始まりに向かって

ホピ・インディアンの思想を中心に、宗教・心理・超心理・民俗・精神世界あれこれ探索しています。ご訪問ありがとうございます。

植物という神秘・・ホピの祭り(ポワム祭その2)

2009-10-31 | ホピの宇宙神話・伝承・祭
前回の続きです。
ホピの冬の三大祭りの聞き書きを、フランク・ウォーターズ著「ホピ・宇宙からの聖書」より、抜粋して引用します。

”8日間で発芽し、その後8日間で長く伸びて花が咲く直前になって”いる 豆が、祭りの主役です。

      
            *****

                (引用ここから)


祭りの16日目には「盆で運ばれる植物」という儀式がおこなわれる。

儀式で使われるものは、長く伸びて花が咲く直前になっている豆である。


午後早くに、この豆を乗せた盆を運ぶ長い行列ができる。

行列は、ゆっくりと南から始まり、村へ辿り着く。


村のあちこちで、様々のカチナが呼びかけ、だんだんたくさんのカチナが集まって来る。

そして各世界から集められたカチナの大集団が出来上がる。

オライビの伝説によればおよそ300人のカチナが、それぞれに違った仮面と衣装をつけ、独自の歓声と足踏み、踊りをして回る。


人々は豆娘たちが運ぶ青々と育った豆の木に驚きの目を見張る。

それがあまりに重いため、父カチナが地面の上にコーンミールで描いた卍(スワスチカ)の上に時々下ろされる。

彼らは約一時間、大きな輪を作って踊り、歌い、奇妙な叫び声をあげ、独特な足踏みをしながら広場を埋め尽くす。



創造のすべてを表わす大いなる三幕劇は、かくして終わりを告げる。

その意味は明らかである。

第一幕(ウウチム)において、人はこの新世界に登場し、最初の火が灯され、生命が芽を吹いた。

第二幕(ソヤル)において、人は固まった大地の上に家を建てた。
太陽は芽吹いた命に熱と力を与えるため、軌道上に引き戻され、生物の生長を祝福するべく、最初のカチナが到着する。

第三幕(ポワム)において、植物が初めて姿を現わし、人は子どもとしてカチナの仲間入りをし、全世界にわたる完全な生命の道が清められる。


こうして人は今、完全なる被造物として誇り高く大地に立つ。

この偉大なる生態学的パターンの中では、除外される生命は一つもない。

それはあらゆる社会の人間ばかりか、植物や動物などの生命のすべて、また霊的存在者の高い秩序、地球を超えた世界の生命までも中に含みこむ。

どれ一つとして孤立して活動する自由をもたない。

かれらはみな、互いに関わり合って務めを果たし、あの宇宙的な生命の道の上を調和よく共に歩けるよう、活動しなければならないのだ。

ウウチム、ソヤル、ポワムの祭は、限られた人間の心を超越する「存在」の大計画を、高度に劇化して解釈したものなのである。

           (引用ここまで・終)

     
         *****


“人々は豆娘たちが運ぶ青々と育った豆の木に驚きの目を見張る。 ”

“それがあまりに重いため、父カチナが地面の上にコーンミールで描いた卍(スワスチカ)の上に時々下ろされる。”

という言葉が注意をひきます。


おそらく、ポワム祭という祭りでは、豆は特別の祈りの力で、驚くべき成長をとげるのだと考えます。

そして、その豆は、卍(まんじ・スワスチカ)の印の上に下ろされます。

おそらく、卍の印は、その重力を軽減するような作用を持っているのはないかとわたしは思います。

“全世界にわたる完全な命の道”と呼ばれるものは、自然と超自然の交わりとしての、自然現象、生命現象を見据えて、名づけられているのではないでしょうか。

ホピ族は農耕の民であり、水のほとんどない所で収穫するトウモロコシや豆を命の糧としていますが、この祭りは、ホピ族が農作物をいかにして育てるのか、彼らの神は彼らになにを約束したのか、その謎を明かしているのではないかと考えます。

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49の世界にこだまする芽生えのエネルギー・・ホピの祭り(ポワム祭その1)

2009-10-28 | ホピの宇宙神話・伝承・祭
ホピの冬の三大祭りの紹介を続けます。

3番目の祭り「ポワム祭」について、フランク・ウォーターズ著「ホピ・宇宙からの予言」より抜粋し引用します。

農耕民族であるホピ族の、豆の発芽を祈る儀式です。
ここでもまた、豆の発芽の喜びの祭りは、宇宙の生成の秘儀という趣きをかもしだしているように思えます。

          *****

            (引用ここから)

