Movieな空間

映画大好き人間の気ままな空間です!!

今週の状況

2006年12月14日 00時10分57秒 | Weblog
 今週は、結局、アニメ映画『どうぶつの森』、ドキュメンタリー映画『ダーウィンの悪夢』の観賞のみで、『ブラザーズ・オブ・ザ・ヘッド』は、試写会が重複し、観賞できなかった。まあ、こんな週もあるだろうけど・・・。
 今週末には、ジェニファー・ロペス、ジェーン・フォンダの『ウェディング宣言』の特別試写会がある。それから、『敬愛なるヴェートーベン』の劇場鑑賞券も来ているので、上映開始には行こうと思う。
 もう、12月も中旬を迎え、年末までのカウント・ダウン状況ですね。本当に、寒くなってきたので、クリスマスもやっと「らしい」状況で迎えられそうですね。
 この時期になって、やっと我が家でも、ケーブルTVの視聴が可能となった。幾つものチャンネルで、最新映画を上映しているので、これからが、楽しみです。本日は、『ファンタスティック4』や『クレース』なんかを放映していた。楽しみなドラマと重複していたので、結局は、観賞出来なかったが・・。これからは、レンタルDVDと並行して、沢山の映画を観賞し、自分の感性を高めようと思う!!

TVドラマ『僕の歩く道』第十話の全容

2006年12月13日 21時40分40秒 | Weblog
ドラマ『僕の歩く道』第十話~涙で、愛がみえない~
いよいよ、このドラマも次週が最終回です。自閉症の本人の辛さも
当然ですが、その家族にも大変な重い負担が掛かっているのですね。
こんなこと、普通の家庭では、全然分かりませんものね。このドラマ
は、何度見返しても、心に同じように響いてきます。こんなドラマは、
私には初めてですね。感動の上に、さらに感動が積み重なっていく
ようです。
 ここで、12月12日放送の第十話の全容を、ブログ「どらま・のーと」
さんからの転用で記載させていただきました。本当に、重い話ですね!

<第十話ー涙で、愛が見えないーの全内容>
『涙で、愛が見えない』

輝明(草なぎ剛)の胸で泣く都古(香里奈)。
「手紙、出したから。」
「うん。・・待ってる。」
「・・・」
「・・・ごめん。」都古が離れる。
「どうしたの?」
「・・ううん。何でもない。」
「・・・」
「ロードバイク、カッコイイね。
 見せに来てくれたの?すごいよ、テル。」
「・・・」
「せっかく来てくれたんだけど、私行かなきゃいけないから。」
「どこに?」
「仕事。」
「河原さんの動物病院。」
「うん。」
「約束だからね。」
「え?」
「結婚ていうのは、ずっと一緒に仲良くしようって
 約束すること。」
「・・・うん。」
穏やかに微笑むテル。

「来てくれてありがとう。
 じゃあね、バイバイ。」都古が微笑む。
「バイバイ。」
テルを越すと、都古は悲しげな表情に戻り、仕事に向うのだった。

テルは都古の悲しそうな背中を見つめ・・・。

自転車で家に戻るテル。

『都古ちゃんへ
 今日は、仕事がお休みでした。
 ロードバイクに乗りました。
 都古ちゃんが泣いていました。』

動物病院。
動物に元気な笑顔で接する都古。

手紙を書き終えたテルは、どこか元気がなく・・・。

ベッドに入っても、横になろうとしないテル。
彼の瞳から、涙がこぼれる。
しばらくするとテルは横になるが、
眠れないのか、悲しそうな表情で天井を見つめ・・・。

都古の涙、悲しそうな背中を心配しているんですよね・・・。

輝明は自転車で亀田(浅野和之)の喫茶店へ。
「ロードバイクに出会ってしまった者は、
 やがて、新しい自分に出会うことになる。
 ロードバイクに乗っているとね、
 新しい世界が見えてくるんだよ。
 走るのは気持ち良いだけじゃない。
 辛い時だってある。
 風を感じ、空を感じ、大地を感じながら、
 辛さを乗り越えた時、
 そこにはどんな世界が待っていると思う?」
亀田を見つめる輝明。
「それは、ロードバイクに乗る者だけが知ることが出来る
 世界なんだ。」
「・・・」

自宅の部屋で、チラシを見つめる輝明。
『17th TOHTO CYCLE ROAD RACE 40km 12.16』

大竹家のキッチンに秀治(佐々木蔵之介)がやって来た。
「りな、ちょっといい?」
「やだ。」
「俺が説教するとでも思ってるのか?」
「そうでしょ。」
「ああそうだ。」
りなが読んでいた雑誌を取り上げる秀治。
「大学卒業したら、家出るんだって?
 どうして。」
「・・・」
そこへ輝明が降りてきた。
気を取られた兄から雑誌を取り戻すりな。
「お兄ちゃん、こんばんは。」
「こんばんは。」
「・・・」
「どうした?」
「お風呂?」と里江(長山藍子)。
輝明はイスに座り、ちらしをテーブルの上に置く。
「レース?」とりな。
「うん。」
「見に行きたいの?」りなが聞く。
「・・・」
「もしかして、出たいの?」とりな。
「まさか。」と秀治。
「出たい。」
「は!?」秀治が驚く。
「これ、どれだけ走るの?
 40キロだよ。
 40キロって、ものすごーく長いんだよ。」
「そんな長距離、危険だし、
 大勢の人が参加するんだろ?
 そういう場所輝明苦手なんだから。
 周りに迷惑かけるだろうし。
 それに、大体、レースって競争だよ。
 輝明は、競争がどういうことかわからないだ。」
「うん・・。ちょっと、照明には難しいかな。」と里江。
「はっきり無理って言った方がいいよ。」と秀治。
「・・お風呂、入る。」
「輝明!レースは、無理。わかった?」
「お湯の温度は39度。」輝明は兄には答えず風呂場に向う。
「無理かどうかはわかんないじゃん。」
「輝明のことはともかく、 
 りなはどうなんだよ。
 うちを出てどうするの?やりたい事はなに?」
「もういいでしょ。」
りなはそう言い二階に上がってしまった。

