ホトケの顔も三度まで

ノンフィクション作家、探検家角幡唯介のブログ

魂が引き裂かれそうな苦しみ3

2013年09月04日 21時25分57秒 | 雑記
ダメもとで来たフィリピン取材だったが、今日ついに一番会いたかった取材先の居所をつかんだ。

この人に会いたいと思ってフィリピンに来た私であるが、考えてみると日本を出発した時はその人の名前さえ知らなかった。途中でカタカナ表記の名前が分かったが、それをアルファベットで書くとフィリピン人はどう発音するかということが分からなくなり、たぶんアルファベット表記はこうで、だからこう発音するんじゃないかと通訳の澤田さんに助言され、その発音でその人のことを知らないかと、いろんなところを回って聞きこんできた。しかし結果から言うと、私たちが想定していたその発音は実は間違っており、その人の名前はちがう読み方をしたのだが、しかしそれでもこの異国で澤田さんを巻き込んで地を這うような地どりを続けた結果、奇跡的に見つかったのである。

正確にういと今日見つかったのはその人のいとこで、いとこからその人の連絡先が分かった。その人はゼネラルサントスに住んでいると思っていたのだが、実は今はダバオの先のなんとかという村に住んでおり、たまたま昨日までゼネラルサントスにいたのだが、何か用事があって今日帰ってしまったという。しかし電話をしてわざわざ日本から来たのだと恩着せがましく言うと、明日、もう一度ゼネラルサントスに来てくれることになったのだ。

しかもそのいとこの話によると、なんとその人にはあの経験があって、その経験の話を聞ければ、もうこれは今回の取材は成功したも同然なのである。

という回りくどい書き方しかできないのが、実につらいところだ。

ここですべてを書いてしまいたいが、作品化する以上、ネタバレになってしまうような詳細をブログなんぞで明かすわけにはいかない。ああ、書きたいことを書けないのって、書きたくないことを書かなければならない時よりもつらいことなんですね。う~、魂が引き裂かれそうである。それに今、おしっこがもれそうだ。

それにしても取材は足で稼ぐもの。回れば回った分だけ結果はついてくる。今更であるが、新聞記者一年生のような心境になった。

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