イスラム国によるフランスの新聞社の銃撃事件以来、フランスもテロリズムの恐怖に揺れています。
最近躍進しているという右派政党「国民戦線」の党首のインタビュー記事を読みました。
日本のゆくえを考えるためにも、このような考え方もあるということを学びたいと思いました。
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「フランス社会の混迷・・国民戦線党首ルペンさんに聞く」
朝日新聞2015・01・27
○かつては、左右、東西の対立軸が敵味方を分けていましたが、現代は?
●現代の世界を二分するのは、国家かグローバル主義かです。
繁栄と治安とアイデンティティーを守るために「国家」を重視する考えと、「国家」など消え去ってしまえという考えとの対立です。
ただ、グローバル主義とグローバル化は別の概念。
(国家が世界と交流して繁栄を追求していくような)幸福をもたらすグローバル化は、もっと進めなければなりません。
○その対立軸で、社会を二つに分断する野心を抱いているように見えます。
●その通りです。
フランスの有権者は30年にわたり、右が嫌になったら左を、左がだめなら右を、という支持を強いられてきた結果、似たような政治が続いたのです。
もっと本当の選択肢を示す必要がある。
一方に右派政党や「社会党」や「緑の党」があり、もう片方に私たちのような国家重視の政党があるのが、民主主義に必要な選択の幅というものです。
○それは、大衆迎合的なポピュリストの発想ではありませんか?
●民衆の、民衆による、民衆のための政治をポピュリズムと呼ぶなら、私はポピュリストです。
その言葉が侮蔑的な意味を持とうが、気にしません。
今の政治は逆に、民衆を侮りすぎています。
○近年の「国民戦線」は、ウクライナ危機を巡って欧米が制裁対象としているロシアのプーチン政権に接近していますね?
●ソ連崩壊後の苦しい時期を経たロシアが、経済復興を成し遂げた姿には、頭が下がります。
米国とは異なる国家モデルをつくり上げたロシアは、戦略的関係を結ぶのに値する偉大な国家です。
にもかかわらず、(制裁を求める)米国の指示に従うから、欧州連合(EU)はロシアと冷戦状態のような関係しか持てないのです。
○「国民戦線」はEUを批判し、欧州単一通貨ユーロからの脱退も主張していますね?
でもフランスは、EUから多大な利益を受けてきたのではないですか?
●全然受けていません。
EUから得たのは、借金と、失業と、アイデンティティー崩壊だけ。
EUのせいで、私たちは金融面、予算面、立法面での主権を失い、自分の運命を自分で決することができなくなりました。
ごく少数のEU官僚が、市民の考えに反してすべてを決めてしまう。
その結果、貧困と絶望がもたらされる。
まるでソ連状態。
私たちはこれを『欧州ソビエト連邦』と呼んでいます。
私たちは、国民が自国の経済をしっかりコントロールする『愛国主義の経済』をめざしています。
自由競争に基づき、金融の影響を大きく受ける『米国型のグローバル主義経済』は、我が国にも、地球全体にも、悲劇をもたらすと考えるからです。
その点、日本はすばらしい。
フランスが失った通貨政策も維持している。
日本は愛国経済に基づいたモデルを示しています
○あなたは党首に就任した2011年以降、右翼としての否定的イメージを拭う「正常化」に取り組んでいる、といわれます。
ただ、「国民戦線」を依然として「差別主義」「排外的」と見なす人も少なくありませんね?
●活動家や党員の中には確かに、愚にもつかないこと、批判されて当然のことをする人が、いないわけではありません。
ただ、それはどの政党も同じ。
他党だと目立たないだけです。
私たちは長年、政界全体を敵に回したために、不当な扱いを受けてきました。
「国民戦線」が変化したとは思いません。
「国民戦線」は、対抗する政治勢力から長年馬鹿にされてきました。
このために伝わらなかった私たちの真の姿を知ってもらう努力は、国民に次第に受け入れられています。
最近の画期的な選挙結果からも、それは明らかだと思います。
◇
◎取材を終えて◎
極右、ファシスト、差別主義者。。
「国民戦線」は厳しい批判を浴びてきた。
党首や幹部の物議を醸す言動、移民や政敵を容赦なく糾弾する攻撃性が、その評価を裏付けていた。
そんな政党の党首を、なぜ紙面に登場させるのかと、疑問に思う人もいるだろう。
だが、「国民戦線」は近年、躍進を続けている。
その主張を聴くことで、欧州の行方を読み解けないかと考えた。
連続テロの余波で慌ただしい14日、欧州議会で会ったルペン党首は、従来の「右翼」のイメージとは大きく異なっていた。
不快であろう質問にも動揺せず、熱意を込めて語る。
勢いのある新興企業の社長、といった感じだ。
実際、「国民戦線」の評判は、急速に変わりつつある。
反ユダヤ主義や、露骨な差別主義を排除。
若手や左派出身者をスタッフに迎え、経済、外交を含む包括的政策を整えた。
工業地帯や炭鉱地区で、グローバル化に不安を抱く労働者層、低所得者層に食い込んだ。
党の新世代を代表する仏北部エナンボモン副市長クリストファ・ジュレック氏はこう説明する。
「以前は日本の右翼団体になぞらえられた。今は安倍晋三氏の自民党に近い政策の党だ」
ルペン党首も「めざすは日本の制度」との態度を隠さない。
私自身も時に批判した「右翼」が、今「日本」を称賛する。
喜ぶべきか、悲しむべきか?
右翼やポピュリスト政党の伸長傾向は、欧州各国でうかがえる。
多くは「国民戦線」と同様、グローバル化に抗する砦(とりで)としての国家の復権を訴え、左右の大政党に対抗する勢力に成長した。
ノルウェーなどでは政権に参加した。
フランスでも、多くの研究者が以下の想定で一致する。
2017年大統領選でルペン党首は決選に残り、22年には大統領選を制するかもしれない。。
では、「国民戦線」は本当に普通の政党になったのか?
仏ルモンド紙のアベル・メストル記者は、懐疑的だ。
「移民政策など党の本質的な方針は以前と同じ。言い方を変えただけでないか?」
敵味方をはっきりさせる党の、ポピュリスト的性格にも不安が残る。
パリ政治学院のパスカル・ペリノー教授は「社会内部の紛争をあおる「国民戦線」は、依然として危険な存在だ。フランスに必要な党とは思えない」と語る。
「国民戦線」が政権を握ると、混乱の懸念が拭えない。
逆に、フランスが大混乱に陥る事態こそ、「国民戦線」が権力に近づく時だろう。
〈国民戦線〉
1972年、反共産主義者や元対独協力者らを中心に結成されたフランスの右翼政党。
当初は暴力的な活動家も多かったが、初代党首のジャンマリ・ルペン氏が議会主義を定着させた。
大衆の不満を刺激して支持を得るポピュリズム色が強く、70年代は共産主義、80~90年代は移民、2000年代以降はイスラム原理主義を激しく攻撃してきた。
近年は、欧州統合を批判することが多い。
2002年のフランス大統領選では同氏が決選に進出。
2011年には同氏の三女であるマリーヌ氏が2代目党首に就き、昨年の欧州議会選で約25%の支持を得て国内第1党となった。
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