「何考えてんのか・・・。」
里江は輝明が置いたチラシを手に取り・・・。

『都古ちゃんへ
 今日は、動物園に仕事に行きました。
 亀田さんの店に行きました。
 レースに出たいです。』

料理をする都古。
「ただいま。」河原(葛山信吾)が戻ってきた。
「お帰りなさい。」
「何作ってるの?」
「明日の準備。」
「なんか疲れてる?
 大丈夫?明日。」
「うん。大丈夫。」
「そう。よろしくな!
 みんな楽しみにしているから。」
「結局何人来る?」
「8人。」
「わかった。」
「8人も来たらここも狭いよな。
 そろそろマイホームも考えないとな。
 あと子供のこともな。」
「子供?」
「結婚したら子供を持つものだろ?
 子供がいるってことは、家庭円満ってことだし、
 子供がいたら離婚になんか。
 ・・・あ、いたんだよ。
 子供がいたら離婚になんかならなかったってやつが。
 斉藤ってヤツなんだけど。
 ・・そいつの話はどうでもよくって。
 都古だってそろそろ考えるだろ?
 マイホームとか子供。
 家族設計っていうの?」
「・・・うん。そうだね。」都古は微笑みを浮かべてそう答える。

翌日。
部屋の掃除をする都古。
花を生け、料理の準備をし、テーブルに並べ・・・。
その様子に満足げな河原。
浮かない表情の都古。

フライパンがジュっと音を立てる。
慌てて戻るが、ニンジンのグラッセが焦げ付いてしまっていた。
それをボーっと見つめる都古・・・。

「ワイン買ってくる。」河原が声をかける。
「私もスーパーへ行く。」
「うん?何買うの?」
「ニンジン、焦げたから。」
「いいよ、わざわざ。
 他にもたくさん食べるものあるんだし。」
「ううん。作り直す。」
都古はエプロンを外し、スーパーに走る。

ニンジンを手に取り、レジに向おうとする都古は、
人とぶつかり、その反動で山積みされたジャガイモにぶつかる。
ジャガイモがフロアーに転げ落ちていく。
その様子を、ただ呆然と見詰める都古。
持っていたニンジンを落とし・・・。

河原がワインを買い帰宅する。
だが、都古は戻ってこない。
イライラと待つ河原が寝室を覗くと、クローゼットが開けっ放しに
なっている。
都古の服がかかっていた場所には空のハンガー。
「都古・・・。」
サイドボードには、都古の結婚指輪が…。

その頃、都古は電車に乗り窓の外の景色をぼーっと眺めていた。

カバンを一つ下げ、夕焼けに染まる浜辺を歩く都古。
海を見つめ・・・。

大竹家で秀治の家族も一緒に夕飯を食べている。
「先輩の会計事務所が、りなのこと雇ってくれるって言ってる。
 いい話だから考えてみたら?」秀治が言う。
「・・・」
「聞いてる?」
「うん。」

「あ・・・」と幸太郎(須賀健太)。
「どうしたの?」と真樹(森口瑤子)。
「輝明おじちゃん。どうしたの?」
幸太郎の言葉に、みんなが輝明を見る。
輝明の瞳から涙がこぼれ落ちる。
輝明は何も言わずに、ご飯をよそりに炊飯器へと立つ。
心配する一同。
「輝明。涙が出てるから拭きなさい。」
里江がティッシュを渡すと、輝明は涙を拭き、
何事もなかったように食事を続ける。

「今日は仕事、しっかりやれた?」里江が聞く。
「やった。」
「何か、嫌なことあった?」
「ない。」
「お昼ごはん、何食べた?」
「チキンカレー。」
「美味しかった?」
「美味しかった。」
「そう・・・。」

「何でもないんじゃない?」とりな。
「泣いているのに?」声を潜めて真樹が言う。
「たまに、変なときに突然泣くことがあるんです。
 よくわかんないけど。ね?」
「ああ。」と秀治。
「大丈夫だって。
 お兄ちゃん食欲だってあるし。」
りなが、心配そうに輝明を見つめる里江に言う。

輝明の机の上には、都古へのハガキとロードレースのチラシ。
ベッドでぐっすりと眠る輝明。
その顔を優しく撫で、涙の流れた場所に触れてみる。
ベッドに腰掛け、輝明の寝顔を見つめる里江・・・。
廊下を通りがかったりなは、そんな母の姿を見つめ・・・。

「寝てる?」戻ってきた母にりなが聞く。
「うん。ぐっすり。」
「ほら。やっぱり何でもないよ。
 お兄ちゃん何かあったら、眠れなくなるんだから。」
「・・・うん。」
2人が部屋を出ていく。

きっとりなは、こんな里江の姿を何度も何度も見てきて、
そのたびに寂しい思いをしてきたんですね。

輝明は何かあったら眠れなくなる。
都古がテルの胸で泣いた日。家族にレースを反対された日。
輝明は眠れずにいました。

その頃都古は、一人で旅館に泊まり、眠れない夜を過ごしていた。
河原から携帯に電話が入るが、都古は出ようとはしなかった。

河原家。
夜の11時、都古に電話をする河原。
テーブルの上には、朝と同じ状態で食事が並べられたまま・・・。

朝6時過ぎ。河原からの電話。
都古は携帯を見ようともしない。

輝明は、いつものように都古宛のハガキを投函。

りなが起きてくると、里江は出かける支度をしていた。
「どこか行くの?」りなが聞く。
「動物園。」
「お兄ちゃんの?」
「やっぱり、何か変わったことがないか、
 園長さんに聞いてみようと思って。」
「何かあったら向こうが言ってくるでしょ。
 わざわざ行くことないよ。」
「何もないと思うけど・・・
 行ってくる。」
「・・・」

動物園。
いつものように、三浦(田中圭)と掃除をする輝明。
「ロードバイク乗ってます?」三浦が聞く。
「はい。
 仕事が休みの日に乗ってます。」
「気持ちいいんだろうな~!」
「風を感じ、空を感じ、大地を感じながら、
 辛さを乗り越えた時、
 そこにはどんな世界が待っていると思う?」
「・・・はい?」
「それは、ロードバイクに乗る者だけが知ることが出来る
 世界なんだ。」
一点を見つめ、少し微笑みそう語る輝明。
三浦が優しく微笑む。

