酔眼独語 

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福士「名古屋挑戦」の理不尽

2016-02-03 14:52:15 | スポーツ
 大阪国際女子マラソンを快勝した福士加代子が仰天の挑戦だ。40日後の名古屋ウイメンズマラソンに強行出場するのだという。

 《リオデジャネイロ五輪の女子マラソン代表争いで1月31日の大阪国際女子に優勝し、代表選出が確実とみられている福士加代子(ワコール)が、選考最終レースとなる3月13日の名古屋ウィメンズに出場する方針を固めた。2日、ワコールの永山忠幸監督が明らかにした。


 約1カ月半の短期間で再び選考レースを走る異例の挑戦となる。永山監督は決断の理由を「日本陸連から確定と言ってもらえず、外れる可能性も数パーセント残っている。無理は承知だが、福士の名前が必ず残るようにしないといけない」と説明した。


 福士は大阪国際女子を日本歴代7位の2時間22分17秒で制し、日本陸連の設定記録(2時間22分30秒)を突破した。


 好成績を残せなかった選手が再挑戦するケースはあっても、福士のように十分にアピールした選手が二度、選考レースを走るのは異例のこと。永山監督は「(日本陸連に)代表は確定と言ってもらえなかったので」と言う。名古屋で好走すれば、わずかに残る落選の可能性を排除できると考えて決断した。


 日本陸連関係者は「99・9パーセントでも、今の段階では確定といえない」と説明する。

 
 大阪国際での福士の走りは申し分なかった。ただ、名古屋で複数の選手が日本陸連設定記録を上回った場合、福士の立場は絶対ではなくなる。他の実業団チームの監督は「五輪に連れていきたいという気持ちが強いからこそ、不安になるのだろう」と永山監督の心中を推し量る。


 条件の異なる大会の成績を比較するマラソン代表選考は難しい作業だ。それが4年に1度の五輪となれば、選手らの思いは一層強く、事情は複雑になる。過去には騒動を生んだケースもある。「一発勝負で決めてほしい。その方がすっきりする」。実業団の関係者にはそんな声もある》=TOKYO Web=。

 永山監督のコメントからは陸連への不信がうかがえる。

 リオの選考基準は世界選手権8位以内入賞者で、日本人選手最上位の1名のみ。それ以外の3つの選考レースにおいて日本人3位以内の選手の中から、(1)2014年4月1日から16年3月13日までの間に日本陸連設定記録(男子2時間6分30秒、女子2時間22分30秒)を突破した者(2)各レースの記録や順位、レース展開、タイム差、気象条件を総合的に勘案し、本大会で活躍が期待されると評価された選手から選考するが、その優先順位は(1)、(2)の順-である。これに照らせば福士は「当確」。永山が言うように「外れる可能性も数%ある」のは確かだが、名古屋を走る顔ぶれを見ると福士が漏れる可能性は極めて低いだろう。

 永山が陸連に正面から「福士は間違いないですね」と問えば「非常に有力だが名古屋が終わらないとなんとも…」という答えが返ってくるのは当然だ。陸連に信頼感を持っていれば信じて待つ態度になるのだが、そうはならなかった。互いに不幸というしかない。

 気になるのは福士の肉声が聞こえてこないことだ。大阪を勝つまでどれほどの練習を重ねたことだろう。ゴール後「もうヤダー」と叫んだのは本心だ。それをまた走れと、しかも五輪本番ではなく名古屋で。理不尽極まりない。

 永山が狙うのは五輪のメダルだ。マラソンのメダリストともなればそのステータスや収入は一挙に跳ね上がる。五輪で2度4位となった中山竹通は「4位なんてクソ。メダルを取らなきゃ」と言っている。選手だけでなくそれを育てた白楽の価値も急上昇する。

 スピードランナーの福士は故障も多い。1カ月と少ししか間をおかず本気でまたフルを走るのはリスクが大きすぎる。いま日本の女子マラソン選手で世界と勝負できそうなのは福士ぐらいのものだ。陸連もそれぐらい承知しているだろう。

 もしもの話だが、福士が名古屋で不調、惨敗したときどうするのか。あれこれ考慮すると名古屋を走って得るものはないもない。
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