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アートネタなど日々のあれこれ

真空のゆらぎ

2023-12-29 23:59:21 | 美術
国立新美術館で「大巻伸嗣 真空のゆらぎ」を見てきました(展覧会は既に終了しています)。

不肖わたくし、大巻氏のことはよく知らなかったのですが、国立新美術館に置いてあったチラシに一目ぼれして行ってまいりました。この展覧会、驚いたことになんと無料…より多くの人に見てほしいという意向のようですが、これを無料で見せてもらっていいのか…というクオリティでした。大巻氏と国立新美術館の太っ腹に感謝です。国立新美術館のホワイトキューブの広大な空間をフルにいかしたダイナミックな展示でした。会場に入ると、巨大な光の壺が…メインビジュアルにもなっていた“Gravity and Grace”です。原発事故を受けて発表したシリーズの最新版です。壺には動植物の不思議な模様が一面に描かれ、周囲に影を投げかけます。光に吸い寄せられるように集う人々…。そして、“Liminal Air Space ̶ Time 真空のゆらぎ”が圧巻でした。闇の中で揺らめく薄い布が、夜の海でうねる波を想起させます。夜の海をじっと見ていると、自身が海に溶け込んでいくような不思議な感覚を覚えることがありますが、この作品を見ているとその感覚がよみがえりました。“Linear Fluctuation”はコロナ禍の自粛期間中に窓からの眺めを描いた水彩画のシリーズです。鬱々とした外界の状況下で描かれた作品のはずですが、不思議なほどの瑞々しさ。“Rustle of Existence”は森の映像に哲学的な言葉が重なります。台湾の原住民の言語が消えつつあることを知り、人間の存在を言語から考えるという発想を得たのが契機となった作品だそうです…この映像には教授の音楽が合いそうだな…、とふと思ってしまいました。シンプルに、本当にシンプルに光と闇の対比から、生きること、存在することを感じさせる展覧会でした。

この日は「イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル」も見てきました(展覧会は既に終了しています)。ファッション系の展覧会というとディオール展が思い出されますが、後継のイヴ・サンローランの展覧会もまた華麗なものでした。ディオールはエレガントでファンタスティック、イヴ・サンローランはタフでクールという感じもします。展覧会は12章で構成されていて、イヴ・サンローランの多面性を余すところなく披露していました。「想像上の旅」と「服飾の歴史」の章からは、彼がファッションを通じて空間と時間を超えた旅をしていたことが分かります。アーティストへのオマージュの作品も面白かったです。モンドリアンの作品を基にしたワンピースがメインビジュアルになっていましたが、ゴッホやピカソ、マティスやブラックへのオマージュの作品も。会場では彼の言葉も紹介されていました。名言の数々ですが、やはりこの言葉が最高でした。「ファッションは廃れる。だが、スタイルは永遠だ」
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