あぽいち

温泉とヨガ、たまに心臓外科医

VAC(vacuum assisted closure)

2005-12-30 14:18:14 | Weblog
先日、バイパス後にリハビリ目的で地元に転院した患者さんが縦隔洞炎になって帰ってきた。
正中層の二箇所から膿が吹き出ており、熱も出ているので、早く開けたほうが良いと思い、みんなオペ中だったので、とりあえず1人で開けてみたが、結構血も出るし、患者も痛がるし、ワイヤーも3本ぐらいまではすぐ見つかるけど、残り2本はなかなか出てこないし、かといってあんまり胸骨の間を入っていくのは下に心臓あるので怖いしと、やはり何でもそうだが1人でやってみると、いかにいつも上司に守られながらやっているのかということを思い知らされる。
しかし、甘いことは言ってられない、自分ひとりでやってみないとわからないことは多々ある。ひとりでやっといてと言われたときはチャンスである。積極的にやるべき、しかし失敗は許されないけど、そういうときが一番楽しい。
結局、その患者さんはマーシリンテープがどろどろになっていたので、それが感染の原因と考えているが。
そんでもって、最近VACの報告が良くあるので、上司のBBに提案してみると興味を持てくれて、今日からVACを開始した。
だれもやったこと無いので、急遽、昨夜当直の合間に文献を引っ張ってきたが、やることは簡単、創部にポリウレタン敷いてその上にドレナージチューブ置いてガーゼ1枚乗せて上からフィルムドレッシングでパックしてしまう、後は100mmhgぐらいの圧で持続吸引するというもの。
利点は
1.基本的には週に1,2回の交換で良いため患者の苦痛や負担が少なく、医療従事者の手間も減る。
2.持続吸引で創部の浸出液や壊死組織、細菌が除去され、浮腫も改善される。
3.陰圧環境は組織の血流を増加させ肉芽の増生を促進させる。

早ければすぐに良い色の肉芽が盛り上がってくるとのこと、しかしHD,DMの患者で2週間ぐらいやっても肉芽が上がってこなかったという報告もあったが。

まあとにかく、うちでもあるものを使ってやってみることにした。
ひとつ気になっていたことだが、持続の吸引だとベッドを離れられないのではないかと、、、、。
調べてみると、欧米ではそれ専用の小さな吸引機があって、手軽に持ち運び可能なようだ。
当然うちにはそんなものは無いけど、別のあるものでその問題は解決?した。

BBは、毎日消毒しないということが解せないということと一度袋を開けたポリウレタンが不潔だということで、とりあえずはガーゼで代用。
まずは酸性水でよく洗浄して、その後、胸骨間にガーゼ入れてその上にJバックドレーンを置いて、上にもう一枚ガーゼ乗せて、その上からテガダームでパックし、ドレーンは気胸用の一方弁のついたポータブルのバックにつなぎ、部屋にいるときは壁吸引につないでおくという方法で開始した。これだと、部屋を出るときは患者さんに自分で壁吸引を外してもらえば良いので、小さなバックをぶら下げて自由に歩くことができる、しかも、弁があるのでリークが無ければ基本的には陰圧のままとなるはずである。しかし、どう考えても、回りからリークしそうだが、、、意外としなさそうである。
なかなか良いと思うのだが、世の中のVACやってる人は歩行するときとかどうしているんだろう。まさか、ずーとベッド上ってわけじゃないと思うし。
誰か、知ってますか?
ここのところ、創感染で半年近くも入院している人たちが多かった。
これは絶対に良くない傾向である。
とにかくこの初症例を成功させてうちの病院にもVACを定着させたいと思う。
しかし、誰かが言っていたが、感染って言うのは汗をかくじめじめした時期に多いような気がするが、実は乾燥する冬に多いのではないかと、調べるか。

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2 コメント

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明けおめ返し (あぽいち)
2006-01-01 06:08:25
今年も、いつも目の前を走っている自分の目標に追いつくよう、鞭打ってがんばります。

傷に関しては、研修医のころからこのページを参考にしてました。なかなか、受け入れてもらえないけど。

http://www.wound-treatment.jp/
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明けおめ (第一ばか専属ナース)
2006-01-01 02:17:27
2006年早々お仕事お疲れ様

以前、傷の話し大好きだったから興味津々で読みました。

傷の密閉って細菌の培地になるかと思ったらそうじゃないのかしら。持続吸引で細菌も減少するのね。

30代に鞭打って頑張れよ



私は今年も怠慢に第一ばか専属ナースがんばりま~す
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