酔眼独語 

時事問題を中心に、政治、経済、文化、スポーツ、環境問題など今日的なテーマについて語る。
 

吹雪での惨事を考える

2013-03-04 09:40:48 | 外交
 2日から3日にかけて北海道で荒れ狂った吹雪のため8人もの人が命を失った。車のエンジンをかけっぱなしにしていたための一酸化炭素中毒死や凍死である。亡くなられた方々のご冥福をお祈りすると同時に、なぜこのような事故が続発したのかを考えてみたい。


 ≪北海道は2日から3日にかけて発達した低気圧による暴風雪に見舞われ、中標津(なかしべつ)町で雪に埋もれた車内で母子4人が一酸化炭素中毒になるなど、計8人が死亡した。道東を中心に幹線道路の多くが通行止めとなり、14市町で約千人が公共施設などに一時避難。各地で車が立ち往生する間に、地吹雪で車が埋まるなどして、被害が拡大したとみられる。

 中標津町俣落(またおち)の幹線道路で2日午後6時半ごろ、近くの宮下加津世さん(40)と長女で高校2年生の未彩(みさ)さん(17)、次女で中学2年生の紗世(さよ)さん(14)、長男で小学5年生の大輝(だいき)さん(11)が、約2メートルの雪に埋もれた車内から見つかった。中標津署によると、4人は死亡しており、死因は一酸化炭素中毒だった。署は車の排気管が雪で塞がり、車内に排ガスが流入したとみて調べている。

 同町俵中(ひょうちゅう)では、車で帰宅途中だった近くのアルバイト従業員北川陽菜(はるな)さん(23)も、車から離れた場所で死亡していた。

 湧別(ゆうべつ)町では3日午前7時すぎ、同町東の漁師岡田幹男さん(53)と長女で小学3年生の夏音(なつね)さん(9)が、乗っていた軽トラックから約300メートル離れた牧場の倉庫前で雪に埋もれているのが見つかった。岡田さんは、夏音さんに覆いかぶさって凍死していた。夏音さんは軽いけがをしたものの、命に別条はないという。

 このほか、吹雪に見舞われた網走市と富良野市でも男性2人が亡くなった。網走市では勤務先から歩いて帰宅中の酪農ヘルパー、今井教(さとし)さん(54)が道路脇で倒れ、富良野市では不動産会社社長、佐々木亨さん(76)が雪に埋もれた車の近くに倒れていた≫=朝日degital=。

 車が雪に埋まったらエンジンを止めるのは雪国の常識である。とはいえ、実際に自分で体験しないと、地吹雪の恐ろしさは分からないことも確かだ。猛烈な地吹雪の際には20分と掛からずに車がすっぽり雪に覆われてしまう。筆者は20年ほど前、新潟市郊外の農道で地吹雪に見舞われ、アッというまに埋もれた経験がある。道路わきの雪壁の高さと同じになるまで、吹雪はひたすら道路を埋めまくるのだ。消防を呼び、牽引されて何とか何とか難を逃れたのだが、近くに人家がなかったらどうなっていたことやら。

 地吹雪で車が埋まるケースは、両側ないし片側に壁がある場合が多い。風を避けようとしてこのような場所に車を止めると、大変なことになる。万一埋まってしまったら、エンジンは切ることだ。

 子供を抱えながらこと切れた父親の姿を想像すると胸が詰まる。

 亡くなった方々はどのような服装をしていたのか。ここがポイントだ。軽トラ事故の報道で、娘の服装を尋ねられた父親が「フードつきのスキーウエアを着ているから大丈夫」といった趣旨の発言が伝えられているぐらいで、詳細は不明である。現地の風速は数十㍍に達していたと想像される。気温は氷点下、体感温度はマイナス30度前後だったのではないか。スキーウエアで耐えられる寒さではない。

 雪国や北国でも、車で外出する際は意外と軽装が多い。途中でのトラブルを想定していないのだ。厳冬期のドライブでは何が起きるか分からない。ダウンジャケット、厚手の手袋、防寒靴は必携だ。筆者はスコップや脱出用の古毛布も携行している。

