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杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

顔のないヒトラーたち

2017年05月05日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2015年10月3日公開 ドイツ 123分

戦後十数年を経て、西ドイツは経済復興の波に乗り、殆どの人が戦争の記憶、自分たちが犯した罪を過去のものとして忘れ去ろうとしていた。そんな時、一人のジャーナリストがアウシュヴィッツ強制収容所で親衛隊員だった男が、規則に反し、ある学校の教師をしていることを突き止める。駆け出しの検察官ヨハン(アレクサンダー・フェーリング)は、上司の引き止めにも耳をかさず、この一件の調査を始める。ジャーナリストのグニルカ(アンドレ・シマンスキ)、強制収容所を生き延びたユダヤ人のシモン(ヨハネス・クリシュ)とともに、アウシュヴィッツでの悪行に関わりながら、罪を問われることなく普通に市民生活を送っている元親衛隊員個々人の証拠を集め、主席検事バウアーの指揮の下、ナチスがアウシュヴィッツでどのような罪を犯したのか、その詳細を生存者の証言や実証を基に明らかにしていく。そして、1963年12月20日、
フランクフルト・アウシュヴィッツ裁判の初公判が開かれた。(公式HPより)

 

ドイツ人のナチスドイツに対する歴史認識を大きく変えたとされる1963年のアウシュビッツ裁判を題材に、真実を求めて奔走する若き検事の闘いを描いたドラマです。2015年・ナチス虐殺の被害者追悼式典で、独のメルケル首相は「ナチスは、ユダヤ人への虐殺によって人間の文明を否定し、その象徴がアウシュヴィッツである。私たちドイツ人は、恥の気持ちでいっぱいです。何百万人もの人々を殺害した犯罪を見て見ぬふりをしたのはドイツ人自身だったからです。私たちドイツ人は過去を忘れてはならない。数百万人の犠牲者のために、過去を記憶していく責任があります。」と語ったそうですが、臭いものには蓋をしてなかったことにするのが得意な国のどこぞの大臣にもよ~~く噛みしめて欲しい言葉ですね 

正義感に燃えるヨハンは、物事の白黒をはっきりさせ、悪は許さないという信念をもって調査を開始します。同僚の検事たちはヨハンを止めますが、バウアー検事総長(ゲルト・フォス)は彼に調査を進めるよう命じます。バウアー自身がユダヤ人で、ナチによる犯罪が記憶の底に埋もれていく現状を変えたいと思っていたのですね。手伝ってくれる同僚や部下も現れます。

何も変わらないと否定的だったシモンがヨハンの熱意に打たれて証言をすることに同意するまでになります。彼の娘たちに収容所で何が行わたかの内容は耳を覆いたくなるような恐ろしいものでした。調査が進むにつれ、次々と語られる証言者たちの告白も悲惨極まりないもので、それを行った人物たちはさぞ極悪非道な者たちなのだろうと思いきや、戦後の彼らはごくありふれた市民の顔で穏やかに何事もなかったような善人面で暮らしていることを知り動揺するヨハン。

恋人のマレーネ(フリーデリーケ・ベヒト)の父親が元先遣大隊員だったこと、反ナチだと思っていた自身の父親が実は党員だったこともわかり、何が正義なのかがわからなくなったヨハンは自暴自棄になり酒に溺れ、マレーネを傷つけ、検事を辞めようとします。しかし、転職先でも意に沿わぬ妥協を求められた彼は、自分なりの主義を貫くことが正義に繋がるのだと悟るのです。未熟な若者の成長物語ともなっている作品でした。



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