古賀(小日向文世)と久保園長(大杉漣)が里江の応対をする。
「仕事中、とくに変わった様子はないと思いますよ。」と古賀。
「そうですか。」
「何か、気になることがあったんですか?」と久保。
「ええ。何でもないことだと思ったんですが、
 念のため、お話を伺おうと思いまして。」
「そうですか。
 何か気になることがありましたら、すぐにお知らせしますから。」
「ありがとうございます。
 よろしく、お願いいたします。」

夜。
ベッドでぐっすりと眠る輝明。

里江は台所のテーブルに突っ伏し、眠っている。
そこへりなが戻ってきた。
「お帰りなさい。」
「ただいま。」
「遅かったのね。
 輝明、動物園で、とくに変わったことないみたいだった。」
「・・・そんなの最初からわかってたじゃん!」
りなはそう言い、部屋に駆け上がる。

旅館。
膝を抱え、考え込む都古。

亀田の喫茶店に並ぶ2台のロードバイク。
輝明は、店内に張ってあるレースのポスターをじっと見つめ・・・。

公園を並んで走る2台のロードバイク。
亀田と輝明だ。
輝明を気遣いながら走る亀田。
輝明は微笑みを浮かべ、気持良さそうにバイクを漕ぐ。

大竹家。
秀治が台所にやって来た。
「りなは?」
「今日も遅くなるんじゃないかな。バイトがあるから。」
「りな・・何か目的があって、うちを出るって言ってるんじゃ
 ないんじゃない?」
「どういうこと?」
「お袋を心配させたいだけなんじゃないかな。
 子供の頃から、お袋は輝明のことで頭が一杯だった。
 とくに昔は、今よりずっと、自閉症を理解してもらうのが
 大変だったから。」
「・・・」

その頃りなは、堀田(加藤浩次)に会いに行っていた。
「大学を卒業したら、家を出ようと思うんですけど、
 やっぱりお兄ちゃんのことを思うと複雑で・・・。
 最近夜眠れないし。」
「輝明さんのことが心配なんですね。」
「・・・」
「りなさん。
 今日は、あなた自身のことをお聞きしましょうか?」
「え・・・」

大竹家。
台所のテーブルに、秀治と里江が向き合って座っている。
「お袋は、わかっていたはずだよ。
 りなが寂しい思い、ずっとしてたこと。
 お袋に、甘えたくても甘えられなかったこと。
 ・・・お袋が、りなにずっと甘えてきたから。」
秀治の言葉にうつむく里江。
そこへ輝明が帰ってきた。
「お帰り。」と秀治。
「ただいま。」
「お帰りなさい。」玄関に行きスリッパを出す里江。

輝明がうがいを始めると、里江は再び席に付き
輝明の様子を見守る。
「・・・」輝明が二人の前に立つ。
「どうした?」と秀治。
「出たい。」輝明が答える。
「出たい?」
「出たい。」
「・・何のこと?」秀治が里江に聞く。
「ロードバクのレース?」と里江。
「・・・」
「そうなのか?」と秀治。
「はい。」
「・・・まだそんなこと言ってるのか。」
「出たい。」
「無理なものは無理。」
「出たい。」
秀治が立ち上がる。
「出たいなら自分ひとりでやれよ!
 人の手を借りて当然だなんて思うな。
 人に迷惑をかけて当然だなんて思うな!
 ずっと兄妹が面倒を見てくれるだなんて思うな!」
「秀治!」里江が止める。
輝明は黙ったまま二階に上がってしまう。

「輝明に当たらないで!」と里江。
「お袋・・・気付いてたよね。
 小学校の時、輝明のことで俺がいじめられてたの。」
「・・・」つらそうな表情を浮かべる里江。
「じゃあ・・輝明がクラスで問題を起こす度に、
 輝明の担任が俺に不満ぶつけてたことは?」
「・・・そんなことが、あったの?」
「ああ。
 いい迷惑だったよ。」
悲しそうな表情で秀治を見つめる里江。
秀治が二階に上がっていくと、里江は堪えきれずに涙を流した。

堀田に語るりな。
「母に何か話をしようとしても、
 ちょっと待ってって言われました。
 母はお兄ちゃんのことをしていました。
 母の話はよく聞かされました。
 ほとんど愚痴です。
 お兄ちゃんのことで疲れると、
 私に愚痴をこぼすんです。」
「辛かったですね。」
「しょうがないと思っていました。
 父は、お兄ちゃんのことを母に任せきりにしていたし、
 母は本当に辛そうでしたから。」
「あなたのお陰で、お母さん、ずいぶん助かったんでしょうね。」
「・・・」
「でも・・りなさんは、ずっと我慢してきた。
 自分の気持ちを抑えてきたんですよね。
 本当は、どうしたかったんですか?」
「・・・お母さんに・・・甘えたかった・・・」
りなはそう言い、泣き出した。
子供が泣きじゃくるように、号泣するりな・・・。

秀治の家。
夕飯の支度をしながら真樹が秀治に言う。
「ねえ、今日テレビのドキュメンタリーで見たんだけど、
 自閉症の人たちが、4人で一緒に暮らしてた。
 結構自立できている人たちで、
 あ、もちろん、食事の世話をしてくれる人たちは
 ちゃんといるんだけどね。
 それって、グループホームっていうのね。
 輝明さんよりも自閉症が重いような人たちもいたんだけど、
 あー、ちゃんと親元離れても、暮らしていけるんだなー、」
「黙っててくれないかな!!」珍しく、秀治が大声を出す。

輝明は部屋でレースのチラシを見つめ・・・。

りなの帰宅を待つ里江。
「ただいま。」りなが帰ってきた。
「お帰りなさい。」里江が玄関に出ていく。
「・・ただいま。お風呂入るね!」
「はい。」笑顔を見せる里江。