ポワムの意味は「清め」である。

この祭が描く創造の最終段階で、生命は完全に物質の形をとる。

最初の重要な儀式は、キバに豆を播くことである。

炉には昼も夜も薪がくべられ、豆は注意深く水を注がれ、また儀式の煙と聖なる食物を与えられる。

このような中で豆は8日目には発芽し、真冬の最中に緑の芽が顔を出す。

これは創造の最終段階で、生命が物理的な形を整えることの象徴となる。


何百という豆が芽を出し始めると、仮面をしていないカチナたちが、子ども達と豆が育つための踊りをするために、キバに入り始める。

また、村のあちこちに、様々なカチナが現われ始める。

エオトトとアホリが最初に停止するのは、蛇キバの側である。

エオトトはコーンミールで南北に水平線を引き、その頂点に東西に延びる短い垂直線を3本引く。

アホリが進み出て、杖の下端を中央ラインの真中に突き刺す。
この杖を右から左へ回しながら、彼は呼びかける。

アーホーリー
アーホーリー
ホリーホリーホリー


アホリは右足と杖を使って7回地面を踏みならしながら、左へ一回転する。

7回とは7つの連続する世界を表わす。

同じセレモニーが村の7か所で行われる。
これら7つの停留所は、連続する7世界をもつ7宇宙を表わし、かくして生命の道をたどる人間の発展段階は全部で49あることになる。


こうして儀式は全宇宙と世界が、すべてを治める創造主の王国の内にあることを示し、ポワムの中心的な意味にかなうように、人間存在のすべての形を清めるものとなる。


儀式を完成させるために、エオトトとアホリは蛇キバの前にある広場に行き、地底世界からの出現場所を象徴する小さい穴シパプニの前で止まる。

エオトトはコーンミールでそこから東西南北に線を引く。

次にシパプニの中に水を注ぎ入れ、人類の出現の道を清める。

         (引用ここまで・続く)

    
       *****

“このような中で豆は8日目には発芽し、真冬の最中に緑の芽が顔を出す。 ”とありますが、おそらくこれは普通にはあり得ないことではないでしょうか?

彼らは、祈りの力で、これらのことをなしとげているのではないかと思います。
全世界を共鳴させる、“あるエネルギーの使い方”を、彼らは知っているのではないかとわたしは思っています。
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冬至・星のしるしを持つ者が、太陽を引き戻す・・・ホピの祭り(ソヤル祭その2)

2009-10-24 | ホピの宇宙神話・伝承・祭
前回に続き、フランク・ウォーターズ著「ホピ・宇宙からの聖書」から、ホピの冬至の祭りについての聞き書きを紹介します。

ソヤル祭の主神、太陽にささげる儀式では、非常に遠い星からやってきた発芽の神が、額に星のしるしをつけて、全身に星の模様を描いて、太陽が再び地球へ戻る軌道に乗ることを願って、力強い踊りが行われます。

   
   *****

      (引用ここから)


次に人間が出現してこの上に家や村を立てる時が来る。

そこで彼はキバの中央に二本の柱を立てる。

この上に横木を固定し、木彫りの花で飾る。
骨組みと花は、村の家とそれを取り巻く原野である。


東の地平線を黄色に染めて太陽が現われると、祭司たちはキバから出てくる。

一行はゆっくりと行進し、メサの東端に歩いてゆく。

ここでチーフは太陽に祈り、全員のために太陽への道をコーンミールで描く。

次に太陽光線をふりまいて体を清めるかのように、頭上から足元へと祭司一人一人の体の側面を鷹の羽でこする。
これより3日間、毎朝同じことが繰り返される。

祭司たちは沈黙と深い精神集中の中で祭壇の前に座り、生きとし生けるものの調和を祈り続ける。

清めと準備は16日かけて行われる。


そして一年に二つある大いなる瞬間の中の一つが、まさに起ころうとしている。

太陽が南への旅を終え、光と熱と生命の長い日々を、植物と動物、人間に与えるために戻ってくる冬至が始まろうとしているのである。


ソヤルの主神である太陽にささげられた儀式をソヤル・チーフが執行していく。

それを助けるため、真夜中までに他のすべてのキバのメンバーたちがチーフキバにやってくる。


笛キバでは、白い頭巾と白いケープをまとい、石斧と弓矢を持つ男(極北の双子の戦士ポカングホヤを表わす)が、笛族の主神で発芽の神ムイイングワを表わすもう一人の男に衣装をつける。

