脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

プレミアリーグ酔夢譚 Week12

2008年11月10日 | 脚で語る欧州・海外
 先週末に行われたプレミアリーグ第12節、エミレーツスタジアムで行われたアーセナルとマンチェスター・Uの一戦はスペクタクルに溢れたゲームとなった。

 2-1でアーセナル勝利の立役者になったのは、今季から加わったMFナスリ。21分にセスクのエリア右付近からのFKを、ベルバトフがクリアしたところに瞬時にシュートで対応。相手DFにかすってコースの変わった弾道はゴールに吸い込まれた。
 47分には、中央を突破したセスクのラストパスから目の覚めるようなシュートを再び叩き込み、試合の行方を決定づけた。このシーンでは、エリアに斜めに走り込んだウォルコットが相手DFを効果的に釣ったことで、最終的にボールを受けたナスリの眼前にスペースが生まれた。アーセナルの崩しの真骨頂ともいえる鮮やかな得点劇に、ハードワークを身上とするマンチェスター・Uの守備は見事に引き裂かれた。

 この大一番には、ファンペルシ、アデバイヨールという前線の2枚看板を欠いたアーセナルだったが、美しく攻撃的なサッカーが熟成の一途を辿る今季の彼らには、大きな問題ではなかった。昨季と比較して、フィジカル面で成長著しいウォルコット、その逆サイドで大きな得点源となっているニューカマーのナスリ、攻守共に無欠の働きを見せるセスクと、この3人による縦への速いパス回しが、魅力的なアタックを構築している。攻撃時のミスも少なく、この試合では、前線のベントナーの頼りなさが少々目立ったが、ベストメンバーが揃えば、前述のFW2人がともに5得点しているのに加え、ナスリも今季4得点目と誰もが得点を奪えることは実証済みだ。今季ここまで25得点という総得点はチェルシーに次ぐ数字。これからさらに、彼らのスペクタクル満載のサッカーは我々を楽しませてくれるだろう。

 そんなエミレーツのゲームとは対極的に、つまらない試合になったのが、翌日、雨のイーウッド・パークで行われたブラックバーンとチェルシーの一戦だった。

 2-0とアネルカの2得点で、難なく勝利を得たチェルシーだっだが、ポール・インスが新監督を迎える新生ローバーズは、低予算のチーム編成をものともせず、昨季7位と健闘したチームとは打って変わって、骨のないチームと化していた。
 最終ラインからのフィードは、まともに前線に繋がらず、ほとんど攻撃らしい形を作れない。中盤でベントリーを失ったダメージが見事に現れているが、この日欠場していたエースのサンタクルス、セントラルMFのダンがいたところでどうにかなったとも思えないその低調なパフォーマンスは残念だった。

 中継の中で、解説の粕谷氏が指摘していたように、プレミア初の黒人監督となったインスの求心力の無さは納得できるものがある。特例により、プレミアで指揮を執るライセンスを持ち得ていないことも理由の一つだと考えられるが、やはり前任のヒューズの存在は、かねてから在籍する選手たちにとっては大きかったのだろう。昨季は1度も経験してなかった15位という位置にチームは低迷。せめてもの救いは、その選手たちに慕われていたヒューズ率いるマンチェスター・Cが13位とほとんど同じ位置で喘いでいることか。

 とにかく、彼らののらりくらりとしたサッカーに足並みを揃えてしまい、後半はほとんど力を発揮できなかったチェルシーも評価はし難い。片やスペクタクルに富んだライバル同士の一戦、片や雨中の凡戦と、好対照なマッチが印象深かったプレミア第12節。リバプールがWBA戦の前半終了間際に見せた見事なカウンター攻撃が素晴らしかったことも付け加えておく。