 一連の事故を一つ一つ検証し、悲劇を繰り返さないよう注意を喚起してほしい。
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子どもの渡航移植を考える

2013-02-27 09:37:36 | 外交
 重い心臓病を抱える子どもが、米国で心臓移植するケースが相次いでいる。2010年、WHOが渡航しての臓器移植自粛を決議して以来、「ブーム」は一時沈静化した(報道がなかっただけ?)と思っていたが…。

 
 ≪重い心臓病を患う長岡市の2歳男児が26日午前、心臓移植のため、新潟空港からチャーター機で米国へ出発した。27日未明(日本時間)に現地に到着し、移植を待つことになる。空港デッキに集まった支援者は「元気になって帰ってきてほしい」と見送った。

 米国到着後はニューヨーク市のコロンビア大学病院で移植の登録を行う。新潟大医歯学総合病院の主治医によると、米国の待機児童と同じ基準でドナー(臓器提供者)を待ち、「2、3カ月で移植できることもある」という。経過を見守るため、術後も半年ほどは米国に滞在することになる≫=新潟日報=。

 ≪米国で心臓移植手術を受けた川崎市高津区の浜崎陽菜(ひな)ちゃん(8つ)が帰国後入院した都内の大学病院を退院し、二十五日、市役所で自宅の生活に戻った喜びを報告した。全国から寄せられた募金約一億三千七百七十万円を数千万円残して手術代、渡航費などを賄うことができ、同席した両親は涙を浮かべ「ありがとうございます」と感謝を繰り返した≫=東京新聞=。


 「よかったね、〇〇ちゃん」などの見出しが躍る新聞を見ると違和感を禁じ得ない。移植される心臓があるということは、「適格者」の誰かが死ぬことである。軽々しく「命のリレー」などと呼んではいけないのではないか。亡くなったもう一つの命に対して、どのように敬意を表すのか。この点に触れた記事など見たことがない。


 それにしても、短時日に1億円をはるかに超える募金が集まるのには驚かされる。「私は優しい」症候群がこの国を覆っているからなのだろう。たとえば、凶悪殺人事件の現場。花束やドリンクボトルの山ができる。事件とは全く無関係の人が、次々と訪れては花を手向ける。こうした心情と心臓移植に寄付する心情とが重なって見える。

 「善意」をとやかく言う気はない。だが、集めた金の使い道はきちんと示すべきだろう。ひょっとすると支援団体では公表しているかもしれない。だが、メディアでこうした点に触れたケースを知らない。大々的に土地上げる以上、後始末についても面倒を見るべきではないか。

 日本からの患者が高額の手術料で優先的に移植されることはないのか。チャーター機を使うほどの重態なのか。金にまつわる疑問も多い。臓器移植全体がベールに覆われている。とりわけ、子どもが海外で受ける場合は、募金達成と手術の成否しか報道されない。これでは臓器移植への理解など深まるはずもない。
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レスリング五輪除外の危機

2013-02-13 09:51:28 | 外交
 日本が五輪でメダルを量産してきたレスリングが、2020年大会以降実施競技から外される可能性が高くなった。3大会連続金メダルの吉田沙織ら日本の関係者は大きなショックを受け、動揺しているという。

 ≪国際オリンピック委員会(IOC)は12日、スイスのローザンヌで理事会を開き、ロンドン五輪で実施した26競技からレスリングを除いた25競技を2020年五輪で実施する「中核競技」として選定した。第1回の1896年アテネ五輪でも実施された伝統競技のレスリングは、東京が招致を目指す20年五輪で除外の危機を迎えた。