ツール・ド・フランスのビデオを見る輝明。

リビングのソファーで考え込む里江。
お風呂から上がったりなは、母の疲れた背中を見つめ、
肩を揉み出す。
「・・・気持いい・・。」
母の言葉に、りなが嬉しそうに微笑む。
里江が、りなの手に自分の手を重ねる。
「りな・・・。
 ごめんね・・・。」
里江がりなの手を両手で握り締める。
その手を見つめるりな。
そしてりなは、母の背中からそっと手を回し、抱きしめる。
りなの頭を撫でる里江。

そんな2人の姿を見つめる秀治は・・・。

ツール・ド・フランスのビデオを見る輝明。
「輝明。入るよ。」
秀治が部屋に入っても、ビデオを見つめる輝明。
秀治は、レースのチラシがゴミ箱に捨ててあることに気付く。
「輝明。」
「はい。」
「レース、出たいの?」
「・・・」
「小学校の時の運動会、覚えてる?
 かけっこ。
 輝明、競争の意味もよくわからなくて、
 コースをちゃんと走れなかったんだよな。
 自転車のレースのコースって、」
「お兄ちゃんが、手を引いてくれた。
 かけっこ、お兄ちゃんが、手を引いてくれた。
 ありがとう。」
輝明は兄に視線を合わせそう言うと、またテレビに視線を戻す。
輝明の横顔をじっと見つめる秀治・・・。
「・・・さっきはごめん。キツいこと言って。」
秀治はそう言うと、輝明が捨てたチラシをゴミ箱から拾い上げ、
そしてそれを机の上に置くのだった。

都古は黙って家を出てから、孤独が募っていた。
携帯を手に取り、アドレス帳を開く。
『大竹』を表示させ、電話をしようか考える都古。
時刻は、0時19分・・・。
次に、『お母さん』のところで考える。
だが、都古は携帯をパタンと閉じるのだった。

動物園。
ジンジンを膝に乗せ、エサを与える輝明。

帰り道。
都古との思い出の広場を自転車を押して歩く輝明。
あの木の葉っぱはほとんど落ちてしまっている。
輝明はふと、木を見上げ、そしてまた歩き出す。

家に帰った輝明は、うがいを済ませ、部屋に上がろうとすると
家の電話が鳴る。
少し迷いながらも、受話器を取る輝明。
「はい。」

電話をかけていた都古は、照明の声に驚く。
「・・・」

「・・・」
「・・・」
「・・・都古ちゃん。」
輝明に名前を呼ばれて、慌てて携帯を切る都古。

「お帰り。」りなが声をかける。
「ただいま。」
「電話かかってきた?」
「うん。」
「誰?」
「都古ちゃん。」
「何だって?」
「何も言わなかった。」
「え?」
輝明は部屋に上がっていく。

「ごめんね、テル・・。
 約束・・守れなかった。」
海を見つめて涙する都古・・・。

日も暮れたころ、旅館に戻る都古。
都古の携帯が鳴る。
「もしもし?都古。
 明日ランチしない?」事情を知らない千晶(MEGUMI)からだった。
「・・・」
「もしもし?
 ・・・今どこ?」
「・・・」

動物園。
ジンジンにエサをあげていた輝明は、三浦に言う。
「三浦さん。
 ジンジンが元気じゃありません。」
「エサ食べました?」
「食べません。」
「田原先生に見てもらいましょう。」
「はい。」

海岸に腰掛け、海を見つめる都古。
「都古!ランチしよう。」千晶がやって来た。

「いい所だね。
 暫くここで、のんびりするのもいいんじゃない?」
「のんびりなんて出来ない。
 どんどん落ち込む。
 時間が経てば経つほど、自分がどんどんダメに思えてくる。」
「暇な時間が多いから、そういうことばっかり
 考えちゃうんだよ。
 ・・・都古、全然寝てないでしょう。」
「眠りたくても眠れない。」
「いつから?」
「家を出る一週間ぐらい前から、落ち着かなくなって、
 寝付けなくなった。」
「帰ろう、安心して眠れる場所に。」
「どこに帰ればいいの?」
「うちおいでよ。」
「・・・」
「都古?」
「うん?」
「もしかして、お母さんのこと考えてた?」
都古が小さく頷く。
「お母さんも変わったんじゃない?
 年も取ったことだし。」
「お母さんの所へは絶対に帰らない。
 昔も今も、お母さんの所は私が安心できる場所じゃないから。」
都古はそう言い海を見つめる。

ジンジンを抱き、優しく撫でる輝明。

都古は母を訪ねていく。
集合住宅のベランダに、洗濯物を取り込む母の姿があった。
都古は携帯を取り出し、母親に電話をしてみる。
「はい、もしもし。」
「お母さん?都古だけど。」
「今どこにいるの!
 河原さんから連絡があったけど、
 うち出たってどういうこと?」
さっきまで母がいたベランダを見つめる都古。
「ごめんなさい。」
「すぐに河原さんの所に戻りなさい。」
「お母さん、私の話も聞いてよ。」
「どうせ都古が悪いんでしょう。
 離婚なんて絶対にダメよ。
 親が離婚しているからって言われるから。
 早く帰って河原さんに謝りなさい。いい?わかった!?」
「・・・じゃあね。」
母の言葉に絶望した都古は電話を切り、実家に背を向けた。

行く場所を失った都古は、バス停のベンチに座り込む。
バスが止まっても、それには乗り込まず・・・。
都古は涙をぽろぽろとこぼし、泣いていた。

「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」

行く場所を失った都古が安心する場所を求めて訪れた場所は、
動物園だった。

三浦の姿を見かけた都古は、声をかけずに引き返していく。

夜。
動物園の入園口。
入り口の側にはテンジクネズミの小屋がある。
「ジンジン。」都古が語りかける。
その時、門の開く音。
「こんばんは。」都古が挨拶する相手は・・・輝明だ。
「都古ちゃん・・こんばんは。」
「まだ、いたの?」
「ジンジンが元気じゃないから。」
「・・・」

