奥田瑛ニ監督舞台挨拶付き試写会『長い散歩(a long walk)』に行ってきました。さすがに、本物の奥田瑛ニは、ダンディーでかっこ良かったですね!奥田監督は、「映画のアピール対象はどんな人たちですか?と映画を作ると聞かれますが、この作品は、若者も、年配者も、男性も女性も、本当に分け隔てなく感じるところがあると思います。この映画の対象者はすべての人たちです。」と挨拶の中で話していました。奥田監督の話の通り、本当感慨深い、奥の深い映画でした。
最初のシーンは、婦人・節子(木内みどり)の葬儀後の祭壇のところから始まる。安田松太郎(緒形拳)が「この家はお前にやる」と一人娘の亜希子(原田貴和子)に言う。「私がこの家を欲しいとでも思ったの。この人殺し」と亜希子。松太郎は、学校の校長を退職した状況。それまで、家庭を顧みず、中学の亜希子が万引きで補導されると、「校長の娘が万引きかー」とひっぱたく父親だった。母・節子
が子育てに悩んでいた頃も、全く松太郎は関知せず、節子は重度のキッチン・ドランカーになり、入院、そして病院で息を引き取るのである。常に何の優しさをもかけずにいた父を亜希子は憎んでいた。松太郎は、自宅を出て、安アパートに移り住む。しかし、隣には、自分の幼い娘・幸(サチ)(杉浦花菜)を幼稚園へも行かさず、衣服の洗濯もしない、靴も買ってあげず、その上、虐待している若い酒場勤めの女・横山真由美(高岡早紀)が、ひもの男と暮らしている。幸は、毎日のように虐待され、体はアザだらけ。本当に母親の愛情を知らず、孤独な毎日を送っていたのである。こんな状況を見かねた松太郎は、ある時、決心をする。この子が夢にまで見ている白い鳥が飛ぶ素晴らしい青い空、白い雲を見せてあげようと!松太郎の本の中に、一枚の写真が入っている。青い空、雄大な山をバックに、家族3人が楽しそうに写っている写真。その裏には「おーい君 おーい天使 おーい青い空 -
松太郎」と直筆で言葉が記されていた。この時の思いを取り戻しに、北アルプスの見える山へと幸を連れて行く。幸の背中には、いつも天使の羽(自分でお遊戯のために作った紙の白い羽)が背負わされている。松太郎とこの壮大な旅を始めて、幸の心にも次第に人間的な優しさが芽生えていく。田舎の駅で、列車を待っていると
風来坊の青年ワタル(松田翔太)に出会う。彼は、ザンビアからの帰国子女。「アフリカにいた時に、まどの外を見ると、毎日、多くの人の死体が転がっている。本当に貧しくて、餓死していく人たちが毎日倒れている。そんなことがあって、引きこもりになっちゃった。」と自分の身の上話をするワタル。旅を一緒にしたいと彼からの申し出に、旅をすることに。ある時、大衆食堂で食事をしていると、「ゴト」と音がして、何かが床に。ワタルの服から、ピストルが落ちた。「それは本物か。何に使うんだ!」叫ぶ松太郎。「それを寄こさなければ、この旅はここまでだ!」。ワタルは、テーブルの上にピストルを置く。周囲の人たちがびっくり。急いで隠す松太郎。このシーンは、唯一笑える場面であった。翌朝、松太郎が目覚めると、ワタルがいない。不安を感じ、探しに行こうとする松太郎に、幸が「私を一人にしないで。私も行く」と懇願する。探していると、ワタルは川の淵に背を向けて座っていた。「ワタル!」叫ぶ松太郎たちに振り返るワタル。そして、笑顔で「さよなら」を言いながら、ピストルをこめかみに。「ドキューン」。「なんで、どうして、お前には、これからの無限な可能性があったのに、なんてことをしたんだ!!」と大声で、号泣。何故、ワタルは自殺したのか?しかも、笑いながら?その背後にあるものは、観賞側が推測せねばならない。その場から逃れるために、幸を連れ、松太郎は走る。やがて、警察も松太郎が誘拐したことを突き止め、非常線を張る。指揮を執るのは岩井刑事(奥田瑛ニ)。二人が歩む足取りを追求していく。ヒッチハイクしたトラックのTVで、自分が誘拐犯であり、幼女を連れ去っていることをニュースで知る松太郎。公衆電話で、「この旅を終わらせようと思っているので、せめて後2日時間をください」と懇願する松太郎。「だめだ、すぐに自首しなさい。あなたのやっている事は犯罪なんですよ」と岩井刑事。「犯罪。何を言ってんだ。こんな幼い子を毎日虐待している事のほうが犯罪ではないか。警察なんだから良く調べろ」と言って受話器を切る。やがて、松太郎がかつて家族と来た青い空の見える場所に到着。幸の目に、青い空、白い雲、白い大鷲の飛ぶ姿が。
この後、二人は上尾張駅の警察署の前で。「さっちゃん、ごめんな。おじさんはもう・・・・。」ひざを崩し、泣きながらうずくまる松太郎。「おじちゃん、どうしたの」を何度もすがりながら言う幸。やがて、沢山の人だかりとなる。びっくりした警察署の守衛が近づく・・・・。次のシーンは、松太郎が刑務所を出所する場面。そこには、幸の出迎えの姿が・・・、しかし、これは幻影であった。
バックには、井上陽水作詞・作曲の「傘がない」を歌う女性ハスキー・シンガー「UA」の歌が流れる。「いかなくちゃ、君に会いにいかなくちゃ、だけど、傘が無いーーー♪」
本当に、深く感じ入ってしまう映画です。幸の閉ざされた心が、次第に旅の中で開かれていく、笑顔を取り戻していく、これまで人を信じることを拒んできた気持ちが変わっていく。松太郎と幸の人間愛、松太郎も忘れていた人生を省みる旅、本当に拍手喝采の映画です。
試写会を終わって、会場を出ると、送り迎えを奥田監督がしていた。私は、「本当に素晴らしい作品でした」と言って握手を求めた。奥田監督も、キリっとした顔で握手に応じてくれた。感激でした!!
