脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

脳天を揺さぶるみかん旋風

2007年11月29日 | 脚で語る天皇杯


 この冬、浦和市民はこたつでみかんを食べられないだろう。天皇杯4回戦未消化のゲームにてJ2愛媛FCが見事にアジア王者を食った。まさか完封勝ちとは・・・
 
 正直、実に恥ずかしい。テレビ埼玉のみの放送となった今夜、21時前に携帯を使って途中経過をチェックしたところ、スコアが動いているのを知った。2-0というスコアで得点者は「田中」である。浦和が苦しみながらも田中達也の2ゴールでリードしているものだと思った。ところが、フタを開けてみれば愛媛が勝利したという。スコアラーは達也ではなく、愛媛の田中俊也だったのだ。今年一番のジャイアントキリングが駒場で起こったのである。
 アジア王者を叩きのめした愛媛の望月監督は勝利をこう振り返る。
「サッカーならかなわないが、ゲームならかなうこともある。ゲームにはギャンブル性がある。今年は強いチームと戦って、そういうギャンブル性を発揮することがあった。」
 殊勲の指揮官はなんともシブいコメントで締めくくったものだ。今年愛媛を何度か生観戦にてウォッチした筆者もどこか嬉しい感情がある。長丁場のJ2では10位にあえぐが、確実に愛媛は「戦える集団」になっている。

 既に日程の大半を消化して、昇格を狙うチーム以外ほとんど注目の集まらないJ2において、前節の東京V戦も惜敗し、一矢報いることはできなかった。しかし、一発勝負の天皇杯ならまだこれからいくらでも彼らが主役に登りつめるチャンスは残っている。これが彼らの第一歩になるだろうか。
 
 愛媛は前線のジョジマールの加入は大きい。そこにエース田中の帰還。中盤には宮原が加わり、ポゼッション能力が高まった。サイドには江後と浦和から愛媛にやってきた大山。同じく浦和からレンタル中のDF近藤もこの日はスタメンで出ていた。愛媛と対照的に浦和は前線にワシントンら主力を欠いたとはいえ、大半はそこまでメンバーも落ちていない。慢心か一発勝負の妙か、現実に浦和は格下の愛媛に食われたわけだ。毎試合のスタメンのやりくりにも頭を抱えるであろうその薄い選手層も指揮官の巧みな采配さえあれば、サッカーは戦える。ゲームとしての勝負を制することはできる。愛媛はそれを高らかに実証してみせた。

 浦和にとってはAFC最優秀チームに選ばれた矢先の惨事。公式戦だけみればリーグも含めてここ最近絶不調にあえいでいる。負けないサッカーをするチームも負ける時はある。しかしここまで意外な負け方をするとは。12/1にもひょっとしたらひょっとするかもしれない。この結果は鹿島サポにとってさらなる可能性を予感させるには充分な材料となった。

 サッカーはつくづく分からないものだ。固定観念を振り払ってゲームを観なければいくらでも脳天を揺さぶってくれる。なんとも中毒性の高いスポーツだということを改めて実感する夜であった。