この霊がどれほど遠くから来たかを表わす大きな星が、額に付けられる。

この星は白トウモロコシの葉でつくられ、先端は4つ、先から先までは60センチ以上あり、中央には空を表わす青い円形マークがある。

次に男の体は全身夜空の星を思わせる白い斑点で彩られる。
彼がチーフキバのはしごを飛び降りる時、大きな太鼓がその到来を告げる。


彼は、ソヤル・チーフから太陽のシンボルの楯を受け取ると、それを回転させながら踊りだす。

全員の心はただ一つの目的、太陽が道を逆戻りするのを助けることに結集される。


祭が終わると、供え物が、民の守護神であり地底世界の主であるマサウの社殿と、太陽の家にある太陽の社殿に運ばれる。

キバは、その年のためにカチナたちに正式に明け渡される。

        (引用ここまで・終)



            *****



非常に遠い星からやってきた者がつけている“星のしるし”は、以前紹介した“ホピの青い星”を連想させます。

彼らのたましいの故郷は、過去も現在も、星にあるのではないでしょうか。

一年にわたって続けられる複雑な祭りは、太陽がぶじに上り、順調に豊作や雨ふりが得られることを望んでいる、という側面と同時に、カチナ、仮面、という媒介をとおして、星や霊との交信、交流を果たすための手順なのではないかと思います。

雨が降り、豊作がもたらされるということは、星や霊、祖先の霊との交流が首尾よく行われたことの“証し”なのではないでしょうか。


天候の無事や雨乞いの祭りというと、“未開社会”ではありふれたことのように思えますが、彼らはあえて困難な地を選ぶことで、水のない所に水を得る、というような“恩寵のしるし”を得ることに、全力を尽くしているのではないかと思います。

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ホピの祭り・・冬至・オリオンの霊が地球に到着する(ソヤル祭その1)

2009-10-21 | ホピの宇宙神話・伝承・祭

ホピの祭りについて詳しく書いてあるフランク・ウォーターズの「ホピ・宇宙からの聖書」(Book of the Hopi)から、ホピの冬の三大祭の部分を、抜粋して引用します。

この祭りは、前回のお祭りの次に行われるものです。2回に分けます。


          *****
 
            (引用ここから)


冬至には、創造の第二の面を象徴する2つ目の大祭ソヤルが行われる。

ウウチム祭の翌日に、新たな祭りを告げる儀式が行われる。

その午後、ソヤル・カチナが、カチナの宮から現れて東に向かう。

その年に現れる最初のカチナである。


彼は青いヘルメットと白いローブを身にまとい、歩き始めの子どもの様によろよろとした足取りで歩く。

これは新生命が誕生しつつあることを表わす。

村に着くと彼は4か所で立ち止まり、コーンミールで水平線を4本引く。

そして祭の開始のサインとする。


翌日マストップ・カチナが現われる。

黒い仮面をかぶり、体も黒く塗り、そこに白い人間の手形を押し、動物の生皮をはおり、足には野生ネコの皮を巻きつけた不気味な姿である。


彼は長い道のりをやって来る。

黒いヘルメットは旅をしてきた宇宙空間を表わし、頭の両側の3つの白い星印はオリオン座の3つ星を表わす。

マストップは神ではなくカチナであり、人間に繁殖力を与える男の力をあらわす霊だ。


黒い体は地球を表わす。

首に巻きつけた野草は植物界を表わし、野生ネコのキルトは動物界を表わす。

そして、白い手形は、すべてのものに人間が触れることを表わす。


それは生命発現のこの段階が、完全に創造されたという印に、人間が大地に押す手形である。

人の手は、呪師が患者の胃や胸や頭頂にそれを当てる時のように、生命を占う幻視者の道具だからである、


だが、人は前の世界にも存在していたし、今後の世界にも現れる。

そのため、マストップが手にする白い輪が彩色された黒い杖は、人間が出現ごとによじ登るはしごを表わしている。



かくして異常なほどの静けさと厳粛さ、秘密の雰囲気のうちにキバの中で、ソヤルが始まる。

薄暗いキバは、創造の夜明けの時の広大な裸の大地である。

ソヤル・チーフはそれを感じ取る。

いま大地は固まりつつあるのだ。

             (引用ここまで・続く)


*****
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悪しき世界から脱出し、清められる・・・ホピの祭り(ウウチム祭その4(終))

2009-10-18 | ホピの宇宙神話・伝承・祭
ホピの祭りの続きです。
フランク・ウォーターズ著「ホピ・宇宙からの聖書(Book of the Hopi)」から紹介します。
かくも哲学的な祭りを、わたしは他に知りません。

     *****

       (引用ここから)


