2009年6月20日公開 ハンガリー 107分
運命的な出会いを機に結婚したエミル(エミル・ケレシュ)とヘディ(テリ・フェルディ)も、今では81歳と70歳。年金だけでは暮らしていけず、慎ましやかな生活をしているのに借金取りに追われる毎日で、ついに二人の出会いのきっかけだったダイヤのイヤリングまで借金のカタに取られてしまう。高齢者に冷たい世の中に怒りを覚えた夫のエミルは、イヤリングを奪い返すために持病のぎっくり腰を押して20年ぶりに愛車のチャイカを飛ばし、郵便局を紳士的に強盗!それを皮切りに次々と紳士的強盗を重ねていく。一度は警察に協力した妻のヘディも、奮闘する夫の姿にかつての愛しい気持ちを思い出し、手を取り合って逃げる決心をする。やがて二人の逃避行は、多くの民衆を巻き込んで思いもかけない展開に…。
年齢設定を老人にしたハンガリー版の「ボニー&クライド」
年金暮らしの老夫婦。年金だけじゃ暮らしていけなくて、借金が嵩み、大切なダイヤのイヤリングまで取られてしまったことをきっかけに、夫が郵便局強盗をしちゃいます。警察が来て夫の犯行を知った妻は説得するはずが合流しちゃって、夫婦で強盗しながら昔馴染みの友人を巻き込んで逃走生活が始まります。
二人が知り合ったのは、社会主義の時代に、隠れていた令嬢のへディをエミルが見逃したことからのようです。ハンガリーの時代背景や社会情勢はよくわからないのですが、ダイヤのイヤリングをエミルに渡して助けを求めたエピソードがまず観客に示され、次に老人となった二人の日常生活の中で、再び借金の形として彼女が借金取りにイヤリングを差し出す場面が提示されます。そして中盤、逃避行の中でまたこのイヤリングが出てくるのです。
年老いて互いへの関心も薄くなったかに見えた二人ですが、普段は無口で物静かなエミルが大事なイヤリングを取り戻そうと強盗という大胆な手段にうったえるのに驚かされます。へディの方も、夫の思わぬ行動に面食らいながらも一緒に逃げることを選んだのは、きっと彼への愛情を思い出したからなのでしょう。
ホテルのスパに二人で入って楽しそうなへディが「マッサージ」に焼きもちを妬いたり、エミルからの思わぬプレゼントに喜ぶ様子は、女性らしい可愛らしさに溢れています。
ぎっくり腰や糖尿(へディはインシュリン注射が欠かせません)と言った老いに付随する病さえ、ユーモラスに取り入れてしまう監督の技量はなかなかなものです
一方追いかける側の警察の二人アンドル(ゾルターン・シュミエド)とアギ(ユディト・シェル)は恋人同士。浮気がばれたことで関係がこじれています。彼の浮気が許せないアギは妊娠の事実を彼に伝えず別れようとしています。
二組のカップルのやり取りを対比させながら進んでいく物語ですが、アメリカや日本では考えられないくらいのんびりした(抜けてる?)捜査についつい失笑してしまいます。まるでコントのような間と緩さです。旧友のキューバ人のキャラも愉快です。人質となったアギと老夫婦の間で、心の交流が生まれていくのも良かったなぁ。
「もし浮気をしたらどうする?」という問いかけに「どうもしやしないわ」と答えるへディに思わずクスッと笑ってしまいました。これって長年連れ添ったからこそ言えるセリフだし、言葉以上に深い信頼と愛情を感じることが出来たからです。
彼らは強盗と言っても礼儀正しく紳士的だったことと年金暮らしの切実さが、立場を同じくする老人たちや民衆の共感を呼び、一種英雄のような支持を受けていくのですが、終盤で衝撃的な終わり方と見せかけておいて、実はハッピーエンドなのも嬉しいところへディが抱えていたくまのぬいぐるみも秘密に一役買っていたっけ
さて、人生に乾杯!したのはどちらのカップルだったでしょう?いや、両方なのかな