 関係者によると、理事会は投票で中核競技から外れる1競技を決め、レスリングは近代五種との決選投票で敗れた。

 28競技を実施する20年五輪では、中核競技に16年リオデジャネイロ五輪で採用されるゴルフとラグビー7人制を加えた27競技の実施が確定した≫=共同=。


 レスリングは近代五輪発祥以来、2回大会を除きずっと行われてきた伝統の競技である。というより、紀元前の古代オリンピックでも実施されていた最古の競技の一つだ。川本信正監修の「オリンピックの事典」によれば紀元前の第17回大会までは短距離走のみ、bc708年にレスリングと五種競技(走り幅跳び、やり投げ、短距離走、円盤投げ、レスリング)が加えられたという。

 これだけ歴史と伝統のある競技が、なぜ除外の憂き目を見るのか。華やかさに欠けるとかメダル獲得国が偏っているなどの理由が挙げられているがもう一つはっきりしない。

 ただ、この競技は中東と東欧・ロシア、日本を含む極東勢の力が強く、西欧や米国はなかなか勝てない。先のロンドン五輪ではイランはグレコで圧倒的実力を見せて金3個。フリーでもメダルを量産した。スポーツ界で影響力を持つどこかの国が「イランの国威発揚につながるような競技はちょっとね」と言い出しても不思議ではない。

 2020年大会といえば東京が立候補している当の大会である。東京のライバル、トルコもレスリング強国だ。レスリング除外となれば、この2か国の招致活動にも影響しかねない。で浮上するのがマドリード? 。「サマランチの遺光」もあるし、と考えるのは勘ぐりすぎか。
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「いわき」はいま

2013-02-12 11:10:09 | 外交
 日曜日、いわき市で開かれたマラソン大会でフルを走ってきた。2年前の震災以降、この地にはボランティアなどで3回ほど訪れているが、光と影が交錯している印象を受ける。

 いわき市の人口は原発被災地からの受け入れなどで増えている。東電福島第1原発の普及に絡む工事要員や建設関係の流入も多く、飲み屋の景気はよさそうだ。

 宿泊先のホテルでも工事関係の長期滞在者が多く、サウナで交わしている会話はパチンコと競輪に関するものが多かったように感じる。厳しい仕事の憂さを晴らすには、娯楽と酒は欠かせない。

 いわき市で最も震災の打撃が大きかった北部の久ノ浜町を訪れてみた。2年前と変わっているのは住宅のがれきが片付いていることぐらい。野球場10個分以上の広い土地は、基礎のコンクリートなどがそのまま残り、かえって荒涼とした雰囲気だった。ここは市街地再開発事業で生まれ変わるそうだが、事業に先立って堤防のかさ上げが必要となる。堤防ができ、街の建設工事が始まるのはいつになるのか。

 久ノ浜から10キロほど南、「乱れ髪」で知られる塩屋崎灯台直下の集落も、「家屋の跡」が広がっていた。ここは久ノ浜とは違い、高台移転を決めたそうだ。背後の山を崩して宅地を造成するというのだ。だが、土地造成が完成するのは、速くても10年後とか。

 大震災から間もなく2年になるが、復興の足取りはまだ半歩踏み出したばかり。「仮の町」設置などで行政需要がさらに高まると予想されるいわきの今後に注目したい。
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「メイドイン ジャパン」が復調??

2013-02-01 09:20:57 | 外交
 「メイドイン ジャパンは過去のこと」。業績不振による大リストラを迫られているパナソニックやソニー、シャープなどの家電業界は韓国中国勢に押しまくられ、自動車業界も青息吐息という状態を指して冒頭の言葉が声高に語られていた。ところがどうだろう。安倍政権が誕生し、日銀に強烈なヘッドロックをかました途端、円は下落し株価は上がった。実体は何もないのに、早くも景気が回復したかのようだ。トヨタは世界一の座を取り戻し、ソニー株ももてはやされている。

 ≪31日の日経平均株価は24円71銭高の1万1138円66銭で、1月の月間では743円(7.2%)高の1万1138円と、2009年3~8月以来の6カ月連続上昇となった。円相場は月初の1ドル=86円台から月末には91円近辺まで下落し、輸出株に買いが続いた。円高修正が一服すると銀行株などの内需株に買いが入るなど、相場全体の先高観は強い。主要株の1月の騰落率で上昇率首位はソニーで2位はマツダだった≫