星星が真上に来る真夜中になると、祭司は話を終えて炉穴を平らな岩で部分的に覆い、かすかな明かりが床にもれる程度にする。

すると突然、他のキバの男たちがはしごを降り、まるでシパプニから現れるかのように暗い中から姿を現わす。

誰もが祭服を着ているが、仮面はかぶらず、代わりに顔全体を覆わんばかりの大きな白い四亡星をかたどったものを付けている。

顔と頭を灰色に塗ったマサウがその中から現れる。

彼らはひとりひとり祭壇を囲むようにして3つの側面に陣取る。


彼らは過去の他世界の霊たちで、低いハミング音と外宇宙から来る風のような呼吸音だけを出す。

音は少しづつピッチをあげていく。

この最中、大きな白い星を下げた白衣の男が静かにキバに入り、
「わたしは始めにして、終わりである。」と告げる。

これだけ言うと、彼はそのまま来た時と同じように静かにキバを出ていく。

星をかぶった男たちの出す音は一層大きくなり、その動きも早くなる。


突然平らな石で炉穴がふさがれて真っ暗になり、邪悪が突如世界を覆うことが示される。

叫び声が上がる。

星霊、祭司、入団者、教父らは星と衣装を投げ捨てる。

大混乱の中、丸裸となった彼らは世界が滅亡する前に外へ逃れようと、一斉にはしごに飛びつく。

ハイオウィ・キバのはしごは他のそれよりも広い。

それでも最初に着いた者は一番後になる。

はしごを昇る時に他の者たちが彼らの体を踏み台にして昇ってしまうのだ。


最後にキバの屋根に辿り着くと、彼らはバケツで水をかぶって象徴的にすべての悪を洗い流し、3人の男たちから挨拶される。

これが終わると、村長が真っ暗な空(から)のキバの中に向かって、中に誰かいれば出てくるように呼び掛ける。


生まれたての赤ん坊のように裸でびしょびしょの入団者たちは近くの家に案内され、ユッカの石鹸水9鉢で髪を洗ってもらう。

9つの鉢は、彼らが旅する連続した7つの世界と、それを助けるソッツナングの世界、そしてすべてを支配する創造主タイオワの領域を現わす。

入団者たちは次に教父たちに連れられて、おのおののキバに戻る。


この洗髪式で入団式が終わるわけではない。

晩春になって、入団者ひとりひとりはグランドキャニオンのソルトケープに巡礼し、精神力を試すよう求められる。

それから冬のポワム祭で行われる別の儀式に参加しなければならない。

       (引用ここまで・終)

           *****
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生命の一本道を通って第4の世界に現れる・・・ホピの祭り(ウウチム祭その3)

2009-10-15 | ホピの宇宙神話・伝承・祭
フランク・ウォーターズ著「ホピ・宇宙からの聖書(Book of the Hopi)から、ホピの祭りを紹介しています。
前回の続きで、抜粋し引用します。


*****

(引用ここから)

「髪洗いの夜」はウウチムの中心的儀式である。

ホピの子供たちは思春期に入る前にカチナかポワムいずれかの宗団に参入させられる。

ウウチムの入団者はより高度な段階の霊的訓練に導き入れられる。

また彼らは、創造の夜が明ける時にこの新世界に現れた、最初の人類をも象徴している。

このためどんな人間の弱さにも負けない者とみなされ、この世の悪とは無縁でいなければならない。

「道の封鎖」によって、村があらゆる人間から閉ざされ、村の東半分が空になり、入団者たちが祭司と有益な霊人たち以外、誰とも接することが出来なくなるのはこのためである。


このような秘密と厳粛さのうちに、彼らは教父たちに連れられてハウィオビ・キバに導かれる。

入団者はキバの東端にある高い床に座り、西の低い床には祭司たちが座る。

ハウィオビとは「一本道」の意味。

キバそのものはかつての地底世界を象徴し、彼らは今そこより地上に現れようとしているのだ。

入口はただ一つ。
はしごでつながっている屋根の入り口のみである。

儀式が終了し、彼らが創造の純粋な形を定めてしまうまでは、外に出ることは許されない。


その間、他のキバで準備が整えられている。

浅井戸族の一員が持った棒を、各キバの一員は一つづつ抜き取る。

黄、青、黒色の棒を抜いた者はそれぞれ、星星、霊、他世界の住人を象徴することになる。

また、一本のみの赤い棒を抜いたものは地底世界の神マサウを代表する。

こうしてそれぞれの役目に応じた衣装に身をくるみ、人々はキバに向かう。


さて、真夜中近くになる。

キバは、炉穴からおこる火の薄明かりの他は、暗がりの中にある。

この薄明りの中で、上の段に集まった入団者たちは、一人の祭司が祭壇面の床に開いた小さな穴・・シパプニと呼び、出現の場所を象徴している・・から栓を抜くのを見る。


さて、オリオンの三つ星を後ろに従え、7世界を象徴するプレアデスの7つ星が、上のはしご穴をとおして目に入るってくると、祭司は7世界をとおして生命の道を踏みしめる人類の旅について、彼らに語り始める。

