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AN現代針灸治療

ANとは「にただあつし(似田敦)」のイニシャルです。現代医学的知見に基づいた私流の針灸治療の方法を解説しています。

冷え性の手技療法

2025-04-24 | 末梢循環器症状

1.指間グロムス刺激
    
末梢血液循環は、動脈→小動脈→毛細血管→小静脈→静脈と循環するが、毛細血管 を介することなく、小動脈から小静脈へと血流が短絡するルートがあり、これを動静 脈吻合(=グロムス機構 Glomus mechanism)と称する。

グロムス機構が開通するとそれ以下の末梢血流量が減少して冷えが生ずる。逆にグロムス機構が切断すると、末梢血流量が増えて手足末梢の冷えが改善される。
 

このグロムス機構のスイッチの切替は、自律神経の作用で自動制御されるが手指の関節や筋へ刺激を与えて、ある程度介入できる。
手足のグロムスの位置は、針灸でも要穴に一致することが多い。爪甲根部は井穴、指間部は合谷や腰腿点などのいわゆる指間穴、手首あたりには内関や外関などの絡穴、肘関節部には五行穴の一つである合穴が存在している。
 
開いているグロムス機構を、どのようにして閉じさせられるかは、単に正常皮膚温と冷えている皮膚温の境界部分を針灸で刺激するだけでは、効果は得られないようだ。 指圧マッサージのような、冷えのある組織全体を揺り動かすような手技療法の方が効果的ではないかと思うようになった。

そこで勉強会を良い機会として、ベテラン2名の手技を紹介していただくことにした。


2.虫様筋の押圧手技(岡本雅典氏)


手の冷えに対する岡本雅典氏の方法は、術者が患者のMP関節より近位にある虫様筋をリズミカルに押圧するとうものであった。Ⅰb抑制が働いて虫様筋弛緩し、手指に行く動脈血流を増加すると推理した。
解剖学書を調べてみると、虫様筋には指へ繋がる血管の貫通枝を見つけたからだった。虫様筋の酷使が、指に行血管を絞扼することがあるかもしれない。自分の体験では、頻回のオートバイのクラッチレバー操作で、手指の厥冷が生じたことがある。瘦せ型の女性でしたら、野菜を切るなどの繰り返し動作でも、虫様筋が血管を絞扼する程度の筋短縮によって常時手指が冷えるようなことがおこるのではないだろうかという考察をしてみた。}
足冷については、足の動脈弓から足の各指に伸びる動脈への血流不足を改善するため、足底指間にある虫様筋を押圧刺激する。

3.前腕屈筋側、下腿屈筋側の押圧手技(小野寺文人氏)

手の冷えに対して、両手掌にて前腕屈筋側への体重をかけた持続押圧による動脈圧迫 を行いつつ、複数回の手関節屈曲・伸展の自動運動を指示するというもの。小野寺によると、北里大学の冷えの施術の中にあった手技で、テレビもしくは医道の日本?だったと思うと話していた。

足冷には、伏臥位で足首下に高めのマクラ(下写真では座布団2枚を折って使用)等を入れて、膝関節を強い屈曲肢位とする。術者はふくらはぎを両手掌にて持続圧による動脈圧迫を十数秒間行う。その間、患者に足関節の底背屈と足指の屈伸運動を指示し、その後圧を抜く。水洗トイレの詰まりをとるラバーカップ(すっぽん)で吸引するイメージ。

 

4.ノボセ(逆上)の原因
  
ノボセとは、頭顔面部に限局したほてり(火照り)だといえる。ノボセ、発汗過多は 更年期障害(または子宮卵巣の摘出手術後)の典型症状である。卵巣からの女性ホル  モン分泌不足すると、下垂体前葉からの性腺刺激ホルモンが分泌増大し、卵巣にもっと 女性ホルモン分泌増やせと命じるが、更年期障害では卵巣機能が低下しているので女性 ホルモン分泌を増やせない。すると下垂体がさらに性腺刺激ホルモンを分泌せよと命令する。この結果、下垂体前葉機能亢進によりノボセや発汗過多が起こる。ノボセはホルモン分泌異常が正体なので、針灸での治療は難しいようだ。