 ≪シャープの2012年10~12月期の連結営業損益は25億円前後の黒字(前年同期は244億円の赤字)になったようだ。従来は赤字を見込んでいたが、販売好調なスマートフォン(スマホ)など携帯電話事業がけん引し、5四半期ぶりに黒字転換した。白物家電や液晶テレビの販売も想定を上回ったようだ≫=いずれも日経=。

 日本の家電メーカーの凋落は、魅力ある新商品が出せなくなったことにあるとされる。とすれば、円安で収益が改善したといって喜んではいられないはずだ。円安・株高による「業績回復」を過信して、体質改善に後れを取るようなことがあれば、NHKのドラマ「メイドイン ジャパン」を地でいくことになりかねない。

 車メーカーでは相変わらずリコールが続いている。いいものを丁寧に造る―これがメイドインジャパンの神髄だろう。最安パーツを寄せ集めてつくるのは中国などに任せておけばいいと思うのだが…。
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駆け込み退職、どっちもどっち?

2013-01-23 15:41:50 | 外交
 読売が真っ先に報じた「埼玉県 教員110人駆け込み退職」にはびっくりした。3月の定年まで待てば150万円損するから、今のうちに―ということらしい。学期途中で生徒を放り出すことになり、非難囂々だが…。

 ≪埼玉県職員の退職手当が2月から引き下げられるのを前に、3月末の定年退職を待たず今月末で「自己都合」により退職する公立学校教員が、県採用分で89人に上ることが21日、わかった。


 県費で退職手当が支払われるさいたま市採用の教員も、21人が同様の予定という。県教育局の担当者は「例年、定年退職者が年度途中で辞めることはほとんどない。異例の事態だ」としている。該当教員がいる学校では後任の確保の対応に追われている。

 県によると、今年度の県の定年退職者は約1300人(県警を除く)。このうち1月末での退職希望者は教員が89人、一般職員が約30人の計約120人となっている。

 改正国家公務員退職手当法が昨年11月に成立し、総務省が自治体職員の退職手当引き下げを自治体に要請。埼玉県では県議会が昨年末に改正条例を可決し、2014年8月までに平均約400万円が段階的に引き下げられる。改正条例は2月1日から施行され、今年度の定年退職者は3月末まで勤務すると、平均約150万円の減額となるという。2月1日の施行について、県人事課は「速やかな実施が必要」と説明している≫=読売online=。

 考えてみると、条例の施行時期にも問題がある。通常この種のものは新年度からが常識だ。だが、それでは退職金削減額が少なくなる。2か月、1300人分で約19億円なり。これでは早く施行したくなる。せこい行政とせこい教師の駆け引きの結果が、100人からの早期退職というわけだ。

 毎日などによれば、この現象は埼玉県だけに限らない。佐賀、徳島、愛知など全国に広がっている模様で、愛知では県警幹部も手を挙げているという。

≪埼玉県内で100人超の教員が退職手当引き下げ前に「駆け込み退職」を希望している問題で、佐賀県と徳島県では教頭や学級担任を含む教員43人が既に駆け込み退職していたことが22日、毎日新聞の全国調査で分かった。学校事務職員や一般行政職員を加えると70人超が退職。高知県など4自治体でも退職希望者がおり教育委員会が対応に追われている。

 埼玉県とさいたま市を除く46都道府県と19政令市の教委に聞き取りをした。佐賀県は退職手当を引き下げる改正条例を1月1日に施行したが、昨年12月末で教員36人(小学校8人、中学校5人、高校16人、特別支援学校7人)と一般職員16人が退職。

 徳島県も1月1日付で条例改正。昨年12月末に教員7人(小学校2人、中学校3人、高校1人、特別支援学校1人)と学校事務職員5人、一般職員7人が退職した。

 また、高知県は3月に改正条例を施行する予定で、教員2人が2月末の退職を希望。愛知県と兵庫県、京都市でも3月改正で、退職希望者がいるとみられるが「未集計」などとして詳細を明らかにしていない。

