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「成瀬巳喜男監督映画回顧展」上海で開催中~中国劇場進出する日本映画「ラブレター」再上映

2021年06月02日 | エンタメの日記
5月29日から6月6日まで上海で「成瀬巳喜男監督映画回顧展」が開催されます。「妻よ薔薇のやうに」 「めし」「おかあさん」「女が階段を上る時」「放浪記」「乱れる」「乱れ雲」など7作品が上映されます。



「成瀬巳喜男監督映画回顧展」
企画テーマ:「一人の女性として」(As a woman/作为一个女人)
主催:上海映画博物館(Shanghai Film Museum 通称SFM)
期間:2021年5月29日〜6月6日(上映日は金、土、日のみ)
上映作品:妻よ薔薇のやうに 、めし、おかあさん 、女が階段を上る時 、放浪記、乱れる、乱れ雲
場所:上海大光明電影院(上海市南京西路216号)


表の上から:乱れ雲、めし、妻よ薔薇のやうに 、乱れる、女が階段を上る時 、放浪記、おかあさん の7作品を各2回ずつ上映。


女性映画の名匠・成瀬巳喜男監督の作品の中でも、特に一人の女性の生き様にフォーカスした作品を集めた回顧上映で、上海映画博物館(SFM)の企画です。代表作とされる「浮雲」や文学系の「山の音」「晩菊」などはピックアップされていません。

この回顧上映に合わせて作られたオリジナルのしおり。映画チケットの半券を提示すると無料でもらえます。「放浪記」のしおり。


上映会場の上海大光明電影院は90年以上の歴史を持つクラシックな映画館で、1号スクリーンは1階席と2階席を合わせて1365席もある大きなホールです。いずれの回も700名程度の観客が入っています。客層は20代、30代の女性がメインで、男女比は7対3くらいで女性が多いです。
意外なことに「女が階段を上がるとき」(1960年)と「乱れる」(1964年)の人気が高いです。コメントなどを見ていると若かりし頃の加山雄三がかっこいいという声が目立ちます。

最近、様々な年代の日本映画が中国で上映されています。
5月20日には岩井俊二監督の「ラブレター」が中国全国の劇場で再上演されました。

「ラブレター」岩井俊二監督 主演:中山美穂、豊川悦司 日本公開日:1995年3月25日
中国語タイトル:情书 2021年5月20日再公開
興行収入:約6090万元(約1億円)動員数:約180万人。


チケットアプリ「淘票票」での口コミ評価は8.9。
「ラブレター」はもともと韓国、中華圏での評価が非常に高い作品です。映画の中のノスタルジックな街並みや雪景色に惹かれて、多くのアジア人観光客が小樽を訪れるようになりました。
「5月20日」は"520”という数字の並びの発音が「我愛你」(ウォーアイニー)に似ていることから「恋人の日、愛の日」としてアニバーサリー化しています。「ラブレター」は5月20日に合わせて公開されました。
「自分の気持ちをはっきり人に伝えることができないもどかしさ」は東アジア圏共通の情緒で、2021年に生きる中国の人々の心にもストレートに響くようです。「1995年の映画なのに、服の着こなしなど全然古さを感じない。」というコメントが多いです。

映画興行のビッグデータ分析アプリ「灯塔专业版」によると、「ラブレター」の鑑賞意向があるのは7割が女性で、20~24歳の女性が44.6%と最も高く、70%は最終学歴が大卒。この種のビッグデータはアプリ利用度に依存するため、必ずしも正確とはいえませんが、傾向的データとして参考にはなります。「灯塔专业版」はアリババ傘下のアプリで、チケット販売アプリと連動しています。


5月28日ドラえもん3Dアニメ『STAND BY ME ドラえもん 2』公開。
『STAND BY ME ドラえもん 2』(中国語タイトル:哆啦A梦 伴我同行2)
中国公開:2021年5月28日  日本公開:2020年11月20日 
興行収入:1.73億元(約27億円)※6月2日現在の数字。最終的には2億元台まで伸びると予測されています。
チケットアプリ「淘票票」口コミ評価:8.9


2015年に上映された前作から6年を経て公開された続編(完結編)です。
『STAND BY ME ドラえもん 1』は2015年5月に中国で公開され、5.3億元(約80億円)というスマッシュヒットを記録しました。
2015年当時は日本映画を中国の一般の劇場で公開することはまだ珍しく、手探りの状態の中で予想外のヒットとなりました。『STAND BY ME』のヒットによって、「中国の映画館で日本映画をかけてもそこそこ人が入る」という認識が生まれ、日本映画が中国シネコン市場に進出するきっかけを作り出しました。
その後、2016年に公開された『君の名は』が5.7億元(約88億)、2019年に正規上映された『千と千尋の神隠し』が4.8億元(約74億円)と健闘したものの、6億元(約100億円)の壁を破る日本映画はなかなか出てきません。

4月17日コナン劇場版『名探偵コナン 緋色の弾丸』が日本と同時期に公開。
コロナの影響で1年遅れの公開となったため、日本と同じタイミングで中国劇場公開となりました。

『名探偵コナン 緋色の弾丸』(中国語タイトル:名探侦柯南 绯色的弹丸)
日本公開:2021年4月16日 中国公開:2021年4月17日
興行収入:2.1億元(約33億円)
チケットアプリ「淘票票」口コミ評価:8.0


実をいうと 、中国では「緋色の弾丸」の口コミ評価はあまり良くなかったのですが、興行収入は2億元(約30億円)を突破しました。同時期にめぼしい作品が少なかったこと、「名探偵コナン」というコンテンツが幅広い年代・地域に浸透していることが興行を支えたとみられます。
前作2019年の『名探偵コナン 紺青の拳』が2.3億元で、2018年「ゼロの執行人」が1.27億元なので、ここ数年のコナン劇場版は中国で2億元(約30億円)の興行収入をキープしているといえます。固定ファンが毎年観に行っているものと思われます。
日本国内の「コナン劇場版」の興行収入は60~90億円なので、中国は日本に次ぐ大きな市場ということになります。

無料アプリ「灯塔专业版」はチケット購入アプリと連動しており、映画の興行収入をリアルタイムに照会できます。分刻みの興行収入、観客属性(性別、年齢、都市、好みの傾向など)、コメント評価、宣伝活動の効果などを参照できます。
 

6月11日からは「第24回上海国際映画祭(SIFF)」が例年どおり開催されます。今年も多くの日本映画が上映される予定です。コロナの影響で人が来ることはできなくても、映画のフィルムは世界中に行くことができます。
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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんにちは (はるみとまこ)
2021-06-07 14:45:46
昔の日本映画が大好きです。
特にでこちゃん(高峰秀子)が好きだったので、彼女の作品は比較的見てます。
「女は階段を上る時」するんですね。
不思議な感じです。
返信する
はるみとまこさん (上海阿姐)
2021-06-08 01:05:04
こんにちは!
「女が階段を上るとき」など今見ても全然古さを感じさせないですね。「妻はばらやうに」は1935年の映画ですが逆に新しく感じます。
主に20代、30代前半くらいの人たちが見に来てましたが、7作品のチョイスが絶妙で若い中国人の観客も自然に共感が持てたのではと思います。
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