環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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 原発を論じた2つの討論  朝日新聞紙上の「耕論」とNHKの「日曜討論」

2007-08-19 23:45:12 | 原発/エネルギー/資源


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朝日新聞が「温暖化『最重要課題』」と強調した藩基文・国連事務総長との会見記事を朝刊の一面トップに据えたこの日、原発に関する2つの討論を見ました。


★朝日新聞の討論

この日の朝日新聞の4ページには「耕論 原発と温暖化対策」のテーマのもとに、「地球温暖化対策を契機に世界的な原発回帰の動きが出ている。どう見るべきなのか。専門家の対談をとして考える」という観点から、竹内敬二さん(編集委員)の司会で内山洋司さん(筑波大学教授、エネルギーシステム分析)と飯田哲也さん(NPO法人・環境エネルギー政策研究所所長)が討論しています。

「50年に排出半減 難しい 安全徹底、原発に頼る」という内山さんの立場と「原発から段階的に撤退を 再生エネルギー増やせ」という飯田さんの立場とは大きく異なります。

3人とも私の知人ですが、討論内容は10年前とほとんど変わっていないと思いました。私は1996年に原子力委員会主催の「第11回原子力政策円卓会議」(最終回)のパネリストとして招聘されました。この円卓会議は4時間におよぶ会議で、その時私の隣に座っておられたのが内山さんでした。 

●飯田さんの発言の中に、「エネルギー政策は将来像を描いてそこから現在すべき政策を考える『バックキャスティング』の発想をすべきだ。何もしなければエネルギーは減らないが、今やエネルギーを減らしながら経済成長することは可能だ。デンマークなどではエネルギー消費を微減させながら高い経済成長を達成している」という発言がありました。これは新しい発想で、私もそう思います。この考えは私のこのブログ全体を支えている考えです。

●また、飯田さんは「省エネも神話で、スウェーデンの家具メーカーが最近日本の店舗をゼネコンに任せたら、エネルギー節約のための配慮に欠け、『壁は薄く、窓はガラス1枚。なんだ、この国は』と驚いていた」と語っています。

この2つの部分を除くと、相変わらずエネルギー供給の議論が中心で、「資源の話」におよばないのです。エネルギーの供給の議論(入り口の議論)をするなら、エネルギーの需要の議論(出口の議論)も同時にすべきというのが私の視点ですが、 「有限である資源の話」「出口の議論である廃棄物の話」がまったく出てこないのです。これは、日本では21世紀のめざすべき国家像が十分議論されないまま、「持続的な経済成長」が国の方向として暗黙のうちに了解されているからなのでしょう。

関連記事

原発を考える⑤ エネルギーの議論は「入り口の議論」だけでなく、「出口の議論」も同時に行う


★NHKの討論

またこの日は、NHKの日曜討論(09:00~10:00)でも「原子力・エネルギー政策を問う」というテーマで討論が行われていました。出席者は望月晴文さん(資源エネルギー庁長官)、近藤駿介さん(原子力委員会委員長)、桝本晃章さん(前電気事業連合会副会長)に対して、飯田哲也さん(NPO法人・環境エネルギー政策研究所所長)、桜井淳さん(技術評論家)、秋庭悦子さん(消費生活アドバイザー)の6人とおなじみの人が多い討論会です。近藤さんとは、前述した1996年の円卓会議で同席しました。

こちらの討論も、地震の影響のことを除けば10年前の議論とあまり変わりないという印象でした。原発の議論をするときに、核廃棄物に触れない議論は極めて不十分だと思います。ご参考までに、10年前の日本の状況とスウェーデンの状況を示した図を掲載します。同じ図が関連記事にも出てきます。

10年経った今、両国のエネルギー政策の結果を検証しますと、スウェーデンの転換政策が着実に進展しているのに対し、日本のエネルギー政策はガイドラインの②で破綻している ことがわかります。ここに掲げた目標「CO2排出量を1990年レベルに抑制」が現在では8%増となっています。

関連記事

緑の福祉国家26 エネルギー体系の転換⑤ 10年前の1996年の状況 



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2 コメント

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こんばんは (ちこ)
2007-08-22 21:30:52

 小澤先生、暑い中毎日たくさんの大切な情報をありがとうございます。

 この二つの討論を我が家も見ました。「バックキャスティング」のところでは、オッ!と思いましたが、他は十年前とあまり変わらないとは、心細い限りです。

 こういった番組は積極的に見ますが、たいていがっかりすることが多いです。

 

 
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ショートケーキ? (小澤)
2007-08-25 10:00:17
ちこさん、コメントありがとうございます。

適切かどうか、はなはだ疑問ですが、たとえてみれば、ショートケーキの基盤となっているスポンジ部分は10年前とほとんど変わりませんが、のっているいちごがちょっと新鮮というところでしょうか。

だから、一歩前進とみるか、変わらないとみるかです。
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