 
 愛知県では3月1日で退職金を引き下げるため、定年退職を迎える県警職員と公立学校教員で2月末の退職希望が相次いでいることが分かった。県警や県教委は対応に追われている。

 埼玉県の公立学校で退職金の減額前に教員が相次いで退職を希望していることを受け、文部科学省は22日、全国の都道府県に調査を始めた。(1)条例を改正し退職金を減額するか(2)いつから減額か−−の2点について報告を求める≫=毎日jp=。

 一昔前なら考えられない事態だ。文科省の調査が徹底すれば、さらに衝撃的な状況になるかもしれない。とりわけ、埼玉県が突出していたことに注目したい。「埼玉の教師」を目指した人というより「埼玉しか受からなかった」からこの県に赴任したということではないか。地域への帰属意識も生徒への愛情もない。どこの自治体でも同じようなものだろうが、首都圏は格別と思われる。

 日本の教育は大都市圏から腐り始めている。
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液状化するマグレブ

2013-01-20 15:29:16 | 外交
 アルジェリアの人質事件、アルジェリア軍による武装勢力掃討作戦は、20人以上の犠牲者を出すという代償をって一応終了した。軍の公式発表では人質の死者を23人としているが、まだ多数の消息不明者がいるとみられ、事件の全容が明らかとなるのはこれからだ。

 ≪アルジェリア軍は19日、イスラム武装勢力が人質を拘束していた天然ガス関連施設を急襲、4日間にわたった今回の事件が終了した。アルジェリア政府はこの事件で人質23人、武装勢力32人が死亡したと発表した。

  武装勢力に拘束されていた人質の出身国は最大で12カ国。19日深夜までアルジェリアからの情報はほとんど出てこず、日米英など世界各国の首脳は事態を見守った。今回の人質事件をきっかけに、北アフリカに拠点を置くテロ集団による脅威拡大の懸念が高まっている。


 アルジェリア政府高官によると、19日の急襲作戦中に外国人の人質7人と武装勢力11人が死亡した。同高官によると、アルジェリア軍は武装勢力が残る人質の殺害を始めたと確信したため、急襲作戦を実行したという。


 アルジェリア内務省は19日に発表した死者数は暫定的としている。アルジェリア当局は死亡した人質23人の国籍は明らかにしなかった。また、現場から機関銃やライフル銃、散弾銃、ロケット弾、ミサイル、手榴弾、爆発物のベルトを含む武器が回収されたことを明らかにした≫=ウォールストリートジャーナル日本語電子版=。

 日本人を含む多数の犠牲者が出たのは痛恨の極みだ。ただ、20年以上もテロとの戦いを繰り広げているアルジェリアには、強行突破しか選択肢がなかったのも明らかだ。プラント施設への侵入を許した段階で多国籍企業、政府側の「負け」。北アフリカ・マグレブの石油・ガス関連施設警備の脆弱性が浮き彫りになった。

 砂漠の中の巨大プラントにやすやすとテログループが侵入したことは、この地域一帯がさらに不安定化するのではないかという危惧を抱かせる。アフガン、イラク戦争の戦後処理やリビア解体を中途で投げ出したツケともいえる。

 アルカイダはアメーバのような組織といわれており、実態は必ずしも明らかではない。ただ、ソマリアやマリなどの破たん国家には必ずアルカイダもどきの組織がはびこる。シリアもかなり危ない。

 中東、アフリカの「民主化」は、アルカイダの台頭を招く側面もあり、手放しで礼賛するのは禁物だろう。不安定国家の石油関連施設が次々と襲われるような事態になれば、原油価格の高騰も避けられない。

 石油プラント防衛戦略を急ぐ必要があるが、その主体はどこになるのか。アメリカは余力がなく、フランスはもっと力不足だ。アフリカでの権益を拡大しつつある中国が出てくると話はよりややこしくなる。しばらくはマグレブ、中東から目が離せない。
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「ならぬものはならぬ」

