脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

胸を借りるはプリントダイナマイト -決戦前夜-

2010年09月02日 | 脚で語る奈良クラブ
 明日、今季の天皇杯が開幕する。全国からこの本大会に臨むのはJ1、J2勢をはじめ88チーム。関西からは関西学院大(兵庫)、大阪体育大(大阪)の大学勢、MIOびわこ草津(滋賀)、佐川印刷SC(京都)のJFL勢、奈良クラブ(奈良)、アルテリーヴォ和歌山(和歌山)の地域リーグ以下のカテゴリー勢という分布がはっきりした6チームが1回戦に臨む。

 2年連続2度目の出場となる奈良クラブは、佐川印刷SCがその相手。おそらく今季対峙する相手の中では最強の相手だ。最も身近にJFLの試合が観られるチームであることもあり、このブログでも何度も佐川印刷の試合の様子をお届けしてきただけに、どれほどの差があるかは感覚的に掴める。ただ、奈良クラブがこの試合で得る経験は何物にも代え難いものになるだろう。

 

 

 現在、中断中のJFLで11位に位置する佐川印刷SC。序盤の7試合連続無敗の勢いが影を潜め、後期日程に折り返す前後の10試合ではわずか2勝しか挙げられていない。とはいえ18チーム中5位(後期第6節終了現在)の得点力は驚異。23試合で37得点というのはかなりの攻撃力。特に前期第5節にはMIOびわこ草津を相手に8-2という大勝を収めるなど、爆発すれば天井知らず。中盤の大槻、中井を軸に前線の塩沢、平井、大坪あたりの選手には要注意で、自分たちのリズムを掴んだ時間帯には屈指のパスワークを見せる印象が強い。また、ここ最近のシーズンではチームの若返りも顕著で、昨季ルーキーながら定位置を確保した櫛田をはじめ、今季ルーキーの及川、中野、志摩といった大卒新加入の選手たちも能力が高く、早速出番を掴んでいる選手が多いことが印象的だ。
 どこかウィークポイントにつけ込むならば、リーグワースト5に入る失点の多さ、つまり守備の弱さだろう。37得点37失点という数字が11位という順位の原因。撃ち合いの様相を呈する試合で勝ち切れないところが多いようだ。奈良クラブはここを狙っていくしかない。

 このプリントダイナマイトの胸を借りる奈良クラブ、もちろん1回戦突破は現実的な目標。昨年と同じくJ1勢へのチャレンジを果たしたい。相手の出方をうかがうのは得意中の得意。まずはじっくり序盤を耐えしのぐのが重要だ。セットプレー、カウンター、好機を得るためにはどんなプレーも重要になってくる。ミスの少ない牧と突破力に長けた大塚がキーマンになるだろう。あとは檜山や嶋がスペースを狙ってスピードで持っていって狙って欲しい。痛いのは県代表決定戦で退場処分を受けた畑中の出場停止。どんな時でもチャンスでは顔を出し、クロッサーとしてもフィニッシャーとしても能力の高い彼の不在は正直に苦しいところだ。金城や石田といった代役に期待したい。
 守備面では追い込まれる時間帯が多いだろうが、まずはパスの出所をしっかり押さえてほしい。中盤の大槻や中井に仕事をさせないことが重要。李と矢部のボランチコンビはハードワークを強いられることになりそう。最終ラインはおそらく守備の要・橋垣戸光がこの試合に照準を合わせて戦列復帰予定。空中戦に無類の強さを発揮できる彼の帰還は、三本菅を1列前で起用することも可能にするので、プレスの厚みにも期待できる。あとは最後尾でゴールを守る松石の神がかったセーブがチームに勢いを与えるはずだ。

 佐川印刷の胸を借りるつもりで奈良クラブには暴れて欲しい。社会人チームには逆風の要素が多い今大会だが、その逆風をものともしない戦いを見せて欲しい。この大会ではその1勝が大きなアピールになる。クラブを少しでも多くの人に知ってもらうこれ以上ない機会だ。残念ながら今年の1回戦は昨年のように県内開催ではないが、西京極で一戦必勝の大きな舞台が幕を開ける。