第一の世界は目の前にある炉穴の火が象徴する火の元素で始まったが、人間存在の純粋な形は、悪によって汚されてしまった。

世界は滅亡し、人類は第2の世界に出現した。

ここでも同じことが起こった。

第3の世界に起こったことを聞くと、入団者たちは
自分たちが今の第4の世界に肉体を持ちながらも、象徴的には未だ、第3の世界の住人であることを理解させられる。

入団式を受ける理由はそこにある。

それは、目の前にあるシパプニを通してキバに象徴される第3の世界から、さらにもう一つのシパプニであるはしごを昇り、外の第4の世界へ出現することを定めているのだ。

(引用ここまで)

        *****
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グランドキャニオンの霊人を迎えるため、村を清める・・ホピの祭り(ウウチム祭その2)

2009-10-12 | ホピの宇宙神話・伝承・祭
前回の記事の続きです。
「ホピ・宇宙からの聖書」より引用し、ホピの祭りを紹介します。

    *****
          
     (引用ここから)

準備は他の3つのキバでも行われている。

一角宗団は二角の次に位する。
一角宗団の祭壇の上には、粘土を焼いて作った小さな鈴が置いてある。

これは一角宗団の人々がこの地上の人間でしかないことを示し、人類に来たるべき危機を警告している。


双子の英雄が地球の南北軸の両端に座している。

ポカングホヤは北極、パロンガウホヤは南極について、地球を正しく回転させている。

彼らは地軸をとおして各所に波動を送ることにより、惑星上に起きうる悪いことを警告する。

この小さな粘土の鈴は、このような波動を響かせる地球の各中枢を現わす。
一角宗団の祭司はその振動を聴くことができる。


地球のもう一つの軸は、東西に延びる太陽の道である。

笛キバの笛宗団は、歌と笛の曲とで太陽が季節の周期を決める手伝いをする。

笛キバの祭壇上の大半を占めるのはオウム、インコ、こまどり、紅すずめ、ハチドリなど、実り豊かな南方系の鳥の羽である。

ウウチム祭は太陽が現れる前、地球が今のオーロラのような、影を作らぬ反射光に照らされていた創造の夜明けに、象徴的に開始される。


すべての準備がおわると、「道の封鎖」の儀式が始まる。

4つの中心的道路が、四方角からオライビに通じている。

15日目の日没前に、祭衣に身を包んだ一角の団員がキバから現れ、聖なるコーンミールで横に線を引きつつ道路を封じ、村に邪悪な力が入ってこないようにする。

儀式が終わる朝まで道路は開かれない。


ただ一本の小道だけが開かれている。
それは峰沿いに南西に曲がり、第三メサの西側突端へ続く、せまく険しい小道である。

この突端は、夜中のセレモニーに唯一加わることを許されているグランドキャニオンの霊人たちの通り道である。

全家族は、食物の霊的なエッセンスを採りに訪れるこれらの霊たちのために、食卓を整え、翌朝には皿と残り物はすべて土に埋める。

中央広場の東側に住む家族は、その晩は家を離れ、広場の西側に住む家族たちと一緒に過ごす。

すべての戸は閉ざされ、窓には毛布がかけられ、晩までには通りは無人となる。
村は静けさに閉ざされ、夜の儀式への準備がすべて完了する。

(引用ここまで・続く)

*****
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ホピの祭り・・・生命の夜明けを待ちのぞむ(ウウチム祭その1)

2009-10-09 | ホピの宇宙神話・伝承・祭

前回の記事では、ホピ族の日常を形作っている独特の精神風土に思いをはせましたが、この独特の精神風土を最もはっきり示しているのが、おそらくホピの年中行事としての祭りであろうと思われます。

今まで何度も触れてきた、前の世界の滅亡の記憶の伝承や、地球の南北の地軸を伝わる波動、星の世界と先祖の世界のかさなり、といったホピ独特の世界観が、祭りの中には非常にはっきりと示されています。

フランク・ウォーターズの「ホピ・宇宙からの聖書(Book of the Hopi)」から、抜粋して引用します。


*****

(引用ここから)

