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WAR AND PEACE

2024-05-02 23:18:06 | 映画
ヒューマントラストシネマ渋谷で「坂本龍一 WAR AND PEACE  教授が遺した言葉たち」を見てきました(上映は既に終了しています)。

この映画はTBSドキュメンタリー映画祭2024で上映されました。映画では教授が社会発信を強めていく過程をTBSに残る秘蔵映像で追っています(以下、ネタバレします)。

教授は新宿高校時代に学生運動の経験があったようですが、90年代くらいまでは表立って社会的な活動をすることはなかったと思います。教授は2000年にTBSの企画でモザンビークの地雷除去の現場に行き、その体験から「ZERO LANDMINE」をリリース、収益を地雷除去の費用にあてることになりました。このCD、当時買いましたね…。映画では教授が現地の人に「人はなぜ、戦争をするのだと思いますか?」と問いかけるシーンも。2001年の同時多発テロなどを受けて「WAR & PEACE」を作曲。このプロジェクトでは日本各地から「戦争をどう思うか」というアンケートを募集していますが、その答えに真剣に反応している教授の姿が印象的でした。そして、教授には戦争している人々が美しい音楽を聴いて、戦争を思いとどまってくれれば…という思いがあったようです。2011年には東日本大震災で被害を受けた現地を訪問、後に東北ユースオーケストラを設立しています。

音楽家は政治に口出しすべきではないという意見もありますが、この映画からは、教授がやむにやまれずに活動した、ということが伝わってきます。今ここで声をあげなければ…そして、届く言葉を探さなければ、と。教授は元々音楽の政治利用を好まない人でした。音楽家が政治に口出ししないですむような世の中になれば…それが教授の本当の願いだったのだろうと思います。

音楽家はなぜ、社会発信を強めていったのか…以前は音楽の世界で功成り名遂げた人が、今度は社会に向けて活動を始めたと思っていましたが、この映画を見て、2000年頃から世界自体が変容を始めたということなのでは、と思いはじめました。音楽家は炭鉱のカナリアのようなもの…という言葉をどこかで読んだ記憶があるのですが、そういうことなのかもしれません。音楽を楽しむにはやはり平和が必要…そう思えば、教授の行動は腑に落ちます。教授が東北ユースオーケストラのメンバーに言い遺した「毎日毎日音楽を楽しむことを忘れないでください」という言葉が、すべてを物語っているのかも…。

全体的にシリアスな映画でしたが、ほっこりする場面もありました。教授がアフリカで研究をしている環境学者(美人!)に会いに行くシーンです。教授がアフリカの象に戦メリを聴かせると、なんと象が足を止めて聴き入っているのです。それこそ映画のようなファンタジックな場面でした。象さんも戦メリ好きなんですね…。
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