脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

監督業はツラい ~オシムとフェルフォーセン~

2007年11月17日 | 脚で語る日本代表


 「オシム監督倒れる」
 16日夕方、衝撃のニュースが日本のサッカーファンを驚愕させた。16日未明に日本代表監督でもあるイビチャ・オシム氏が自宅で脳梗塞により意識を失ったというのだ。現役代表監督の不測の事態は協会によって半日が過ぎた後に緊急記者会見が開かれ、その事実が発表されることとなった。就任当初から66歳という高齢が現役代表監督としてはどうかという懸念されていた声もあったが、それは最悪の形を迎えることとなる。もう来年からW杯予選が始まるというのに。まずは一命をとりとめて、一刻も早い回復を望むばかりだ。

 千葉の監督として来日以降、その歯に衣着せぬ独特の発言と「走るサッカー」の哲学で一躍日本でもその名を轟かせたオシムは代表就任以降、代表強化のためにその労を惜しまなかった。クラブとの過密日程をモノともさせず、合宿を繰り返し、自らの哲学をチームに注入させていった。その独特の言い回しが様々な憶測をもたらすこともしばしばだが、残念なのはこれまでの代表監督とは違うその圧倒的な経験とそれに裏打ちされた哲学を持つ名将を日本は失うという危機に直面している。
 ただただ残念だ。監督続投が絶望視される声が聞かれる中、アジアカップを終えて、ようやく国内でオシム監督がどういった人物か、どういったビジョンで代表を導いていくのかを我々はようやく理解し始めたというのに。国内を慌ただしく視察で回り、自宅では深夜まで欧州サッカーをチェックする多忙ぶりが思わぬ形で彼自身の体に跳ね返ってきたのだろう。

 片や、今季名古屋の監督を務めたセフ・フェルフォーセン氏がクラブに契約の打ち切りを求めてきた。当初名古屋を今季限りで辞任し、監督業を引退する決意を固めてきた氏にオランダの名門PSVから監督就任のオファーが舞い込んできたのである。
 PSVはつい先日、ロナルド・クーマン監督がキケ・フローレンス氏を解任したバレンシアの後釜に抜擢され、PSVもそれを認める形で彼はシーズン半ばでクラブを離れることとなった。後継者探しが急務となったPSVが白羽の矢を向けたのがフェルフォーセン氏だったのである。
 PSVと名古屋の実情は双方それぞれである。シーズンが終盤で上位争いとも無縁の名古屋にとっては既に来季フェルフォーセンが去るのは決定事項であったが、まさか契約打ち切りとまでは想定外。まだ天皇杯が残っているだけにここでフェルフォーセンが去るのは本望ではないはず。大会期間がわずかである天皇杯だけは現行の体制で乗り切ってしまいたいはずだ。しかしPSVはクーマン退団後、公式戦3試合で2分け1敗と勝ち星に見放された。コーチから昇格したボウタース暫定監督が指揮を執るが、きっちり後任監督がすぐにでも就任できた方がそれはありがたいはず。
 
 当のフェルフォーセン本人はまさかの欧州ビッグクラブからのオファーに当初の監督業引退という発言は撤回、すっかり過去のものとなってしまった。ここ最近欧州ではファンデ・ラモス氏のセビージャ⇒トッテナムの電撃移籍があっただけに本人の高い志とそれを欲しがるクラブがあれば幾らでもトライできる世界。その世界ではシーズン途中に放り出されたチームはお構いなしであり、監督の翻意次第で「契約」は何とでもなってしまうものである。
 名古屋は打ち切りを認めてすぐにフェルフォーセンを欧州に送り出すのか、それとも今季契約期間を全うさせるのか、つくづく監督という仕事ほど水商売的なものはないなとも思わせるエピソードである。

 病に倒れたオシム、ビッグオファーにいてもたってもいられなくなったフェルフォーセン、どちらも監督業が非常に人間の本質的な部分を時にクローズアップさせてくれるものだなと実感する。

 とにかく今は一刻も早くオシム氏が回復して再び元気な姿を見せてくれるのを望むばかりである。


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