暁には三段階ある。

始めに、人が最初にかたどられる、紫色の朝もや。
次は、人の息吹を啓示する黄色の光。
最後に、赤い日の出の輝き。

ここにおいて、人は創造の完全さの中で雄々しく立つ。

毎日の夜明けと一年の夜明けは、人の進化の旅路の始まりであり、生命の夜明けでもある。
これら創造の三段階は、絶えず再現されるものである。


ウチムとは、「発芽」を意味する「ウ」と、「現れ」を意味するチムが語源。

ウウチムは、創造の三段階を再現することによって宗教年を開始する冬の三大祭の、最初に執り行われる。

地上の全生物・・植物、動物、人間・・を発現させる創造最初の夜明けに行われる。

それは時が短くなり、地上の生命が衰える11月に始まる。

村の呼び掛け役がウウチムの開始を告げると、二角宗団の長が最初の8日の準備と清めの儀式のために、各々のキバに入る。

ウウチム祭全体を導くのは、二角宗団である。
彼らは、創造についての大元の概念をもつ唯一の教団であるため、全宗団の中で最も重要な存在である。

二角宗団の二本角は、これまでの4つの世界についての知識と経験を現している。


最初の重要な儀式は「新火祭」である。

生命は火によって始まる。

そこで、ウウチムによって演出される創造の暁においては、火打石と綿で新しい火を起こす。

火は近くにある無数の鉱床から採掘してきた石炭で燃え続け、このとき石炭を産出する地底世界ナディルの主神マサウへの祈りが唱えられる。

マサウは太陽から力を得て、地底世界の火を燃やし続けており、この火は火山の噴火活動において現れる。

新しい火は、太陽からマサウに向けられる宇宙的力を象徴する。


火起こしの儀式は、日の出前に行われる。

それは象徴的に地球の外殻のみを温める。

そして太陽が昇ると、その後の儀式は、種の芽生え、植物の繁茂、穀物の実りを一つ一つ現してゆく。

この新火から採られた燃え木は、次に別の3つのキバに運ばれて、そこで火を灯す。


似たような新火祭が、メキシコのアステカでも行われていた。

アステカでは52年目ごとの年の始めに中心祭壇で新しい火が灯され、そこから他の各神殿へ、そして家々へと火が運ばれた。

(引用ここまで・続く)

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ホピの予言のある風景・・「ホピの太陽」から

2009-10-06 | ホピの予言と文明の危機

文化研究者である北沢方邦さんとお連れ合いの青木やよひさんは、1971年に初めて、ホピの地を訪れておられます。

彼らはその後1975年、1984年と訪問を続けられ、とても貴重な経験を何冊もの著書にまとめておられます。

ホピ族の方たちとの交際から実り多い考察をめぐらして書かれたそれらの著書は、“野生の思考”を取り戻そうとする当時の文明論の流れを、翻訳ものから、日本人による思考として根付かせた役割は大きかったと思います。


1975年、2回目のホピの地訪問を終えて北沢方邦氏が著した本「ホピの太陽」にある、ホピの村の日常のひとこまを、抜粋・引用して紹介します。


         *****


            (ここから引用)

わたし達が出発する前の日の朝、村では泉の清掃儀式が行われていた。

その日は朝から村はなんとなく神話的で童話的な気分に包まれていた。

というのは、静かな朝の村のそこかしこに、鈴の音やカメの甲羅の音、あるいはフー、フーという呼吸音など、それぞれのカチナに固有の響きが鳴り渡り、あの辻、ここの通りにキヴァから姿を現し、見るからに恐ろしげな黒鬼やフクロウなどの姿が、ちらちらと見え隠れしていたからである。

祭りの日ならいざ知らず、きわめて日常的な村のたたずまいに、極彩色のカチナたちが出没するとはなんと幻影的で、超現実的な風景であることだろう。

わたし達は家の窓からこの一服の超現実派の絵のような光景を眺めていた。

そのうちに黒鬼のカチナが一件一件の戸口を回り始めた。

あたりを睨みまわす独特のしぐさをしながら、何やらホピ語の口上を述べ、それに答えた口上を受けるやいなや、隣の家へと去っていった。

やがて各戸から現れた大人たちは、手に手に掃除用の道具をもってメサの下の泉の方に降りていき、また幼い少年少女たちも家々からぞろぞろと現れて、天水溜の方に向かっていった。

