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「20世紀から21世紀への峠を、スウェーデンは『自信と楽観主義(confidence and optimism)』とともに越えた。スウェーデンの『予算説明書』は、そう胸を張って宣言している。これに対して日本は、20世紀から21世紀への峠を、『不安と悲観主義』とともに越えるしかなかった。この対照的な相違は、『人間を信頼した国』と、『人間を信頼しなかった国』との相違だということができる」、これは昨日のブログに登場した神野直彦さん(東京大学経済学部教授)の著書『二兎を得る経済学――景気回復と財政再建』(講談社+α新書、2001年)の90ページに出てくる表現です。
スウェーデンと日本を鮮烈で対照的な表現で描写した神野さんはこの著書のなかで、世紀の変わり目に先進工業国が直面した「景気回復」と「財政再建」を2匹の兎にたとえ、90年代の日本、ドイツ、フランス、スウェーデンの対応を財政学の立場から分析し、比較検討しておられます。それぞれの国が、それぞれの異なる社会制度のもとで、それぞれの選択をした結果、現在に至っている状況がわかり、たいへん興味深いものです。神野さんの分析を要約すると、つぎのようになります。
①日本は景気回復という「一兎」を追ったが一兎をも得ずであった。ドイツ、フランスは財政再建という「一兎」を追い、一兎を得た。スウェーデンは景気回復と財政再建という「二兎」を追い、二兎を得た。
②スウェーデンは財政再建のために、「歳出の削減」と「増税」を実施した。歳出の削減と同時に、景気回復のために経費の中身を、教育への投資、IT(情報技術)インフラの整備、環境政策、強い福祉の4分野に大きくシフトさせ、1992年から知識集約的産業の成長を倍増させ、産業構造を転換させた。
③世界最強の「IT国家」をめざし、ストックホルムをして「IT首都」とまで賛美させる産業構造の転換こそ、スウェーデンが景気回復にも財政再建にも成功した鍵なのである。
90年代後半以降のスウェーデン経済のパフォーマンスを、「景気回復」という一兎から見ると、「一般財政収支の対GDP比」「GDPの推移」「1人当たりのGDPの推移」「経済活動指数」「失業率」「株価」「政策金利」「国債の格付け」「国際競争力」などの国際比較の可能なデータでは、きわめて好調です。
もう一つの「財政再建」という一兎についてはどうでしょうか。 「中央公論」が2004年11月号で、「特集 国家破綻の足音」を組み、そのなかで榊原英資さん(慶應義塾大学教授、元財務官)は、「日本の財政悪化は政治の再編成を招くか」と題して米国の格付け機関S&Pが、現状のままの財政制度が将来も維持されたときの25カ国の累積財政赤字(一般政府累積赤字対GDP比率)を試算した表を掲げています。
これを見ると、2000年のスウェーデンが55%(日本144%)、2030年が21%(日本399%)、2050年が59%(日本718%)。日本の状況は右肩上がりで、資産対象国のうち最悪です。欧米が判断基準としている累積財政赤字が60~70%であることを考えると、日本の深刻さが理解できるはずです。
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