輝明は都古を事務室に連れていく。
「誰もいないの?」と都古。
「三浦さんが、動物たちの様子を見にいってる。」
自分の席に座った輝明が答える。
「そう。
 少し、ここにいてもいい?」
「うん。」
都古が席に付く。
「手紙、出したから。」
「うん。待ってる。」
「アメリカビーバーは、北アメリカの河川や池に
 広く分布しています。」
勉強を始める輝明。
そんな輝明の背中を見つめる、都古の顔に微笑が浮かぶ。

ふと、輝明が振り返ると、都古は机に突っ伏し、
安らかな寝顔を浮かべて眠っていた。
輝明は自分の上着を脱ぎ、都古にかけてあげ、
そしてまた、勉強を始めるのだった。

ドキュメンタリー映画『ダーウィンの悪夢』

2006年12月13日 00時42分47秒 | Weblog
 ドキュメンタリー映画『ダーウィンの悪夢』試写会に行ってきました。この手の映画は、本当に重く、単なる映画として観れない、現実を突きつけられてしまうもので、心に「ズシッ」としたものを感じてしまいます。これは、脚色だとかで、逃れられない閉塞感があります。「現実を見ろ!」っと突きつけられたとしても、余りに直球で投げ込まれると、反応に躊躇してしまいますよね。実際の映像は、それ程の重みがあるのです。
 アフリカのタンザニアに面している広大な湖「ビクトリア湖」。ここに、「ナイルパーチ」という大型の外来肉食魚を放流したことで、湖の生態系が大幅に変革される。それまで、淡水に多くいた在来魚が全てこのナイルパーチに食べられ、絶滅の危機に陥る。しかし、このナクルパーチという魚は、白身魚として重宝され、切り身は、ヨーロッパや日本に大量に輸出される。マクドナルドの白身魚・フィレオフィッシュのような類の魚なのです。これほどの需要により、ビクトリア湖には、西洋資本の大規模魚加工工場が多く出来て、地元の猟師は工場にのこのナイルパーチを売る事で収入を稼ぐ。加工行程での仕事は、現地従業員で賄うのだが、加工行程による付加価値で、現地の大多数の一般人には、到底手の届く魚ではなくなってしまう。おまけに、それまで獲っていた在来魚はほとんどいないため、人々の口に入るのは、この魚の解体後の頭と多少肉のついた骨しかない。これを大量に仕入れて、天日に干し油で揚げて必要としている一般人に売る業者により、食が保たれている状況。このゴミクズのような解体残飯は、トラックで運ぶ最中、腐敗し、ウジやハエの塊のようになる。「こんなもの食べれるの?」と言う、悲惨な食物なのです。この映像は、劇場の場内大多数の観衆からどよめきが起きたほどの、凄まじい見るに耐えない映像でした。また、生きていくための10ドル程度の対価による売春、食も無くやせ衰えるストリート・チルドレンたち、僅かな食料を奪い合い、殴り合いをする日々、苦しさから、ナイルパーチを梱包するプラスティック容器を火で溶解し、その有害ガスを吸って一時的に麻薬のように天国の夢心地になる。そんな有害ガスを吸えば、大半が寝入ったまま、二度と眼を覚まさない状況に陥ってしまう。しかし、毎日、タンザニアの空港には、魚運搬の輸送機が離発着している。飛来する時は、弾薬や武器を運搬、帰りは、山ほどの魚の冷凍切り身を携て・・。その武器により、毎日、内戦や戦争が起こり、多くの人たちの生命が失われていく。あまりにも酷い悪夢のようなグローバリゼーション。誰が、こんな連鎖を歓迎するのだ!!しかも、そんな重大な部分を、日本人が係わっているとは・・!絶句である。
 この映画は、淡々とした現実を映す映像とインタビューを中心に構成されている。この中で、こんな事をやっていることが、良いとか悪いとかの、批評じみた言葉は一切無い。自分が見た映像で、自分で判断する事しかない。あまりにおぞましい現実がここにある。僅かな先進国の人間により、地球のほとんどの富が支配されている現状は、いいのか?地球人口の80%以上の人たちは、今も飢餓で死滅している状況は、人間として許容出来るものなのか?このドキュメンタリー映画で、多くのことを考えさせられた!

『どうぶつの森』試写会

2006年12月12日 00時16分00秒 | Weblog
 さすが、任天堂ゲームソフトから、劇場版映画(アニメ)になっただけあって、映画全体に、「ぽよ~ん」「ほよ~ん」「のんびり」の、のどかな雰囲気のある映画でしたね。親子連れが全体の2/3でしたので、我々おじさん軍団は、四面楚歌の場違い状況の感が否めないとの印象ですね。さすがに、アンパンマンのテーマソングをみんなで合唱とまでは行かなくても、それに近い空気が会場を支配していましたね。この類の映画には、つき物なのでしょうが、やはり何度経験しても馴染めない状況ですね。この試写会が、ファミコン通信主催であっただけに、やむを得ないシチュエーションなのでしょうが、まあ、「何でも観賞」の映画オタクにとっては、避けて通れない道のりなのです。
 物語は、人間界の女の子「あい」が、独立して、この動物村に住むことを決意し、意気揚々とやってきた。しかし、新入りに全ての動物が歓迎している訳ではなく、いきなり、引越し日当日から、タヌキチ商店の配達係のアルバイトをさせられる。商品を配達しながら、新入りの挨拶に回るはめになる。村長選挙のことで頭が一杯の長寿かめ・コトブキ(寿のこと?)、怒ると怖い正義感の強いもぐらのリセット、さすらいのミュージシャン・犬のとたけけ、美女狼、白頭鷲の青年、いつも釣りをしている皇帝ペンギン、親友になるデザイナー志望のぞうのサリー、ねこのブーケ、忍者の格好の男の子、泳げないワニたち等と毎日色々な経験をしていく。サリーは、一生懸命デザインの洋服を考えていて、この夢にに向かっていることを「チェリー・パイ(さくらんぼのパイ→自分の夢)」を食べる事にに例える。あいも自分の夢(=チェリー・パイ)は何なんだろう?と自分なりに一生懸命。ある日海岸に、ビンに入ったメッセージ・ペイパーを発見する。「針葉樹を植えよ。雪祭りの日に奇跡は起こる」と記載されている。これは、宇宙人からのメッセージであると、あいは勝手に解釈し、指示通りに針葉樹を植え始める。雪祭りの日、上空からUFOが・・・。しかし、あまりにも手作り的なUFO?これとは、違い本物のUFOが、草食首長ザウルスの化石近くに迷って傷ついていた宇宙人の子供を助けたことで、お礼に飛来。丸に星マークのUFOに感謝され、夜空にあいの顔型の星しるべを作ってくれた。本物のUFOが来た、奇跡が起こったのだ!
 まあ、アニメには、ありがちな物語。しいて言えば、サリーが、涙の門出にしたくないため、都会にデザイナーとして出陣することを、あいには、話していなかった。他のみんなは、知っていたのに・・・。サリーから「あいに会って、都会に行く事を、泣かずに話すことが出来ないと思ったので、話さなかった。出発を涙ではじめたくなかったから」との手紙が届く。このシーンは,思わずジーンときた。麗しい友情である。最初から最後まで、のどかな感じで終われたアニメ映画でした。

