラール」食料品店は80店に上った。
これらは関東に集中している。
商品の中心は何と言っても食肉で、羊肉、鶏肉、牛肉、ヤギ肉などである。
オーストラリア、ニュージーランド、ブラジルなどから輸入された冷凍ハラール・ミートが多いが、90年代中頃から、国産のハラール・ミートも販売されるようになった。
群馬県で国産のハラール・ミートを扱っているインド人は、食肉処理場の一画を借りて、自分で買い付けてきた牛肉をイスラーム方式で処理し、希望者に販売している。
熊本でも、インドネシア人留学生が地元の鶏肉加工会社と契約して、イスラーム方式によるハラール・チキンの国内調達を可能にした。
処理されたハラール・チキンはハラール食品販売会社を通じて全国に売られている。
国産のハラール・ミートは輸入肉よりも価格が高いが、定住化と共に新鮮な肉を求める人が増えていることから、需要は伸び続けている。
日本で暮らすムスリムの多くが男性の単身者であるにも関わらず、こうした食品の需要はかなり高いように思われる。
外食では安心できないという思いが、自炊を促しているようだ。
外国人ムスリムの定住化が進んだことで、私たちは「ムスリム」という新しい隣人を迎えることになった。
私たちはこれまで、外国人を国籍や民族によって識別してきたが、新しく隣人となった人々は、国籍や民族の他に「ムスリム」という宗教的アイデンティティを持っており、それを何よりも重視しているという点で、私たちがこれまであまり接することのなかった新しタイプの隣人である。
もちろん全国的に見れば、彼らはまだまだ圧倒的な少数者であるが、関東地方では、必ずしもそうとはいえない状況になりつつある。
キリスト教もイスラーム教も、一神教という点で類似性をもつが、日本人から見たこの2つの宗教のイメージには、大きな隔たりがある。
キリスト教は日本が近代化のモデルとしてきた西洋文化の基礎であるのに対して、イスラームは第三世界の人々の信仰であり、「後進性」や「停滞」の元凶であるといったイメージがある。
礼拝は生産性向上を阻害する、断食は経済停滞を招くといった評価もこうしたイメージからきている。
何年も、ときには、何世代にもわたって非イスラーム世界で暮らしながら、なおも信仰を捨てないムスリムが多い。
彼らがかたくなに守ろうとする礼拝や断食が、信仰に基づくものであるがゆえに、「習慣」とはちがって「譲る」ことはできないということを、ムスリムを受け入れる社会がどのようにとらえるかが重要であると思う。
現在までのところ日本では、ムスリムの宗教的義務をどのようにとらえる、それに対してどのような対応をするかは、現場での判断に委ねだられている。
しかし今後外国人ムスリムの定住化が進み、彼等が日本社会での一員として受け入れられたいと主張するようになれば、やがてより公的な場で議論しなければならない時代がくることになるだろう。
しかしイスラームへの対応の難しさは、宗教的義務の実践についての見解が、政府、宗派、個人によって相当に異なっている点にある。
トルコのように国民の大多数がムスリムであるにも関わらず、政教分離の原則に基づいて、公的な場におけるヴェールの着用を禁じている国がある一方で、
イランやサウジアラビアのように国家が女性のヴェールの着用を義務付けて、違反を取り締まっているような国もあるからだ。
さらにそうした国家の見解とは別に、個々のムスリムは宗教的義務の履行に熱心な人からほとんど関心を払わない人まで、千差万別なのである。
こうした多様なムスリムを前に、われわれは、しばしば混乱してしまうのだが、現時点で大切なことは、そうした多様性も含め、まずはイスラームについて学ぶことなのではないかと考える。
(引用ここまで)
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