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発見の道

2021-08-01 01:51:12 | 美術
東京都美術館で「イサム・ノグチ 発見の道」を見てきました。

イサム・ノグチの作品はこれまで何度となく目にしていたので、この展覧会は行こうかどうしようか迷っておりましたが、サカナクションの山口さんがゲストで出ていた日曜美術館の特集を見ていたら行ってみたくなり…東博とはしごして行ってきました。

この展覧会では山口さんがセレクトした音楽によるサウンドツアー(音声ガイドから流れてくる音楽を聴きながら鑑賞する)があったので、試してみました。山口さんはインスピレーションで曲を選ぶのではなく、ノグチが聴いたかもしれない音楽、ノグチに影響を与えたかもしれない音楽から選んだそうです。ノグチはけっこう音楽通でもあったらしく、選ばれた曲はジャズ、現代音楽、邦楽などさまざま…。作品が制作された時代の音楽を聴きながら作品を鑑賞するという体験はなかなかに新鮮で面白かったです。

さて、展覧会の方はというと、思いのほかお洒落な展示空間になっていて、若手女子の姿も目立ちます。会場に入ったところには150灯もの「あかり」によるインタレーションがあり、幻想的な空間に。展示は全体的にスペースの使い方がうまいという印象です。展覧会は「彫刻の宇宙」「かろみの世界」「石の庭」の3章構成になっていました。第1章「彫刻の宇宙」は40年代から80年代までの彫刻作品が「あかり」を取り囲むように展示されています。比較的シンプルでありながら力強い作品の数々。作品が宇宙へとつながっていくような、そんな力を感じます。展覧会のタイトルにもなっている「発見の道」は晩年の作品ですが、彼はこのタイトルにどんな思いを込めたのか…。第2章は「かろみの世界」。切り紙や折紙からインスピレーションを得て制作されたという金属の彫刻がメインになっています。ユーモラスな作品も多く、タイトルと見比べるとクスっと笑えるものも。色鮮やかな大型遊具「プレイスカルプチュア」も独特の存在感が。第3章は「石の庭」。ノグチの制作拠点でもあった香川県牟礼地町の野外アトリエに残された石彫作品が展示されています。もはや禅の境地のような研ぎ澄まされた感覚。牟礼のアトリエの映像も流されていましたが、ずっと見つめていたいような不思議な空気感です。二つの国の間で揺れ動いた心が最後に行きつく先はここだったのでしょうか….。そして、最後の章のサウンドツアーには武満徹の「巡り―イサム・ノグチの追憶に―」が…。

ところで、サウンドツアーには解説のリーフレットがついているのですが、これが秀逸で読みごたえがありました。ノグチの人生と音楽史を対比した年表とか、ノグチの旅した土地と世界音楽分布が載った地図なども。ノグチがフリーダ・カーロと恋人だったことは知っていましたが、李香蘭(山口淑子)と結婚していたということは初めて知りましたよ…。解説によるとノグチの音楽趣味は「17世紀のバロック音楽から日本の雅楽に至る広さ」だったのだとか。いやはや、広い…。
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