aquamarine lab

アートネタなど日々のあれこれ

宇宙遊/光

2023-10-06 00:03:03 | 美術
国立新美術館で「蔡國強 宇宙遊-<原初火球>から始まる」を見てきました(展示は既に終了しています)。

実際に行ってからずいぶん時間が経ってしまいましたが、自分の心覚えのために…。この展覧会は蔡國強の8年ぶりの大規模個展で、1991年にP3 art and environmentで開催された展覧会「原初火球」を氏の芸術におけるビッグバンの原点と捉え、その後の活動の旅路を辿るというのです。ちなみに原初火球という言葉は宙物理学と老子の宇宙起源論に基づくもので、宇宙の始まりを表すのだとか…。蔡氏の活動というと、まず火薬が頭に浮かんでしまいますが、この展覧会では活動の源となっている独自の世界観、宇宙観にも焦点を当てています。国立新美術館の展示室の壁をすべて取り払い、広大な空間を一室として使う、ダイナミックな展示です。展示は蔡氏の父親のドローイングから始まります。蔡氏は1986年に日本に移住し、約9年間を過ごしますが、この時期が出発点であり、アートのビッグバンが起きたと語っています。火薬を爆発させて作品を制作する手法を発展させたのもこの時期ですし、「外星人」のためのアートというプロジェクトも始まりました。80年代末といえば東西の対立が飽和点に達した時期ですが、視点が宇宙にまで飛ぶという、スケールの壮大さが大陸的…。また、蔡氏の宇宙の捉え方が独特で面白いのですよね…。展覧会では火薬爆発プロジェクトの映像も展示されていました。やはり「スカイラダー」が感動的…天へと登る火の梯子…何度も失敗を繰り返しながら、100歳の祖母に捧げられたプロジェクトです。また、いわきの海岸の上空に桜の花火が咲く「満天の桜が咲く日」。蔡氏はいわきの人々と長い年月をかけて友情を育んできました。蔡氏曰く「この土地で作品を育てる、ここから宇宙と対話する、ここの人々と一緒の物語をつくる」と。土地に根差しながら、人とつながり、宇宙とつながるアート。そして、見る者の心は宇宙を自由に遊ぶのです…。

この日は同時に開催されていた「テート美術館展 光」も見てきました(展示は既に終了しています)。テート美術館のコレクションから「光」をテーマにした約120点を集めた展覧会です。ターナー、ジョン・コンスタブル、ゲルハルト・リヒター、オラファー・エリアソンなどなど多数の画家の作品が展示されていました。ジョン・ブレットの「ドーセットシャ―の崖から見えるイギリス海峡」の前では動けなくなってしまいました…天から海に降り注ぐ光…。ジェームズ・タレルの「レイマー・ブルー」も不思議な色調のブルーに目が釘付けに…。現在に至るまで、画家たちがいかに光と向き合ってきたのかを目の当たりにした展覧会でした。神の光、自然の光、人工の光。絵画の歴史はいかに光を描くかの歴史でもあったのかもしれません…。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 沈黙のアート | トップ | Peter Barakan's Music Film ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

美術」カテゴリの最新記事