運命的な出会いを機に結婚したエミル(エミル・ケレシュ)とヘディ(テリ・フェルディ)も、今では81歳と70歳。年金だけでは暮らしていけず、慎ましやかな生活をしているのに借金取りに追われる毎日で、ついに二人の出会いのきっかけだったダイヤのイヤリングまで借金のカタに取られてしまう。高齢者に冷たい世の中に怒りを覚えた夫のエミルは、イヤリングを奪い返すために持病のぎっくり腰を押して20年ぶりに愛車のチャイカを飛ばし、郵便局を紳士的に強盗!それを皮切りに次々と紳士的強盗を重ねていく。一度は警察に協力した妻のヘディも、奮闘する夫の姿にかつての愛しい気持ちを思い出し、手を取り合って逃げる決心をする。やがて二人の逃避行は、多くの民衆を巻き込んで思いもかけない展開に…。
年齢設定を老人にしたハンガリー版の「ボニー&クライド」
年金暮らしの老夫婦。年金だけじゃ暮らしていけなくて、借金が嵩み、大切なダイヤのイヤリングまで取られてしまったことをきっかけに、夫が郵便局強盗をしちゃいます。警察が来て夫の犯行を知った妻は説得するはずが合流しちゃって、夫婦で強盗しながら昔馴染みの友人を巻き込んで逃走生活が始まります。
二人が知り合ったのは、社会主義の時代に、隠れていた令嬢のへディをエミルが見逃したことからのようです。ハンガリーの時代背景や社会情勢はよくわからないのですが、ダイヤのイヤリングをエミルに渡して助けを求めたエピソードがまず観客に示され、次に老人となった二人の日常生活の中で、再び借金の形として彼女が借金取りにイヤリングを差し出す場面が提示されます。そして中盤、逃避行の中でまたこのイヤリングが出てくるのです。
年老いて互いへの関心も薄くなったかに見えた二人ですが、普段は無口で物静かなエミルが大事なイヤリングを取り戻そうと強盗という大胆な手段にうったえるのに驚かされます。へディの方も、夫の思わぬ行動に面食らいながらも一緒に逃げることを選んだのは、きっと彼への愛情を思い出したからなのでしょう。
ホテルのスパに二人で入って楽しそうなへディが「マッサージ」に焼きもちを妬いたり、エミルからの思わぬプレゼントに喜ぶ様子は、女性らしい可愛らしさに溢れています。
ぎっくり腰や糖尿(へディはインシュリン注射が欠かせません)と言った老いに付随する病さえ、ユーモラスに取り入れてしまう監督の技量はなかなかなものです
一方追いかける側の警察の二人アンドル(ゾルターン・シュミエド)とアギ(ユディト・シェル)は恋人同士。浮気がばれたことで関係がこじれています。彼の浮気が許せないアギは妊娠の事実を彼に伝えず別れようとしています。
二組のカップルのやり取りを対比させながら進んでいく物語ですが、アメリカや日本では考えられないくらいのんびりした(抜けてる?)捜査についつい失笑してしまいます。まるでコントのような間と緩さです。旧友のキューバ人のキャラも愉快です。人質となったアギと老夫婦の間で、心の交流が生まれていくのも良かったなぁ。
「もし浮気をしたらどうする?」という問いかけに「どうもしやしないわ」と答えるへディに思わずクスッと笑ってしまいました。これって長年連れ添ったからこそ言えるセリフだし、言葉以上に深い信頼と愛情を感じることが出来たからです。
彼らは強盗と言っても礼儀正しく紳士的だったことと年金暮らしの切実さが、立場を同じくする老人たちや民衆の共感を呼び、一種英雄のような支持を受けていくのですが、終盤で衝撃的な終わり方と見せかけておいて、実はハッピーエンドなのも嬉しいところへディが抱えていたくまのぬいぐるみも秘密に一役買っていたっけ
さて、人生に乾杯!したのはどちらのカップルだったでしょう?いや、両方なのかな