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いよいよ、明日8月8日から甲子園球場で第89回全国高校野球選手権大会が始まります。この時期になると、私がいつも思い出すのは古くて新しい問題である「夏の甲子園 高校野球と原発」という話題です。炎天下の高校球児の大活躍に私たちはテレビに釘つけとなり、電力会社は落ち着かない日々を迎えることになります。
そこで、今日は「高校野球」と「原発」の話題をお届けします。私の手元に、「徹底討論 地球環境」(福武書店 1992年4月)という本があります。
この本は環境ジャーナリスト石弘之さん(朝日新聞)、岡島成行さん(読売新聞)、原剛さん(毎日新聞)の3人による「地球環境」について討論を収録したものです。3人とも、現在は大学に籍を移し、活躍しています。この本の中に、私の発言が出てきます。その場面(p218~219)をリライトします。
原 日本は問題が起こったときに、それをうまくその場で糊塗していく対処療法はうまいが、構造的に問題の根っこを潰していく価値観と方法論はこれだけ公害殺人を犯しても、なお身についていない。この間あるシンポジウムでスウェーデン大使館の環境・科学担当の小沢さんがスウェーデン社会との比較論でそのことに言い及んだ。日本は夏の電力ピーク時に甲子園で高校野球大会があって電力がもうギリギリにきていると騒ぐ。日本ではだから原発をもうひとつつくろうという話になってしまう。
スウェーデンの解決法は簡単だ。高校野球を9月にやればいいじゃないかって言ったんだ。会場のお客さんが僕の顔をにらんでいるから、違うぞ、夏の全国大会は毎日新聞じゃなくて朝日新聞がやっているんだぞって言ったら大笑いになりましたけれどね。僕んとこは寒いときにやっているんだ。クーラーなんかいらないときに(笑)。
石 そうそう。ですからすべて供給の論理、電気がいるから原発をつくるんだっていう論理でしょう。われわれ消費者もこの論理にがっちり組み込まれているわけですよ。
原 変えればいいというんですよ。暮らし方、ライフスタイルをね。
石 われわれ消費者にも責任がある。生活を変えないままに、必要なものだけを要求する。誰だって電力がこの増加率で供給し続けられるとは思っていない。でも、当面は供給の論理のすべてのツケが環境に回されてくる。ですから、こんなバカげた量的な拡大はもうええじゃないか。「いち抜けた」という、脱落の論理が必要なんですよ。
電力会社も、エネルギー資源の将来、環境へのツケ回しを考えたら、もうこれ以上電力供給は保障できませんと宣言するしかない。あるいは、欧米の1部の消費者と電力会社が面白い協定を結び始めましたが、「夏のピーク時にはエアコンの使用を自粛する代わりに、電気料金を特別割引する」というようなものがある。あるいは、エアコンを簡単に使えないように多額の税金をかけるなり、エアコン電力特別料金を考えるなり工夫がなさすぎますよ。
岡島 それは必要ですね。
石 石油だって有限なんですから、いかに二酸化炭素の効果的吸収法が確立したって資源は着実に減っていくわけです。
岡島 なくなってしまいますね。
このような状況は15年経った現在でもほとんど変わっていません。2月17日のブログ「経済、エネルギー、環境の関係」 に電力の推移を示す図がありますので、ご覧ください。電力は確実に増加しています。2005年の発受電電力量は過去最高を記録しました。
夏の甲子園と原発の関係で特に重要なのは、高校野球の会期(今年の場合は8月8日から22日までの15日間)中のそれぞれの日が記録する「最大電力」と「供給力」の関係です。東京電力(株)はこの関係を大変わかりやすい 「TEPCO でんき予報」 で公表しています。この「でんき予報」は高校野球の会期を含めて7月9日(月)~ 9月7日(金)の期間中、予想される電力の需給概況について毎朝情報を提供しています。
今年は特に、7月16日に起きた新潟県中越沖地震によって東京電力柏崎刈羽原発にかなりの損傷が認められ、原子炉7基がすべて停止していますので、これまでになく電力の送受電には困難が伴うものと思います。