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驚異のコレクション

2020-08-08 14:48:14 | 映画
Bunkamuraル・シネマで「プラド美術館 驚異のコレクション」を見てきました。

2019年に開館200周年を迎えたプラド美術館、その歴史を追ったドキュメンタリーです。ナレーターを務めるのはなんと、ジェレミー・アイアンズ。淡々としていながらも表現力豊かなナレーションによって、映画の格調が格段にアップしています。

映画は死を間近にしたカール5世の話から始まります。プラド美術館のコレクションは主にフェリペ2世とフェリペ4世によって築かれましたが、歴代の王室メンバーが「知識ではなく心で選んだ」コレクションの数々は、その個人的趣味を色濃く反映しています。例えば、フェリペ4世とベラスケス、カルロス4世とフランシスコ・ゴヤ。ベラスケスについてのダリのコメントも面白かったです。もし、ここが火事になったら何を持って逃げる?と問われ、「空気を持って逃げる」、ベラスケスの絵画を取り巻く空気を持って逃げる、と。ゴヤについては多くの時間が割かれていたように思います。聴覚を失ってからの作風の変化についてのエピソードが興味深かったです。そして、ティッツァーノ、ルーベンス、ムリーリョ、ヒエロニムス・ボス、エル・グレコの作品も。ボスの「快楽の園」の細部も大画面で見ることができました。映画館で絵画を見る醍醐味ですよね。エル・グレコの作品群の美しさも大画面で味わうことができます。ビッグ・ネームだけでなく、ロヒール・ファン・デル・ウェイデンのような画家にも触れています。彼の「十字架降下」の素晴らしさについて語る女性の話も印象的でした。この映画では、美術館のコレクションのみならず、当時の社会的背景、スぺインの歴史についても丁寧に解説されているので、プラド美術館の存在がより立体的、重層的に迫ってくるようでした。関係者などのコメントからも、美術館の存在の大きさが窺えます。館長も務めたピカソの「芸術は日々の生活の埃を洗い流してくれる」という言葉も趣深く・・・。

プラド美術館を通して、スペインという国の光と闇を見るような映画でもありました。生も死も濃い国・・・。映画ではスペイン人の死生観についても触れられていました。スペインでは、死を新たな生ととらえているようです。そして、スペイン人の死者は世界で一番生き生きしている、と。これはかなり新鮮な発見でした。かの国では死と生は思いのほか近いところにあるのかもしれませんね・・・。
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