シドニー家の末子も素足になって裏口から一人で出て行った。

その間にもカチナたちは村の辻辻に出没し、独特の叫びや声をあげている。

子どもたちは裸足で天水溜に降り立ち、石やごみを拾い出しては捨てていく。

カチナたちはいわば子ども達を監督し、励ましているのだ。

子どもたちはカチナ達にたわむれに追いかけられて、きゃっきゃと逃げ回ったり、また作業に戻ったり、きわめて楽しげに働いている。

わたしは子どもたちの自主性や自立性を尊重しながら、強制を同意に変え、労働を神話的な遊びに変える、このホピの部族教育のすばらしい知恵に打たれた。

ホピではカチナ儀礼以前の子供は厳しいしつけの対象となる。
ときには体罰もくわえてホピの価値体系を教え込む。

小さな虫や植物にいたるまで、すべての生き物を理由なく傷つけ、殺すことはもっとも厳しく戒められる。

無機物も含め、全自然は人間の友愛に満ちた兄弟なのだ。

ついで、怒りとかしっとといった、人間のもっとも醜い感情を表すことは悪いことであり、恥ずかしいことであると蔑まれる。

すべてこうした“ホピ(平和)”の信念に反する行動は“カホピ(ホピでない)”の一語でしりぞけられる。


この時期の子供たちにとって、カチナは実在する精霊であり、子どもたちの集団の背後に無言で存在する宇宙的な監督者である。

氏族の祖父たちや祖母たちから語り継がれる無数の神話や伝説は、彼らの文学であり、芸術であり、こどもたちの想像力は現実のカチナの姿に結び付いてその翼を宇宙の果てまで広げる。


こうしてある時、カチナ儀礼の日がやってくる。

少年少女たちはキヴァの暗闇の中に儀礼父母と共に一人づつ招き入れられ、恐ろしいカチナの手から厳しいむち打ちを与えられる。

そしてむち打ちのあとで、カチナは静かに仮面を取り外し、鞭打った者が、神々の霊ではなく、村の隣人だったことを教える。

この瞬間、少年少女はカチナが、人間によって実行される精霊たちの使者にすぎない現実を認識するとともに、目に見えない精霊たち、言いかえれば超自然的なものと、目に見える全自然と、そしてカチナ仮面をかぶる隣人と同じ人間であるおのれとの、三者の関係を理解し、それらのものの調和の世界の中で、人間の負うべき責任と義務とに目ざめるのである。

彼らはもはや一人前とみなされるとともに、自分たち自身の自立した独自の集団の世界を形成する。

そしてキヴァ結社に加盟し、それによって大人たちとの新しい関係の中に踏み入るのである。

少年たちはそれぞれのキヴァ結社固有の教育を受け、儀礼や祭りのやり方を学び、仮面を作り、モカシンを縫い、カチナ人形をつくる技術を習得する。


男性には、最後にウウチム=成人儀礼がやってくる。

この儀礼はホピの諸祭礼や諸儀礼の中でも、最も恐ろしい秘密の帳に包まれている。

ウウチムの夜、村は封鎖され、外部と完全に遮断される。

村の入口はもちろんのこと、辻辻には一角の兜をかぶり、槍を手にした一角獣結社の屈強な男たちが終夜、警護の陣を張り、キヴァの秘密を盗もうとするものを容赦なく殺そうと待ち構えている。

しかしウウチムは、人類の誕生と受難の秘密をすべて集約した、人間の死と再生の秘儀なのであり、もしこの秘密が破られるなら、ホピのみならず、人類全体におそろしい災厄を招くに違いないのである。


教育的見地からすれば、少年が男となるためには、単に一部族だけではなく、人類と世界全体に対する、この恐ろしいまでの責任の自覚が要求されるということに他ならない。

ここに、われわれの文明に対するホピの教訓がある。

              (引用ここまで)

 
     *****


ここに書かれているウウチム祭などホピの祭りは、たいへん意味深いものと思われます。

次回からホピの祭りについて、紹介していきたいと思います。

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「ホピの予言より」(1978)・・生存のための、もう一つの生き方(2)

2009-10-02 | ホピの予言と文明の危機
前回の記事の続きです。

「ほびっと村」に関わりの深い「プラサード出版」の「やさしいかくめい」(1978年)に掲載された「ホピの予言より」という文章の後半を、ご紹介させていただきます。


              *****

            (引用ここから)


『卍(まんじ)と太陽』

何千、何百年もの間、ホピ族はその様々な儀式を通して、以前の世界のこと、私たちの現世界への出現、そしてここに来た目的などを受け継ぎ、思い起こし続けてきた。

そして彼らは、マサウウの設計通りの質素でつつましい生活、そしてまた全生物のため自然のバランスを保つことへの誓いを新たにしてきたのである。

世界の出来事に関する知識は、各時代が次々と展開していくたびに、それを見守る少数の宗教的グループの間で伝えられてきたのである。

そのリーダーたちは地球を激しく揺さぶるような3つの出来事が続いて起きることに注意を払ってきた。

これらの出来事は、天候、地震、民族の移動、戦争など、種の芽生えから全生命の流れを決定するような力をあらわすいくつかの兆候を伴っていた。

瓢箪(ひょうたん)のガラガラはキーシンボルである。

ひょうたん自体は種となる力を意味する。

儀式において瓢箪を鳴らす行いには、生命力を呼び起こさせるという意味がある。

ガラガラには、古代のシンボル卍(まんじ)が描かれているが、それは種から四方に芽生えるらせん状の力であり、種を芽生えさせ、成長させる太陽の温かさは、そのらせんを囲む赤い輪として描かれている。

