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杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

後宮の烏2

2022年01月17日 | 

白川紺子(著) 集英社文庫

後宮で生きながら帝のお渡りがなく、また、けして帝にひざまずくことのない特別な妃・烏妃。当代の烏妃として生きる寿雪は、先代の言いつけに背き、侍女を傍に置いたことに深く戸惑っていた。ある夜、後宮で起きた凄惨な事件は、寿雪が知る由もなかった驚愕の真実をもたらす、が--。烏妃をしばる烏漣娘娘とは何か? 烏漣娘娘がおそれる「梟」とは一体誰なのか?

 

第一話 青燕
飛燕宮の庭に宦官の幽鬼を見たという見習い宦官の衣斯哈(イシハ)の訴えを聞いた寿雪が調査に向かいます。指導役の宦官から酷い杖罰を受けている現場を見た寿雪が庇ったことで、彼は指導役から追い出されてしまい、行き場のない彼を結局夜明宮に引き取ることになり、ますます彼女の周りに人が増えるという。

この幽鬼(衣斯哈と同族の少年だったため彼にだけは見えているんですね)は、主の妃に喜んで貰いたい一心で青燕の羽を取ろうとして鳥を過って殺してしまったため斬首されましたが、鳥への後悔が彼をこの世にとどめていたのでした。寿雪は、同僚だった宦官が棄てられずに持っていた羽を使って彼を救い楽土に送ってやります。

衣斯哈を助けようとしてくれた寿雪を見て、宦官の温螢は心を動かされ、自分の出自を語って感謝の言葉を伝えます。

一件落着した後の新月の夜。寿雪の中の烏漣娘娘が抜け出して暴走し、激しい苦痛を寿雪にもたらします。ところがある青年(宵月)の姿を見た途端、怯え逃げ帰るのです。目覚めた寿雪にはそれが誰か記憶にないのですが「梟」と認識していました。
後宮に現れた星烏は女神の眷属だそうですが、何やら重要な役割がありそうです。

 

第二話 水の聲

ある夜訪ねて来たのは亡くなったばかりの元官女の幽鬼で、帝のお渡りを前に入水した主の妃を救って欲しいと頼みます。でも彼女が本当に救って欲しいのは自分だったのです。言葉の端々に自分の不幸を並べるこの幽鬼は読んでいても不快な存在です。彼女は子を産めずに婚家を出され、分家筋の娘の侍女として仕える我が身に不満を持っていたんですね。自分が教育したからこそ後宮に入り帝のお渡りもセッティングしたのにという気持ちが底にあり、遂には鬼となり果てるのですが、彼女に聞こえていた水底からの主の声は、自らの恐怖が作りだした幻聴なのでした。救ってやれず池に封印した寿雪でしたが、その後、結界を破られたことに気付くのです。

一方、高峻は冬官を統べる薛魚泳が、先代烏妃の麗娘の幼馴染だったことを知ります。麗娘は14歳で烏妃に選ばれ22歳で烏妃を継いだのですが、寿雪は6歳で選ばれ14歳で烏妃になっていてどちらも8年で代替わりしています。薛魚泳は8は聖数だと煙に巻くのですが何か意味あり気です。高峻は魚泳と寿雪を引き合わせ、二人は麗娘の思い出を語ります。でも後で判明するのですが、薛魚泳は生涯他者と交わることなく孤独に生きた麗娘に深い同情(恋愛感情)を寄せていて、寿雪が麗娘の言いつけに背いて周りに人(官女や宦官)が増え帝にまで気遣いされていることにわだかまりを持っていくんですね。

 

第三話 仮面の男

高峻の配下の明允(めいいん)から聞いて手に入れた被ると怪しい男の影が見えるという布作面を持って高峻がやってきます。五弦の琵琶の音に反応していることから、男の正体が自分の音楽に執着して死んだ楽師とわかり、寿雪は五弦の琵琶を使って男を楽土に送ってやります。男の死に関わった同僚の楽師の心の負担を「鬼になる前に死んで良かったのだ」と軽くしてあげる優しさに、彼女の心の一端が垣間見える話になっています。

寿雪は、夜明宮に囚われたまま一生を送る宿命を背負っている自分を顧みて、せめて幽鬼だけでも救ってやりたいのだと高峻に語ります。高峻じゃなくてもこんなに健気な女性なら守ってあげたくなりますよね

 

第四話 想夫香

「青燕」の冒頭で登場した女性は、寿雪に「死者を蘇られて欲しい」と頼んだのですが、彼女は出来ないと帰しています。ところがこの女性は,鵲妃で、亡き兄を慕うあまり禁忌の領域に踏み込んでしまったのね。いや、宵月に付け入られてしまったというのが正しいかも。

後宮で喉を食い破られた官女の死体が見つかり、犯人捜しが始まります。寿雪は鵲妃を怪しみ温螢に探りを入れて貰うのですが、彼が帰って来ず、不安になった寿雪は高峻に頼んで鵲妃の宮に向かいます。鵲妃は宵月が作った泥人形を兄と信じ匿っていましたが、こいつが吸血鬼のように人の血を求め官女を喰い殺したんですね。捕まっていた温螢は危ういところを助けられますが、このゾンビ、突然鵲妃に襲い掛かり血を吸うの。形代を抜いて倒したものの鵲妃は救えませんでした。

夜明宮に戻る途中で宵月が現れます。宵月は、神の住む国である幽宮(かくれのみや)の 葬者部(はぶりべ)で烏(烏漣娘娘)の兄だと名乗ります。自分の役目は烏を殺すことだと言い、そのためには器である寿雪を殺す必要があると言って襲い掛かってきます。実は彼も借り物の体なのです。彼が斯馬盧(スマル)と呼ぶ星烏は烏漣娘娘の眷属の筈なのに、何故か宵月が従えています 温螢と高峻は寿雪を庇い守ろうとしますが、歯が立ちません。彼女の窮地を救ったのは、宵月が哈拉拉(はらら)と呼ぶ金鶏の星星でした。

宵月を手引きしたのは薛魚泳でした。寿雪が殺されても構わないと思ったという魚泳は、麗娘のためには誰も動かなかったのに寿雪は皆から慕われていることが憎らしかったのです。しかし高峻は麗娘は寿雪がいたから孤独ではなかったと言い、彼女が愛し慈しんだ寿雪をお前は殺そうとしたのだと言います。これには魚泳も感じるところがあったようで、隠居を許され後宮を出た後すぐ自殺しているの。真相を知らない寿雪は、魚泳は隠居先で幸せに暮らしていると思っていて、高峻も魚泳の後を継いだ千里も、話を合わせます。

高峻は鵲妃を死なせてしまったことを後悔する気持ちの中に、後宮の勢力争いを憂えている自分を意識して嫌な気持ちになりますが、鵲妃の父・琴孝敬が帝を恨むことなく感謝を示した裏に、寿雪が鵲妃の父親に手紙を送って慰めていたことを知り、彼女が自分のために働いてくれたことに慰められ泣きます。

孤独に生きる宿命を受け入れていた寿雪が、周囲に愛し守りたい者が増えていく中で、迷いながらも共に生きようと思うようになるんですね。

夏の王と冬の王の話には更に秘密があり、烏妃は烏漣娘娘を内包しているということが判明して、ますます混迷を深めていきました

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