2013-01-15 10:02:45 | 外交
 綾瀬はるか主演のNHK大河ドラマ「八重の桜」で頻繁に出てくる「ならぬものはならぬ」のセリフが気に入っている。会津藩の子弟教育の指針「什の掟」という。

 「年長者の言ふことに背いてはなりませぬ」「卑怯な振舞をしてはなりませぬ」「弱い者をいぢめてはなりませぬ」など7つの行為をきつく戒め、最後に「ならぬことはならぬものです」とまとめている。

 これは個人の道徳や倫理のありようを説いたものだが、ここで言いたいのは、世の中にはできないもの、やってはいけないものがある―ということだ。先端の生命医学などにもこれが当てはまるのではないか。「卵子バンク」の設立などもその一つと考える。


 ≪不妊治療専門医や卵巣機能が低下する患者の関係者らでつくる民間団体「卵子提供登録支援団体」(略称・OD-NET、事務局・神戸市、岸本佐智子代表)は14日、早発閉経など卵子がない患者向けに第三者から健康な卵子の提供を募る「卵子バンク」を目指した事業を始めると発表した。

 匿名で無償のボランティアを登録し、医学的な条件が合った患者に提供する。登録の受け付けは15日に開始。海外で日本人女性らから卵子提供してもらう団体はあるが、国内での提供を目指す団体は初という。提供者の安全性の確保や生まれる子供の権利などについて議論を呼びそうだ。

 今回募集する提供者は、子供がいる原則35歳未満の女性で、配偶者の同意が必要。排卵誘発剤などによる副作用が起きた場合の医療費は患者側が負担する。

 仙台市などの5つの民間不妊治療施設が卵子の採取や体外受精を担当。早発閉経や染色体異常のターナー症候群で卵子がないと診断された患者計20人を既に登録しており、当面、患者の新規募集はしない。

 同団体によると、早発閉経の女性は約100人に1人、ターナー症候群の女性は約2千人に1人で、これらのうち妊娠を希望する人は国内で数千人に上ると想定される。提供者の個人情報は患者に知らされることはない≫=産経=。

 子どもを欲しいと思うのは人間として当然だろう。だが、自分や配偶者に決定的な欠陥があるのに「科学技術?」の力を借りて無理やり子供をつくるというのには賛成できない。生命の誕生や消滅は自然の摂理であり、人工的な操作は無用と考えるからだ。

 里子や養子ではつながりが薄いと考えるからこういう選択が生まれるのだろうか。

 他人の卵子で誕生し、苛烈な死を遂げた人から臓器の提供を受けて命を長らえる。この人物はいったい何者なのかとの疑問がわく。

 科学の進歩で「何でもできる」という考えが蔓延していないだろうか。「できる」ことであっても「ならぬもの」がある。原発などもその一例だ。「ならぬものはならぬ」をこれからの生き方のキーワードにしたい。
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東京五輪は実現するか

2013-01-08 09:15:58 | 外交
 2020年夏季五輪の東京招致を目指す活動が具体的に動き出した。東京、マドリード、イスタンブール3都市の招致委員会がそれぞれ立候補ファイルを提出、9月のIOC総会まで激しい招致合戦となる。

 ≪2020年夏季五輪の招致レースはいよいよ本格化する。7日、スイス・ローザンヌの国際オリンピック委員会(IOC)に詳細な開催計画(立候補ファイル)を提出した東京五輪招致委員会は、8日には東京で、10日にはロンドンで記者会見を開き、国内外にアピールする。

 この日のメンバーは、招致委の水野正人専務理事や、招致アンバサダー(大使)となったサッカー女子日本代表の澤穂希、パラリンピック競泳選手の鈴木孝幸ら。澤は「決定まで、あと8カ月。スポーツの素晴らしさを伝えていきたい」と話し、鈴木も「生で見ることによって、より魅力や感動を伝えられる。IOCには好印象を与えられると思う」と語った≫=朝日デジタル=。