衝撃を受けた映画

2006年12月11日 00時21分19秒 | Weblog
 映画を観ていて、過去、自分の感情を揺さぶられたシーンや台詞がありますね。
私の衝撃的な映画は次の通りです。まだ、映画を観はじめのころで、『猿の惑星』の最後のシーンに衝撃を受けたことを覚えています。宇宙飛行士テイラー(チャールトン・ヘストン)は、宇宙を旅し、ある惑星に漂着した。そこは、猿が支配している世界で、人間は下等動物であり、しゃべることもできず、単なる狩りの対象となっていた。そこに突然、人間でありながら、しゃべれるテイラーが出現したことに最高幹部たちは恐れおののく。テイラーは、最後に行ってはいけないという禁断の場所に赴く。そこにあったのは、海岸の砂浜に半身埋もれていた「自由の女神」であった。なんと、ここは自分の故郷である地球だったのだ。「誰が、こんなことをしたんだー!」とテイラーは泣き崩れるのであった。核戦争を引き起こしたことで、すべての高等人類は死滅してしまった。その後に、猿が進化し支配していた地球だったのだ。なんとばかげたことをしたのだろうと、本当に衝撃を受け、やるせない気持ちになりました。
 人類は、今、進化の最高峰にいますが、おごってはいけないのです。地球という完璧な自然連鎖の中に、単に、生かされているだけなのです。自然やそこに住む生物たちとの調和の中でしか、平穏は無いはずです。このことを、十分感じて、生きていくよう努力したいですね。

今年の感動台詞

2006年12月10日 11時50分25秒 | Weblog
 映画やドラマ、小説でも、色々な感動の言葉や台詞がある。映画での主人公の言葉や台詞が、制作者の一番の思いを代弁する事が多い。色々な場面でも、伝えられない気持ちや意味が、その言葉・台詞の中に凝縮されている。この一言が、珠玉の言葉として、一生忘れられない事もある。こんな言葉や台詞を、各年でピックアップし、自分の思いや糧として、記憶に留めていきたいと思う。映画生活のWebの中のスレに、みんなからこれを募集していた。私は、すかさず、この言葉を投稿した。「出来るのが多いのが良くて、少ないのが悪いって訳じゃないの。自分の出来る事を一生懸命やればいい」。これは、TVドラマ『僕の歩く道』で、草なぎ剛が扮している大竹輝明が、母・里江(長山藍子)から人生訓的に教えられた台詞である。このドラマは、先天性自閉症を発症している輝明が、森山動物園(実際は、千葉市動物公園で撮影)で一生懸命動物の飼育係りとしてがんばっていくドラマなのです。自閉症であるため、最初はみんなから違和感ある眼でみられるが、一生懸命自分の出来る事(自閉症なので、一般の人より出来る事が少ないのです)をやることで、みんなが忘れていたものに気づかされていく・・、そんな心温まるドラマである。単に、勉強ができる、社会的な地位がある・・・そんな事より、自分自身がどう生きるかが重要であると気づかされる。そんな中での、珠玉の言葉なんです。
「自分の出来る事を一生懸命にやる」、やれる事の多寡には関係ない。このこと、実践していますか?自分に問いかけてみて、どうですか?出来ない事を、さも出来るように偽っていませんか?やることに、純粋に一生懸命ですか?・・・・・。
本当に、考えさせられてしまいますね。少なくとも、輝明は、自分に正直に、このことを実践しています。周りから見れば、それは、ものたりない、至らない水準かもしれない。出世を一生懸命に考えている園長(大杉健)は、「僕はありのままの自分であった事がないような気がする」と自分を省みています。日々、上の上司ばかりみて、本来の自分とは違う次元に無理やり自分を追い込む。こんな生き方で、幸せと言えるんでしょうか?園長も輝明の、そんな純粋な行動に心打たれていく。
 本当に感じ入ってしまう名言であると思い、私の今年一番の感動した台詞となりました!
 しかし、本ドラマでも登場しましたが、レッサーパンダの双子(ドラマでは、グッピーとマーボに命名)が可愛かったですね!!

今週も多忙!

2006年12月10日 00時30分45秒 | Weblog
 先週は、本当に多忙であった。歓送迎会、忘年会、試写会に観賞会で、毎日のスケジュールが一杯であった。その為か、通常、土曜・日曜には、かなりのDVDを借りてきて、観賞するのだが、今回は1本も借りていない。それだけ、体力的にバテたということか・・・?今は、本当にDVDを借りるのに、重宝している。と言うのは、近くにオープンしたGEOが、新作・準新作・旧作を問わず、1本100円のレンタルで済むからだ。新作は、2泊3日、準新作以降は7日間のレンタルが可能。ツタヤの1/3以下の料金で借りれるのがうれしい。まだ、当分この料金設定でレンタルを継続してくれるらしい。本当に、感謝!感謝!である。先週の映画は、『タイフーン』『長い散歩』だったが、本当に感動できた作品にもめぐり合えたので、充実の週だった。
 今週も、試写会が来ている。『どうぶつの森』『ダーウィンの悪夢』『ブラザーズ・オブ・ザ・ヘッド』の3本です。日程をうまくやり繰りして、観賞に臨まねばならない。ダーウィン~は、アフリカの評判・名誉を著しく阻害するため、アフリカ諸国から上映反対運動まで起こっている社会問題をテーマにしたドキュメンタリー調映画であるだけに、ぜひとも観賞したい作品。ブラザー~は、結合体双生児ロックスターの栄光と悲劇を綴った映画。うーん、どちらも興味が尽きない作品である。時間をうまくやり繰りして、観賞しよう。観賞後、また、本ブログに内容や寸評を掲載したいと思う。

