脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

京都J1昇格へラスト4 ~東城陽レポート~

2007年11月01日 | 脚で語るJリーグ


 「シーズン前から言っていた「20%アップ」が出来なかった。過去のJ2優勝チームのデータから、昇格1年目はチームを変えず、2年目から変える方が良いと判断した。
 J2に比べ、J1は上位以外サッカーが「汚い」チームが多い。それに対応できなかった。
 外国人選手の補強が失敗。怪我人が多かったのは、コンディション管理に問題があった。
 チーム強化は、2~5年後を見据え、地に足を着けたものでなければならない。レンタルは得るものが少なく駄目。育成に力を入れる。
 新スタジアムを実現しいい環境を作り、それを(チーム強化に)還元して行きたい。」 
 (京都サンガF.C.サポーター連合会要約より抜粋)

 これは今季開幕前の2月に京都のクラブ説明会でJ2に落ちた原因をクラブ側が釈明した内容である。今季のJ2も残り4試合で、3位仙台との勝ち点差1で4位につける京都は後がない。今後11月に札幌、仙台と上位陣との直接対決を迎える京都はまさに正念場を迎えている。冒頭の問題解決を果たし、京都のJ1昇格はあり得るのか。東城陽に足を運んでみた。
 
 秋晴れに恵まれた10月最後のこの日、東城陽に1年ぶりに訪れた。昨年筆者は京都の主催する「大人のサッカー教室」に参加していたこともあり、よくここで練習風景を観ていたこともあった。東城陽の総合的な設備はそれほど悪くない。コンディションに恵まれた人工芝のピッチとトップの練習用に使われる天然芝のコート以外にフットサルコートもあり、「サンガタウン」として地元でも親しまれている。
 前節アウェイ鳥栖戦で完敗を喫したチームは2日間のオフを挟んでの再始動。この日は加藤監督就任後、特に力を入れているというフィジカル中心のメニューで練習は進んでいった。どうものんびりしているなと思えばそれもそのはず、今週末に大抵のJチームなら予定されている天皇杯は明治大相手に敗退した京都にとってスケジュールに無い。次戦のJ249節山形戦は10日に行われることもあり、日程的には十分余裕を持って調整ができるという訳だ。

 東城陽クラウンドは選手との距離が近く、フェンス1枚を隔てたすぐ向こうでトレーニングがウォッチでき、選手の息遣いまでもがよく伝わる。ベテラン秋田と倉貫を先頭にランニングから始まり、2人1組での筋力トレーニングが始まる。この日は吉満フィジカルコーチが指導の中心で加藤久監督の姿は序盤は見えなかった。何か理由があって遅刻したのか、途中から現れた監督はほとんど練習に絡むことはなかった。
 2日間のオフ明けか筋トレに表情を歪める選手たち。ムードメーカーは在籍6年目を迎える中払だ。元気に声を出し、チームの雰囲気を明るくする。ピッチ全体を使ったシャトルランなどの走力系の練習に移行し、選手たちの口数も徐々に減っていく。そしてリラックスした空気の中でミニゲームへと入っていくのだが、これが選手たちとの距離が近い分非常に面白かった。ほんの10mほどの距離で行われているミニゲームではJ1昇格のプレッシャーからしばし解放された選手たちが、ただのサッカーバカに変わる。2タッチ限定、利き足と逆足の2タッチ限定など条件が上野コーチから指示される中、和気あいあいと遊び感覚で選手たちは楽しむ。

 G大阪の練習風景と比べるとやはり興味深かったのは、選手との距離が近いだけに彼らの声がもの凄く伝わってくる点だ。それを抜きにしても明らかに元気はある。それは非常に伝わるし、ピッチサイドで観覧するサポーターからもミニゲームに興じる選手たちのやりとりに笑いが漏れる。この風景は選手とサポーターの親密度を考えれば非常に理想的で、練習見学の常連が多いのも頷ける。

 さて、本題である冒頭のJ2落ちの要因をクリアできているかという点だが、外国人選手に関しては在籍3年目を迎えるパウリーニョを中心にアンドレも結果は出せているだろう。しかし05年度に活躍したリカルドに比べるとCBチアゴはケガに悩まされ、正直戦力的に充分かどうかは言い難くコンディション管理には苦しんでいる様子だ。同じくケガを抱えるアンドレもここまで29試合出場14得点は本当によくやっていると言える。
 そして20%アップの戦力充実度だが、やはり今季の大半を消化した美濃部体制下では、柱谷監督時代に重用されてきた星、加藤、大久保、美尾あたりの選手に出番が少ないのは気になるところだ。中盤の徳重、倉貫の加入で分厚さを増した選手層がリアルに響いている。控え組中心で臨んだ天皇杯明治大戦があの内容だったのだから、トップ組とサテライト組はイマイチ融合できていない。
 J1上位以外が汚いチームだと言うことに関しては非常に理解に苦しむところではあるが、その状況下で生き残るのがJ1だということ。それは経験豊富な選手は理解しているだろうが、クラブの首脳陣が釈明することではないかなとも思う。単なる言い訳だ。育成に本当に力を入れるかどうかもある程度、今季が終わってからの人員整理を見ないと何とも言い難いところである。

 とにかくまずは「結果」。J1昇格が大前提。この日も終始練習を観ていた梅本社長の胸中はいかに。鳥栖戦の敗戦はこれからを考えれば予想以上に重くのしかかるが、雰囲気良く練習をこなす選手たちに全ては託される。
 ラスト4。今日のような青空は京都の選手たちに微笑んでくれるか。それは神のみぞ知るところなのかもしれない。