 前回の招致合戦では惨敗した東京だが、今回は目がありそうだ。東京がいいというのではなく、相手が弱いからだ。まずマドリード。欧州の財政危機は一息ついた感はあるが、まだまだ先は不透明極まる。スペインはギリシャに次ぐ財政脆弱国といわれ、政治的にも不安定だ。9月段階でこうした不安を一掃することなどできるはずもなく、マドリードの苦戦は免れまい。

 イスタンブールには中東情勢が絡む。「イスラム圏で初の五輪開催」はインパクトがあるが、シリア情勢とイランの動向が気にかかる。シリアやイランが大混乱に陥れば、トルコ国内のクルド勢力もうごめきだす可能性が高い。あと半年余りでシリアやイランの情勢が劇的に改善されるとは思えず、イスタンブールも敬遠されるのではないだろうか。

 消去法でいくと東京しかない。

 しかし、日本で2回目となる夏季五輪がまた東京というのは面白くない。2016年を東京と争った福岡や過去に落選経験のある大阪、名古屋がその後手を挙げられない状況こそ大きな問題だ。

 東京は五輪など開かなくても十分に都市機能は充実している。世界に冠たる巨大都市がいまさら五輪でもあるまい。ニューヨークなど立候補したこともないのではないか。大人の都市とはそういうものだ。「(東日本大震災からの)日本の復興ぶりを見てもらう」などといっているが、笑止である。本気でそう言うのなら、競技の一部を福島やいわきで行うべきだろう。東電福島原発隣接地のJビレッジを使う手もある。

 サンデー毎日の予想では「東京はまた落選」らしいが、おそらくそうはなるまい。東京栄えて日本ますますさびれる。この国のゆがみを拡大する東京招致を、世界最高部数を誇る新聞社が推進する。力強い限りだ。
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やはり三百代言か

2012-12-26 05:56:54 | 外交
 警官の不祥事が相次いでいると思ったら、今度は弁護士だ。いったいこの国の司法関係者の遵法意識はどうなっているのかと疑わざるを得ない。今回の弁護士のケースは、要するに詐欺である。こうした行為を働いた人物の名前も公表せず、「国選の指名停止」程度で済ませることにも合点がいかない。

 ≪逮捕された容疑者や起訴された被告に国費で弁護士を付ける国選弁護制度をめぐり、2006~09年に全国で少なくとも157人の弁護士が接見や公判の回数を水増しし、247件で報酬計約450万円を過大に請求していたことが、日本司法支援センター(法テラス)の調査でわかった。

 法テラスは、この157人に水増し分の返還を請求し、弁護士が破産手続き中などのケースを除き、計436万円を回収した。不正が特に多かった19人は3カ月~1年間、国選弁護人としての指名を停止した。

 08年に岡山弁護士会の弁護士による過大請求が発覚したことを受けて調査していた。06年10月~09年8月に計約3700人の弁護士が担当した約1万6千件のうち、約9千件を抽出して警察署の接見簿や裁判所の記録と照合。過大請求の主な原因は「不正確な記憶に基づいて申告した」「別事件の接見と混同した」などだったが、中には「強盗強姦(ごうかん)事件で1回しか接見していないのがまずいと思い、3回にした」という故意のケースもあった≫=朝日degidal=。

 調査は抽出であり、実際どれぐらいの不正が行われていたかは不明だが、157人・247件より多いのは間違いあるまい。接見の際の手続きは09年から厳格化され、警察と裁判所の「出席証明」を突き合わせて費用を支給する方式に改められた。それまでがいかにずさんだったかと証拠だろう。

 本仮屋ユイカが主演した弁護士ドラマ「そこをなんとか」で、主人公の改世楽子が「弁護士だって生活苦しいんです!」と叫んでいたのを思い出す。どんなに貧しくても悪事は働かない―これは弁護士としてというより、人間としての規範だ。それすら守れない人物は、バッジを外してもらうしかない。
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