映画『長い散歩』の余韻

2006年12月09日 02時14分42秒 | Weblog
 昨日の試写会『長い散歩』の思いや感動や感慨が、頭をよぎる。本当に色々考えさせられる映画でした。幼女・幸を救う旅、本当は松太郎の自分探しの旅でもあったのだろう。学校の教職者であることの責任や仕事に一生懸命だったことで、家庭を顧みる余裕も時間も無かった。本当は、そんな生き方でよかったはずは無い事を松太郎は十分感じていたんだろう。虐待されている幸を救うこと、それは、普通の父親らしいことを、自分の娘にしてあげることも出来なかった謝罪の念からだったのかも。幸が熱を出し、道で倒れたとき、必死に背負い、町医者に連れて行く。木賃宿で、寝ている幸の額の熱さまし手ぬぐいを水に浸しなおし、また、乗せてあげるシーンや心閉ざしていた幸が、自分の布団に忍び込んで、「おじちゃん、幸の事、嫌い?」と聞く。抱きながら、「ううん、大好きだよ」と泣きながら、言葉を返す松太郎。思わず、涙が溢れてしまう場面であった。幸のつらかった事への同情が愛情に変わり、こんな愛情を自分の娘にさえかけてやれなかった自分への恨みや嫌悪が錯綜し、松太郎の涙になったのでは・・。
 非常線を張っていた岩井刑事の目の前に、手をつなぎ、山へ向かう二人がいた。
この時、「山に登ったら、必ず降りてくるしかない」と言って、若い刑事を制止させる。後に、若い刑事が、岩井刑事に言う。「(虐待して親らしいことをしていない若い母から救っている松太郎を感じ)これって本当に犯罪なんですかね」とこぼす。岩井刑事も「あの二人の後姿を見ていたら、そっとしておいてやりたいと思っちまってな・・」。本当に、事象だけ見ての判断で、犯罪と決めていいのか?と言う強い思いがこみ上げてくる。しかし、幸を虐待していた母親に、岩井刑事が「あんた、本当に母親か?母親らしいことをしてあげれないのか?」と聞くシーンがある。その時、この母親が言う。「刑事さんは、幸せなんだねー。そんな幸せに生きている人間に分かるわけ無いよ。私たちのことなんか。私だって、両親のしてきた通りにしているだけなんだから」。この母親も、かつては幸同様の被害者だったのだ。ひとくくりに、良いもの・悪いものの区分けが、つかないように思う。今の加害者は、かつての被害者なんだ。現代社会で問題になっている「いじめ問題」も同様であるような思いになる。
 次第に心を開いていく幸に感動です。すぐにかんしゃくを起こしていたこの子が、普通の女の子になっていく。ワタルが、一時道中を一緒にしたが、ワタル自身も幸と同じ悲しみを背負っていたので、幸の気持ちが良く分かったのだろう。幸は、松太郎よりも早く、ワタルに心開き、これまで見せなかった笑顔になる場面が多かった。しかし、ワタルは何者だったのだろう?何故、ピストルを持っていたのか?自殺するときに、何故、微笑みながらだったのだろう?本当に分からない。自分で思い、考えるしかないのだろうが・・・。
 最後のシーン。松太郎は自首しようと警察署へ。しかし、幸との約束「私を一人にして、どっかに行かないで!」は、守れそうに無かった。そのため、「さっちゃん、ごめんな、おじちゃんは(自首するので、幸とはもう一緒にいられないんだ)」という思いからの号泣シーンとなるのだが・・・。
 松太郎が刑務所で服役している間、幸は元の親に戻されているだろうから、本当にそれで良かったの?また、虐待されてないの?松太郎の娘は?
 本当に、思いが幾重にもなり、重い気持ちになる映画だった。

