本屋大賞
2011年の本屋大賞が発表された。受賞したのは東川篤哉『謎解きはディナーのあとで』。8回目となる本屋大賞だが、埋もれた作品の発掘というよりは既に人気となっている作品への賞と変化していると指摘されているように、今回もベストセラーへの受賞となった。
それでもこうしたライトなエンタテイメントへの賞は数少ないだけに、本屋大賞の存在価値が減じているとは思わない。
■1位 謎解きはディナーのあとで
著者:東川篤哉/小学館/386.5
安楽椅子探偵もので、ミステリとしてもそれなりの出来だが、あくまでもウリとなったのはそのキャラクター性。執事でありながら暴言を吐く探偵役と、その主で女刑事でもある主人公の二人のやりとりだけで楽しめる作品となっている。賞とは無縁そうな作品だけに受賞して良かったと思った。
■2位 ふがいない僕は空を見た
著者:窪美澄/新潮社/354.5
未読。読書メーターで知って一度は図書館に予約を入れたものの他との兼ね合いで予約を取り消してそのままになっている。「女による女のためのR-18文学賞」大賞受賞作を含む作品で、性を扱った青春小説。賞に相応しいという意味ではこちらの方が上だったかもしれないが。
■3位 ペンギン・ハイウェイ
著者:森見登美彦/角川書店/310
未読。過去2度『夜は短し歩けよ乙女』『有頂天家族』で本屋大賞にノミネートされているが、2位と3位だった森見登美彦。今回もあと少し届かなかった。本作は2010年日本SF大賞受賞作。
■4位 錨を上げよ
著者:百田尚樹/講談社/307.5
未読。『永遠の0』で知られる百田尚樹の新作。『永遠の0』は読んでみたいと思っているのだが。過去には『BOX!』が本屋大賞5位だった。
■5位 シューマンの指
著者:奥泉光/講談社/270.5
未読。音楽を扱ったミステリで興味はあったものの「読書メーター」のコメントでは専門的な音楽理論などが多くてあまり好意的な評価を見れなかったためスルーしていた。
■6位 叫びと祈り
著者:梓崎優/東京創元社/263
未読。連作ミステリにして著者のデビュー作。現在図書館に予約中。
■7位 悪の教典
著者:貴志祐介/文藝春秋/259.5
| 悪の教典 上 価格:¥ 1,800(税込) 発売日:2010-07-29 | | 悪の教典 下 価格:¥ 1,800(税込) 発売日:2010-07-29 |
未読。『このミステリーがすごい!』2011年版1位を飾った作品。山田風太郎賞を受賞し、直木賞候補作にもなった。そうした華々しさがかえって票を集めなかった要因になったのかもしれない。
■8位 神様のカルテ2
著者:夏川草介/小学館/259
昨年度2位だった『神様のカルテ』の続編。作品の出来自体は前作より良くなっていると思うが、続編ではインパクトに欠けるため賞には不向きだろう。ノミネートされただけでも高評価と言うべき。
■9位 キケン
著者:有川浩/新潮社/241
| キケン 価格:¥ 1,470(税込) 発売日:2010-01-21 |
2冊ノミネートされて票が分散してしまった感がとても残念。有川浩は過去『図書館戦争』『植物図鑑』がノミネートされているが5位と8位に終わっている。上質のエンタテイメントだがテーマ性に欠けるため賞に縁が無いのが残念。
■10位 ストーリー・セラー
著者:有川浩/新潮社/202
『キケン』がヤンチャなライトノベルって感じなのに対して、本作は夫婦の愛をベースにした悲劇。中編2作で構成され、それぞれぐいぐいと引き込まれる作品なのだが、広がりに欠けるなど少し物足りなさも感じた。有川浩は近作『県庁おもてなし課』が良い出来だったので(もちろんどの作品も高い水準で安定しているが)、来年の本屋大賞に期待したい。