脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

アマチュアクラブ最高峰の戦い

2008年10月30日 | 脚で語るその他国内
 AC長野パルセイロの優勝によって幕を閉じた第44回全国社会人サッカー選手権大会の記憶も新しいところだが、11月1日(土)より5日間に渡って、秋田県にかほ市、由利本荘市にて第15回全国クラブチームサッカー選手権大会が開催される。一般的にはあまり知られていないかもしれない。参加資格は詳細に決められているが、簡単に言えば“都道府県リーグ以下に属するクラブチーム”の日本一決定戦だ。

 今季の大会には、9地域より各2チーム、そして前年度の国体開催都道府県代表として1チーム、前年度の国体開催市町村代表が3チーム、前年度の各地域全社(全国社会人サッカー連盟)登録数の比率から2チームと、計24チームが大会に臨む予定だ。一発勝負のトーナメント戦を5日間で消化していくわけだが、10月に行われた全社と違って、ほとんどが無名に近いクラブチームばかり。そのマイナーぶりから知る人ぞ知る大会であろう。

 しかし、立派に将来のJリーグ入りを目指すクラブチームも参戦している。昨季のこの大会で優勝を果たしたFCガンジュ岩手(岩手県3部リーグ)、群雄割拠の神奈川県から出場するS.C.相模原(神奈川県3部リーグ)などがその代表だ。

 昨季、岩手県4部リーグで優勝し、今季3部に昇格したFCガンジュ岩手。昨季は元Jリーガーの武藤監督の下、県4部リーグ10試合で130得点0失点と圧倒的な強さを誇示し、この大会でも優勝を果たした。MF斉藤乙(元水戸)、FW財津俊一郎(元清水、湘南)という2人のJリーグ経験者を軸にして、今季も岩手県3部リーグでは、69得点0失点(8節終了時点:10/12現在)と首位を走っている。グルージャ盛岡が何かと注目を浴びる中、岩手県内で順調にステップを刻んでいる。もちろん今大会も優勝候補の再筆頭だ。

 かつて名古屋、京都、仙台などに在籍した元日本代表MF望月重良が牽引するS.C.相模原は、まだ今年の2月に産声を上げたばかりの新興クラブチーム。鈴木健太(元甲府)、坂井洋平(元横浜FC)など、ここにも元Jリーガー2名が在籍しており、セルティックに在籍する水野晃樹の実兄、和樹選手も在籍している。既に横浜に2チーム、平塚に1チーム、川崎に1チームとJクラブが数多くホームタウンを置く神奈川県。昨季は神奈川県3部リーグは120チームが参加し、15のリーグで構成されているという厳しさだ。そんな中でS.C.相模原も順調に1年目を消化している。県3部リーグでは、現在もちろん無敗で6試合を終え、38得点1失点という戦いぶりだ。今季は少ないリーグ戦を補うために、県内の高校や大学と積極的にテストマッチを続けている。少しでも実戦の経験を積むために、この大会で初のタイトルを獲得したいところだ。

 かつては、石川県代表として天皇杯の常連だったテイヘンズFCや、数々のJリーガーを輩出し、将来のJリーグ参入も視野に入れる愛知FCなど、各地から注目チームが出場する中、関西からは、一昨年のこの大会の王者FC加古川(兵庫)と久御山FC(京都)、そして奈良県1部リーグからもAtleticoが参戦する。
 今季も奈良県リーグでは首位争いに加わったAtletico。天皇杯奈良県予選では、緒戦から奈良クラブを下した。関西代表決定戦では、クーゲルFC(和歌山県1部リーグ)を5-2で粉砕。本大会での躍進が期待される。是非、奈良県サッカーのレベル向上を結果で裏打ちして頂きたいものだ。

 存在自体は限りなくマイナーな大会で、賞金も無い。正直なところ各地域では、県予選を行わなければいけないという日程的な問題、及び予算上の都合(もちろん本大会参加は各チーム実費にて)から煙たがられている。県予選から棄権するチームも少なくない。
 しかし、そこに臨む選手たちには、それぞれの情熱が渦巻いていることだろう。日本サッカーの底辺から頂上を目指すために猛進を続けるクラブチームには、“経験を積む場”として軽視できない貴重な全国大会だ。モチベーションは各々違うだろうが、ここから物語が始まるクラブがあっても、全くそれはおかしくない。