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ママ・アフリカ

2022-09-17 17:01:06 | 映画
角川シネマ有楽町で「ミカ・カウリスマキ/ママ・アフリカ ミリアム・マケバ」を見てきました(上映は既に終了しています)。

「ママ・アフリカ」と呼ばれた南アフリカの歌手、ミリアム・マケバのドキュメンタリーです。今回、「Peter Barakan's Music Film Festival 2022」で上映されていました。彼女のことは映画「ソウル・パワー」で知ったのですが、ミカ・カウリスマキがドキュメンタリーを制作していたとは…ということで、行ってまいりました(以下、ネタバレします)。

この映画はミリアム・マケバの波乱万丈の人生を丹念に追っていきます…ミリアム・マケバは南アフリカで祈祷師をしていた母親の元に生まれましたが、生後まもなく密造酒の販売で逮捕された母とともに数か月を刑務所で過ごすことになります。この母親も歌を歌っていたらしく…かの地では歌と祈りがセットになっているようです…ミリアムの歌唱力は母譲りなのかもしれません。それにしても天性の歌声ですよね…彼女の歌声を聴いていると目の前にぱーっとアフリカの草原が開けてくるようです。ミリアムはジャズ・グループのメインボーカルを経て、女性だけのグループで活動した後、ソロ活動で成功を収め、ドキュメンタリー映画「カムバック、アフリカ」に密かに出演して国際的な評価を得ます。そして、「パタ・パタ」が大ヒット…もっとも彼女自身は「歌詞に意味がない」と言って、あまり気に入ってはいませんでした…歌詞の意味を重視するタイプだったのかもしれません。その後、反アパルトヘイトの活動をしていたことで国外追放されてしまい、長らく祖国の地を踏むことが叶いませんでした。南アフリカの人々は隠れて彼女のレコードを聴いていたのだそうです。ミリアムはアメリカで成功を収めますが、活動家のストーク・カーマイケルと結婚したことで、仕事を干されてしまいます。この時、当時のギニアの大統領が救いの手を差し伸べたため、夫婦でギニアに移住し、演奏活動を続けました。

ミリアム・マケバは「政治のことは歌わないが、事実は歌う」というスタンスを貫いていました。一方で、国連でスピーチをして南アフリカの窮状を訴え、パン=アフリカ的な理想郷を実現するべく、アフリカ各国の大統領と懇意にし、彼らとのネットワークも築いていました。31年に及ぶ国外追放の後に、ネルソン・マンデラの招きにより、母国への帰還が叶いますが、いつしか時代は変わり、アフリカ各国が独立するスタンスへと変わっていき、彼女の夢は実現しませんでした…。

素晴らしい歌声と人柄で多くの人に慕われた彼女のことを、娘のギボンは単なる母ではない、アフリカの母だと言っていましたね…。いつでも客に料理をふるまえるよう冷蔵をいっぱいにしていたというミリアム。若手のミュージシャンの育成にも熱心だった彼女は、彼らとステージに立った後、突然倒れ、その生涯を終えます。享年76歳。ママ・アフリカは去り際もまた、みごとでした…。
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