脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

JFLとの差 -VS佐川印刷SC-

2010年09月04日 | 脚で語る奈良クラブ
 第90回天皇杯全日本サッカー選手権大会が3日開幕。全国の各都道府県を勝ち抜いた代表チームが1回戦に臨んだ。奈良県代表の奈良クラブ(関西1部)は京都府代表である佐川印刷SC(JFL)と対戦。1-3と敗戦を喫して、2度目のチャレンジとなった今年の天皇杯は1回戦で姿を消すことになった。

 

 会場の西京極、この日はナイターでの試合となった。日頃から真昼の試合が多い奈良クラブ、佐川印刷両チームにとってまだ楽なコンディションとなったこの試合。奈良クラブは負傷で戦列を離れていたDF橋垣戸光がCBに復帰。ここまでその穴を埋めていた三本菅を前方のボランチに上げて、矢部をトップ下に配置。出場停止の畑中に代えて日頃はトップを務める檜山を右サイドハーフに据えてFWは牧の1トップという布陣で臨んだ。
 対する佐川印刷(以下=印刷)はスタメン11人中、濱屋、伊池、志摩、内村、中筋の5人がルーキーの選手というサブメンバー主体の陣容。大槻、平井、櫛田、中野といった主力選手は温存の様子で、明らかにこの試合に勝って2日後の京都戦に万全の態勢で挑もうという印象であった。

 試合は序盤の運動量で抜きん出た佐川印刷が4分に足立の先制点で試合をリードする。相手の出方を窺いたい時間帯でのこの失点は正直痛かった。やはり崩しにかかった際の印刷のスピードは驚異で、個々の相手を捕まえられず、スペースを悠々と明け渡してしまう場面が多く見られた。ボールを奪った際にカウンターを仕掛けたいところだが、どうも全体的な押し上げが機能しない。そのために相手ゴールに迫った位置でのシュートがなかなか打てなかった。

 

 21分に印刷は先制点を挙げた足立のアシストから中筋が追加点を挙げる。奈良クラブとしてもビハインドを1点に留めたいところだったが、これ以降はGK松石やDFラインの奮闘もあって0-2のまま前半を終える。牧のポストプレーから檜山を中心に再三切り込んだが、シュート数はほぼ互角ながらそのスピードと精度の差は明確だった。

 
 決定力で格上の風格を見せた佐川印刷。
 JFLの壁を見せつけられる。
 
 後半は相手の運動量がやや落ちたこともあって、奈良クラブはそれなりに組み立てることができた。75分には印刷MF高向が2枚目の警告で退場処分。相手が1人少なくなったタイミングで俊足FWの嶋を投入して一気に盛り返したいところだったが、あと一歩でゴールに及ばない。石原、李のシュートで得点かという場面が2度見られたが、オフサイドやファウルでそれが認められない惜しい場面があった。終了間際にはダメ押しの3点目を決められるが、その直後に檜山が意地の1点を返して試合終了。奈良クラブの2度目の天皇杯挑戦は終わった。

 

 佐川印刷の出場選手13名の平均年齢は24.6歳、対して奈良クラブの出場選手14名の平均年齢が27.9歳。3.3歳の平均年齢差があったが、経験を積んでいる選手が多いという点ではまだ運動量の差を補えるだけのものはあったと思える。試合結果だけ見ればシュート数も14対14と互角。しかし、決定機におけるプレーの精度にかなりの差があった。相手陣内へ攻め込むカウンター時の決定的なパスミス、シュートチャンス時のシュート精度など、「あそこで決めていれば・・・」という場面がこういった格上チーム相手の試合では浮き彫りになってくる。ほぼ毎日、充実した環境で練習を行っている印刷と、ゴールすらない土のグラウンドが週2回ないし3回の練習拠点である奈良クラブとの現状では埋められない溝である。

 関西リーグでの結果だけが全てではない。今季は全社出場も叶わなかった。国体予選でも勝てなかった。いや、その関西リーグでも学生クラブ以外から勝利を奪ったのは前期第6節の加古川戦だけ。上位陣との直接対決はことごとく勝ち切れずドローに終わっている。順調にクラブとしてのステップは踏んでいるが、ここからの飛躍が今後の課題だ。1回戦を突破し、新潟との対戦を果たした昨年は「経験」という意味では大きな機会だった。ただ、そのままではJ1クラブと対戦するだけでは「記念」で満足する大会で終わってしまう。本当に奈良県のサッカー、そして奈良クラブが上を目指して行くには、JFLだけでなく、そのJ1クラブにも勝てるチームにならなくてはいけない。そのためにも来年以降も天皇杯に出場し続け、格上チームに勝つためのチャレンジをしていくべきだ。「井の中の蛙」にならず、全国の壁を常に感じ続けることの重要性を今年の天皇杯は教えてくれた。


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2 コメント

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Unknown (イシマル)
2010-09-04 13:33:23
数年後にはJFLの舞台で奈良クラブが佐川印刷にリベンジする時が来るはずです。その為にも選手が万全の状態で試合に臨めるような環境整備が急がれますね。
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Unknown (yoshi:D5)
2010-09-05 02:13:45
>イシマルさん

コメントありがとうございます。

環境整備とその環境を余すところなく選手たちが使用できるようになれば、もっとチームは強くなるはずです。
今後、支援者を更に獲得して、そういった動きを活発にしていかなければいけませんね。
天皇杯はそれを再実感する良い機会になったと思います。
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