卍と太陽で表現された力とは、全世界を揺さぶった初めの二回の出来事に関連したものである。

最初の出来事の暴力と破壊から出現する最も強力な要素は、さらに強い力を得て二度目の出来事の原因となる。

これらの兆候が現実にあらわれた時、この予言の中のこの時代に至ったということが明白になる。


『灰がつまったひょうたん』

ついには「灰がつまったひょうたん」が発明されて空から投下される。

そして太陽の水をふっとうさせ、大地を焼きつくしてしまい、そこには幾年間もの間何も育たなくなってしまう。

これは近いうちに第三度目の最終的な出来事が起こるであろうことを、そして手遅れにならないうちに、人類とそのリーダー達が考えを改めない限り、全生命に破滅をもたらすであろうと全世界に警告するために、ホピ族がその教えを明らかにしなければならないというサインである。

現在、ホピのリーダーたちは、始めの二度の出来事とは、第一次と第二次世界大戦であり、「灰がつまったひょうたん」は原始爆弾であったと信じている。

広島と長崎への原始爆弾投下の後、それまでは秘密に保たれていたホピの教えが再検討され、公開された。

ここで紹介した内容はその教えの一部である。


『浄化の日』

最後の段階は「浄化の日」と呼ばれ、「ミステリーエッグ(神秘の卵)」とも言われている。

教えには卍(まんじ)、太陽、そして第三の力を象徴する赤色が描かれており、それらの行きつくところは全面的な再生、または破滅のどちらかとなっている。

わたし達がどちらに行き着くのかはわからない。

ただし、選択は私たちの手に握られている。

戦争や自然の大異変などが起こるかもしれない。

その破滅の度合いは、世界の人間間のバランスと自然のバランスがどの程度崩れているかによって決定されるであろう。

この危機のおいては、金持ちも貧乏人も生き延びるために、同じように戦わざるをえなくなるだろう。

伝統的なホピ族たちの間では、それが非常に破壊的なものになるであろうということは、当然のことと考えられている。

しかし、人類同士及び自然への接し方を改めることによって、人類にはその破壊の程度を和らげる可能性が残されている。

ホピ族のような昔からの精神的な基盤の上に成立しているコミュニティは保護されるべきである。

また、その賢明な生き方、及び心に誓った自然資源の保護を保てるようにするべきである。


『人類の運命』

ホピ族が自然のバランスを保つ目に見えない力とがっしりと手を結んでいることは、人類の生存にとって重要な役割を果たすことになる。

それは自滅的な人工のシステムに対するもう一つの現実的な生き方の例であり、世界の出来事の核心とも言えるものである。

行きつく先は分かりきっている。

「地球全体は激しく震え、赤く燃え上がり、ホピ族を侵害している者たちに対して立ち向かうであろう。」

現在ホピ族を破滅に追いやっているごう慢な人工的システムは世界中至る所で同じような冒とくを行っている。

予言に語られている、転換によって起こる破壊は自然な流れである。

もし、現在のシステムの中で資産や権力の搾取を行う者たちが、ホピ族の破壊を食い止めることができれば、多くの者は、浄化の日を生き延び、新しい平和な時代に入ることが可能となるだろう。

だが、もしホピ族の生き方を継続する者が一人もいなくなれば、そのような時代の到来は不可能となる。

そのために私たちが立ち向かうべき権力は強大である。

しかし残された道は全滅だ。

だがしかし、一人の人の意思を他人に押し付けるという方法を使っている限り、その人工的システムを変えることはできない。

なぜならそれこそが、問題の根源であるからである。

もし人々が自分自身とリーダーたちの在り方を考え直せば、両者間の断絶は解消されるだろう。

それを成し遂げるには、ひとりひとりが、「真実というものの持っているエネルギー」そのものを信頼するしかない。

ホピ族の生き方の基盤となっているこのアプローチは、人間にとって最も厳しい直面である。

そのために、ごく少数の人しかそれに立ち向かおうとはしないだろう。

だが、この基盤の上に平和が築かれ、そして私たち本来の生き方が実を結ぶことになれば、私たち自身の独創的な能力を賢明に使い、恐れることなく、勇気をもって生きることが出来るであろう。

そしてその恩恵は他者の犠牲の上に立つ少数の者たちだけにではなく、すべての者に行き渡るであろう。

全生命への配慮が、個人的なものを凌駕し、以前に比べてさらにすばらしい幸福をもたらすであろう。

そしてすべての生命は限りない調和を楽しむことになる。


          (引用ここまで)


            *****
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