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ゲームでは優れたストーリーは足かせになるか?――グリムグリモア最終インプレッションPART 1

2007年05月05日 23時47分05秒 | アニメ・コミック・ゲーム

極力ネタバレは避けて表記しているが、ストーリーの核心部分に触れる点もあるのでご注意を。

少女リレ・ブラウはガンメルの招きで”銀の星体の塔”にある魔法学校に入学する。そして、そのわずか5日後に、ガンメルによって倒された魔王カルヴァドスが復活しこの塔の全ての者は殺され、リレもまたその歯牙に掛けられようとしていた。その時、まるで弔うかのように塔の鐘が鳴り響いた…。

プレイヤーは戦闘の基本をリレと共に学びながら日々を進め、5日目に初の本格戦闘を経験し、そしてこの結末を迎える。最初の5日間はチュートリアルと呼ぶべきものだ。登場人物ともそれぞれ出会っているが、まだ真の姿を知ることはない。

気が付くと、そこは塔に来た最初の夜だった。彼女は何故か時間を遡っていた。5日間で手にしたグリモア(魔道書)は既に持っていた。彼女は事の次第をガンメルに告げる。
ガンメルはオパールネラ先生と共に、とある計画を進めていた。リレの話を聞いたガンメルはその計画を急ぐことにした。一方、あの惨劇を繰り返さないことを望んだリレだが、ある人物の裏切りで再び魔王の復活を許してしまう。
結局、魔王は生前に彼と契約していた悪魔ギムレットの前に倒される。だが、今度はギムレットによって塔の者たちは滅び去るのだった。ただ一人、鐘の音を聞くリレを除いて…。

チュートリアルは終わったものの、まだまだ使えるグリモア(魔道書)は限られ、戦闘の難易度は低い。敵が魔王と悪魔と知るも、リレにはまだそれに対抗する力はない。

再び時間を遡ったリレ。ガンメルとオパールネラを頼る訳にはいかない彼女は、シャルトリューズ先生に助力を求めようとしたが…。彼の弟子バティドと共に惨劇を止めようとするも、少女アマレットの犠牲によって悪魔の力を弱めるだけで精一杯だった。そして、また5日目の鐘が鳴る。

物語の面ではアマレットがヒロインとなる。自らの存在意義を求め、自らの命を懸けて悪魔を滅ぼした少女。
リレはかなりの実力者となり、戦闘も徐々に難易度が上がる。特に「ギムレットの目覚め」は使えるグリモアが錬金術に限定され、多くのプレイヤーが躓いたマップだろう。

秘策を持って今度こそこの惨劇を止めようとするリレ。その秘策で悪魔ギムレットを地獄に追い払おうとするも失敗し、またもアマレットの犠牲によって窮地を救われる。更に魔王の封印も解かれ、彼女の望みは絶たれたが…。

謎が明らかになり、これまで受身だったリレが仕掛ける番となる。力ある魔法使いとして彼女の言動や雰囲気も変化してきた。
この辺りからノーマルの難易度ではかなり歯ごたえがあるものとなる。初挑戦では勝てず、何度かやり直して勝つというパターンが増えてくる。或いは難易度を下げてプレイするか…。

ついに彼女はこの惨劇を防ぐことができた。そして、この繰り返される5日間を終わらせるためにその原因となった場所へ赴く。そこで彼女は一つの出会いと別れをして、明日という日を取り戻すことに成功する。

本気を出した教師たちと互角以上に渡り合い、爽快に目的を果たしていくリレ。
最終マップを除いて難易度は高く、戦闘時間も長引きがちだ。

RTS、リアルタイムシミュレーションの初心者向けとしてはよく出来ている。最大の欠点と指摘される対人戦闘ができないという点はハードの仕様上仕方がないだろう。ユニット(使い魔)のバランスがやや悪い点は難易度を下げるためのものだ。
問題は、ストーリーと戦闘部分の連関だろう。ストーリーは次を早く知りたいと思わせるだけの魅力を備えている。だが、それは戦闘がストーリーの足かせとなりかねない。
その対策としてマップごとに戦闘の難易度を選べるようにし、また難易度によってデメリットを生じさせないようにした。この結果、多くのプレイヤーは難易度を下げてプレイし、クリアすることができただろう。
しかし、それはこのゲームの核であるはずの戦闘を楽しまないプレイと言える。難易度が低ければ戦術などを考えなくても好きなようにプレイして勝てるバランスとなっている。低難易度主体でプレイするとこの戦闘の面白さに気づきにくい。従って、クリアしてしまえばもうプレイはしないだろう。現在判明しているクリア後の要素は、全マップノーマルクリアで難易度ハード出現というものだけなので、なおさらだ。

では、低難易度による救済がなければ良かったのか。おそらくクソゲーの評価が広まっていただろうと思われる。初心者向けではあるが、RTSはプレイヤーを選ぶ。プレイヤー自身の成長しか上手くなる方法がないからだ。何度も負けながらなお新たな戦術を考えてプレイする楽しみを楽しみと感じなければ続けることができないだろう。
それでもプレイするうちに楽しみを感じるプレイヤーもいるはずだ。そうしたプレイヤーを生み出すために、もう少しおまけ要素のような形で意欲を引き出す方策が欲しかった。
全体のボリューム不足も言われていることだが、サブストーリーが無理ならイラスト集やボイス集などでいいからノーマルクリアの特典を用意しておけば、もっと盛り上がりもあったと思う。

ストーリーやキャラクターは悪くない。ゲームシステムも悪くない。しかし、その両者が幸福な関係を築けなかった。難易度調整ができることは悪くない。だが、簡単にクリアできることは決していいことばかりではない。


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