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今日は「人間の生存条件の劣化」についてお話します。
私たちの「産業経済システム」とその下で行われる「消費活動」が、環境を構成している「生態系(エコシステム)」に影響を与え、その影響が、私たちが生きるために空気を吸い、水を飲み、食物をとる行動を介して、次の図のように、「人体への負荷」という形に収斂されます。
私たち人間は動物ですから、この図に示したように、ある範囲の温度と湿度の下で、光を浴び、空気を吸い、水を飲み、動・植物しか食べられません。この事実こそ21世紀の社会である「持続可能な社会」が備えるべき最も基本的な必要条件であり、これらの条件のいずれか一つが、環境の悪化により“量的あるいは質的”に有為に満たされなくなれば、21世紀の人間の生存が危ぶまれることは疑う余地もありません。
この他に、私たちは意識してタバコを吸ったり、無意識のうちに放射線にさらされたり、電磁波の影響を受けています。また、労働環境や住環境からも様々な物理的・化学的・心理的な影響を受けています。
最近では、低濃度の化学物質の摂取によると考えられる「化学物質過敏症」の報告が増えてきました。さらに、“いわゆる環境ホルモン”(内分泌かく乱物質)として知られる様々な環境由来の化学物質が、ある種の貝や野生動物の奇形や生殖機能に影響を与えているとする報告がありますし、人間の生殖機能や内分泌系統に影響をおよぼしたり、ホルモンのバランスを崩すことを示唆する医学的な報告も散見されるようになって来ました。
この種の化学物質の濃度と作用の関係は、ppt(parts per trillion:1兆分の1)という単位で表されるように、極めて低濃度(しばしば50メートル・プールに目薬一滴分などと形容される)と考えられるので、動物としての人間の持続性という観点からも、この種の報告は十分注目しなければなりません。
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私の環境論11 人間の生存条件の劣化(1/21)
このような視点から考えますと、今朝の朝日新聞(朝刊)の一面トップに掲載されていた次の記事は大変気がかりな記事です。
私たちの身体には生物としての許容限度(人体の許容限度)があるため、その許容限度を超えると、死亡から内分泌攪乱に至るまで、様々なレベルで健康の障害が出てきます。私たちが重視しなければならないのは多種類の化学物質による複合汚染です。
私たちは生きるがゆえに、「環境へ人為的負荷」をかけ(環境に影響を及ぼし)、逆に、「人体への負荷」を高めているのです(その影響を受けているのです) 。このような段階に、今、私たちは来てしまったのです。私は、これが「環境問題の本質」であると考えます。
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