深い映画『長い散歩(a long walk)』試写会

2006年12月08日 23時34分37秒 | Weblog
 奥田瑛ニ監督舞台挨拶付き試写会『長い散歩(a long walk)』に行ってきました。さすがに、本物の奥田瑛ニは、ダンディーでかっこ良かったですね!奥田監督は、「映画のアピール対象はどんな人たちですか?と映画を作ると聞かれますが、この作品は、若者も、年配者も、男性も女性も、本当に分け隔てなく感じるところがあると思います。この映画の対象者はすべての人たちです。」と挨拶の中で話していました。奥田監督の話の通り、本当感慨深い、奥の深い映画でした。
 最初のシーンは、婦人・節子(木内みどり)の葬儀後の祭壇のところから始まる。安田松太郎(緒形拳)が「この家はお前にやる」と一人娘の亜希子(原田貴和子)に言う。「私がこの家を欲しいとでも思ったの。この人殺し」と亜希子。松太郎は、学校の校長を退職した状況。それまで、家庭を顧みず、中学の亜希子が万引きで補導されると、「校長の娘が万引きかー」とひっぱたく父親だった。母・節子
が子育てに悩んでいた頃も、全く松太郎は関知せず、節子は重度のキッチン・ドランカーになり、入院、そして病院で息を引き取るのである。常に何の優しさをもかけずにいた父を亜希子は憎んでいた。松太郎は、自宅を出て、安アパートに移り住む。しかし、隣には、自分の幼い娘・幸(サチ)(杉浦花菜)を幼稚園へも行かさず、衣服の洗濯もしない、靴も買ってあげず、その上、虐待している若い酒場勤めの女・横山真由美(高岡早紀)が、ひもの男と暮らしている。幸は、毎日のように虐待され、体はアザだらけ。本当に母親の愛情を知らず、孤独な毎日を送っていたのである。こんな状況を見かねた松太郎は、ある時、決心をする。この子が夢にまで見ている白い鳥が飛ぶ素晴らしい青い空、白い雲を見せてあげようと!松太郎の本の中に、一枚の写真が入っている。青い空、雄大な山をバックに、家族3人が楽しそうに写っている写真。その裏には「おーい君 おーい天使 おーい青い空 -
松太郎」と直筆で言葉が記されていた。この時の思いを取り戻しに、北アルプスの見える山へと幸を連れて行く。幸の背中には、いつも天使の羽(自分でお遊戯のために作った紙の白い羽)が背負わされている。松太郎とこの壮大な旅を始めて、幸の心にも次第に人間的な優しさが芽生えていく。田舎の駅で、列車を待っていると
風来坊の青年ワタル(松田翔太)に出会う。彼は、ザンビアからの帰国子女。「アフリカにいた時に、まどの外を見ると、毎日、多くの人の死体が転がっている。本当に貧しくて、餓死していく人たちが毎日倒れている。そんなことがあって、引きこもりになっちゃった。」と自分の身の上話をするワタル。旅を一緒にしたいと彼からの申し出に、旅をすることに。ある時、大衆食堂で食事をしていると、「ゴト」と音がして、何かが床に。ワタルの服から、ピストルが落ちた。「それは本物か。何に使うんだ!」叫ぶ松太郎。「それを寄こさなければ、この旅はここまでだ!」。ワタルは、テーブルの上にピストルを置く。周囲の人たちがびっくり。急いで隠す松太郎。このシーンは、唯一笑える場面であった。翌朝、松太郎が目覚めると、ワタルがいない。不安を感じ、探しに行こうとする松太郎に、幸が「私を一人にしないで。私も行く」と懇願する。探していると、ワタルは川の淵に背を向けて座っていた。「ワタル!」叫ぶ松太郎たちに振り返るワタル。そして、笑顔で「さよなら」を言いながら、ピストルをこめかみに。「ドキューン」。「なんで、どうして、お前には、これからの無限な可能性があったのに、なんてことをしたんだ!!」と大声で、号泣。何故、ワタルは自殺したのか?しかも、笑いながら?その背後にあるものは、観賞側が推測せねばならない。その場から逃れるために、幸を連れ、松太郎は走る。やがて、警察も松太郎が誘拐したことを突き止め、非常線を張る。指揮を執るのは岩井刑事(奥田瑛ニ)。二人が歩む足取りを追求していく。ヒッチハイクしたトラックのTVで、自分が誘拐犯であり、幼女を連れ去っていることをニュースで知る松太郎。公衆電話で、「この旅を終わらせようと思っているので、せめて後2日時間をください」と懇願する松太郎。「だめだ、すぐに自首しなさい。あなたのやっている事は犯罪なんですよ」と岩井刑事。「犯罪。何を言ってんだ。こんな幼い子を毎日虐待している事のほうが犯罪ではないか。警察なんだから良く調べろ」と言って受話器を切る。やがて、松太郎がかつて家族と来た青い空の見える場所に到着。幸の目に、青い空、白い雲、白い大鷲の飛ぶ姿が。
この後、二人は上尾張駅の警察署の前で。「さっちゃん、ごめんな。おじさんはもう・・・・。」ひざを崩し、泣きながらうずくまる松太郎。「おじちゃん、どうしたの」を何度もすがりながら言う幸。やがて、沢山の人だかりとなる。びっくりした警察署の守衛が近づく・・・・。次のシーンは、松太郎が刑務所を出所する場面。そこには、幸の出迎えの姿が・・・、しかし、これは幻影であった。
バックには、井上陽水作詞・作曲の「傘がない」を歌う女性ハスキー・シンガー「UA」の歌が流れる。「いかなくちゃ、君に会いにいかなくちゃ、だけど、傘が無いーーー♪」
 本当に、深く感じ入ってしまう映画です。幸の閉ざされた心が、次第に旅の中で開かれていく、笑顔を取り戻していく、これまで人を信じることを拒んできた気持ちが変わっていく。松太郎と幸の人間愛、松太郎も忘れていた人生を省みる旅、本当に拍手喝采の映画です。
 試写会を終わって、会場を出ると、送り迎えを奥田監督がしていた。私は、「本当に素晴らしい作品でした」と言って握手を求めた。奥田監督も、キリっとした顔で握手に応じてくれた。感激でした!!


『タイフーン』を観賞してきました。

2006年12月07日 22時55分20秒 | Weblog
 『タイフーン』を観賞してきました。クァク・キョンテク監督、チャン・ドンゴン、イ・ミヨン、イ・ジョンジェ出演のアクション映画です。北朝鮮から両親、親戚一同で脱北・亡命をしようと韓国の仲介業者に頼み実行しようとするが、この韓国仲介組織に裏切られ、北朝鮮の秘密警察に取り押さえられる。しかし、集団で逃亡を図ろうとしたため、次々に射殺され、姉弟の子供二人だけが、逃亡に成功。弟(チャン・ドンゴン)は、この恨みを増幅し、海賊の首領にまで上りつめて行く。いよいよ、裏切り者の韓国人を壊滅させるため、放射能物質を大量に極秘ルートから集め、20年に一度来る大型のツイン・タイフーンの気流に乗せ、風船爆弾化し、投下させようとタイフーンの目に貨物船を走らせるのである。これに対し、アメリカ国防省より選任された大尉が阻止しようと、動くのだが・・・。
 しかし、南北問題等に焦点を当てた映画であるが、脱北時の韓国の裏切りで、これほど大規模な放射能爆弾を用意し、韓国人の殺戮に動いたり、しかも、タイフーンに爆弾を風船化して、投下させようとは、あまりにも話が飛躍しすぎであるし、戦略自体がチャチであるように感じた。タイフーンの中に突進する貨物船や軍事用ヘリコプターの映像は迫力あるが、内容とのチグハグは否めないように思う。再会する姉弟、貨物船の中での、決闘シーンも映像が凄いだけに、ストーリーに比して、何でと感じざるを得ない。
もう少し、映画の内容を重厚にすべきだと強く感じた。