東京さまよい記

東京をあちこち彷徨う日々を、読書によるこころの彷徨いとともにつづります

九段坂下(2017)

2017年07月10日 | 坂道

前回の千代田区役所から出て、交差点を渡り、九段下の交差点に向かう。

九段会館 九段坂下 途中、九段会館前を通るが、ここは、旧軍人会館で、昭和11年(1936)の2・26事件のとき戒厳司令部が置かれた。昭和9年(1934)にできたかなり古い建物で、3・11(2011)東日本大震災で被害を受けたため、現在、使用されていない。名前は知っていたが、この建物を実際に見るのははじめてのような気がする。

まもなく九段下の交差点に至るが、ここは九段坂の坂下である。二枚目の写真は、交差点を左折したところにある地下鉄の出入口付近から坂上を撮ったものである。この坂は靖国通りにあり、坂上を左折すると田安門である。

九段坂下 九段坂下 坂下側に進み、九段下の交差点を横断するが、この坂は進行方向(東側)にまだわずかであるが下りになっている。横断して歩くと、地下鉄出入口、さらにバス停があるが、その辺りがもっとも低い(現代地図)。

一枚目の写真はバス停前の辺りを撮ったもので、その向こうは首都高速の下の俎橋であるが、この橋に向かってわずかに上りになっている。

はじめてこの坂にきたとき、靖国通りと目白通りとの交差点(九段下)から上ったため、交差点の辺りを坂下として記事にしたが、この辺りを坂下とした方がよかった。二枚目の写真は、そのバス停の辺りから坂上側を撮ったもので、この辺りから見ると、この坂がいっそう長く感じられる。

「江戸の坂 東京の坂」カバー写真 飯田町駿河台小川町絵図(文久三年(1863)) 横関英一著「江戸の坂 東京の坂」は坂愛好者のバイブル的存在であるが、一枚目は、そのちくま文庫版のカバー写真で、次の註がある。

「東京九段坂」明治26年 画像提供 国立国会図書館『写真の中の明治・大正』

現在の九段下の交差点の辺りから撮ったものであろうか。道はかなり広いが、現在はもっと広い。道の右端に屋敷の塀が見え、坂上左側の淵際に街路樹が見える。道いっぱいに広がってたくさんの人が往来をしている。いちばん手前の女性がなにかを背負っていて、下駄を履いている。その左にちょっと離れて子供がいるが、その後ろに横顔の見える若い男は裸足である。荷車を引いている(押している)人が多く見えるが、この坂の上りには難渋したであろう。傘を差している人もいる。右手の白い服の男は警官であろうか。当時の人々や坂の様子がわかる貴重な写真である。地図ではわからない。

二枚目は、尾張屋清七板の飯田町駿河台小川町絵図(文久三年(1863))の部分図である。田安門の下側(北)に九段坂が表示されている。小笠原加賀守の屋敷や水野監物の屋敷などの角の四差路が現在の九段下の交差点付近であろうか。

橋を渡って神保町方面に向かい、古本屋街をうろうろしたが、収穫なし。東京堂で柴田哲孝「下山事件 暗殺者の夏」(祥伝社文庫)を購い、神保町駅へ。

参考文献
横関英一「江戸の坂 東京の坂(全)」(ちくま学芸文庫)
山野勝「江戸の坂 東京・歴史散歩ガイド」(朝日新聞社)
岡崎清記「今昔 東京の坂」(日本交通公社)
石川悌二「江戸東京坂道辞典」(新人物往来社)
デジタル古地図シリーズ第一集【復刻】江戸切絵図(人文社)
デジタル古地図シリーズ第二集【復刻】三都 江戸・京・大坂(人文社)
「嘉永・慶応 江戸切絵図(尾張屋清七板)」(人文社)
市古夏生 鈴木健一 編「江戸切絵図集 新訂 江戸名所図会 別巻1」(ちくま学芸文庫)
「大江戸地図帳」(人文社)
「東京人 特集 東京は坂の町」④april 2007 no.238(都市出版)

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