最初のシーンは、婦人・節子(木内みどり)の葬儀後の祭壇のところから始まる。安田松太郎(緒形拳)が「この家はお前にやる」と一人娘の亜希子(原田貴和子)に言う。「私がこの家を欲しいとでも思ったの。この人殺し」と亜希子。松太郎は、学校の校長を退職した状況。それまで、家庭を顧みず、中学の亜希子が万引きで補導されると、「校長の娘が万引きかー」とひっぱたく父親だった。母・節子
が子育てに悩んでいた頃も、全く松太郎は関知せず、節子は重度のキッチン・ドランカーになり、入院、そして病院で息を引き取るのである。常に何の優しさをもかけずにいた父を亜希子は憎んでいた。松太郎は、自宅を出て、安アパートに移り住む。しかし、隣には、自分の幼い娘・幸(サチ)(杉浦花菜)を幼稚園へも行かさず、衣服の洗濯もしない、靴も買ってあげず、その上、虐待している若い酒場勤めの女・横山真由美(高岡早紀)が、ひもの男と暮らしている。幸は、毎日のように虐待され、体はアザだらけ。本当に母親の愛情を知らず、孤独な毎日を送っていたのである。こんな状況を見かねた松太郎は、ある時、決心をする。この子が夢にまで見ている白い鳥が飛ぶ素晴らしい青い空、白い雲を見せてあげようと!松太郎の本の中に、一枚の写真が入っている。青い空、雄大な山をバックに、家族3人が楽しそうに写っている写真。その裏には「おーい君 おーい天使 おーい青い空 -
松太郎」と直筆で言葉が記されていた。この時の思いを取り戻しに、北アルプスの見える山へと幸を連れて行く。幸の背中には、いつも天使の羽(自分でお遊戯のために作った紙の白い羽)が背負わされている。松太郎とこの壮大な旅を始めて、幸の心にも次第に人間的な優しさが芽生えていく。田舎の駅で、列車を待っていると
風来坊の青年ワタル(松田翔太)に出会う。彼は、ザンビアからの帰国子女。「アフリカにいた時に、まどの外を見ると、毎日、多くの人の死体が転がっている。本当に貧しくて、餓死していく人たちが毎日倒れている。そんなことがあって、引きこもりになっちゃった。」と自分の身の上話をするワタル。旅を一緒にしたいと彼からの申し出に、旅をすることに。ある時、大衆食堂で食事をしていると、「ゴト」と音がして、何かが床に。ワタルの服から、ピストルが落ちた。「それは本物か。何に使うんだ!」叫ぶ松太郎。「それを寄こさなければ、この旅はここまでだ!」。ワタルは、テーブルの上にピストルを置く。周囲の人たちがびっくり。急いで隠す松太郎。このシーンは、唯一笑える場面であった。翌朝、松太郎が目覚めると、ワタルがいない。不安を感じ、探しに行こうとする松太郎に、幸が「私を一人にしないで。私も行く」と懇願する。探していると、ワタルは川の淵に背を向けて座っていた。「ワタル!」叫ぶ松太郎たちに振り返るワタル。そして、笑顔で「さよなら」を言いながら、ピストルをこめかみに。「ドキューン」。「なんで、どうして、お前には、これからの無限な可能性があったのに、なんてことをしたんだ!!」と大声で、号泣。何故、ワタルは自殺したのか?しかも、笑いながら?その背後にあるものは、観賞側が推測せねばならない。その場から逃れるために、幸を連れ、松太郎は走る。やがて、警察も松太郎が誘拐したことを突き止め、非常線を張る。指揮を執るのは岩井刑事(奥田瑛ニ)。二人が歩む足取りを追求していく。ヒッチハイクしたトラックのTVで、自分が誘拐犯であり、幼女を連れ去っていることをニュースで知る松太郎。公衆電話で、「この旅を終わらせようと思っているので、せめて後2日時間をください」と懇願する松太郎。「だめだ、すぐに自首しなさい。あなたのやっている事は犯罪なんですよ」と岩井刑事。「犯罪。何を言ってんだ。こんな幼い子を毎日虐待している事のほうが犯罪ではないか。警察なんだから良く調べろ」と言って受話器を切る。やがて、松太郎がかつて家族と来た青い空の見える場所に到着。幸の目に、青い空、白い雲、白い大鷲の飛ぶ姿が。
この後、二人は上尾張駅の警察署の前で。「さっちゃん、ごめんな。おじさんはもう・・・・。」ひざを崩し、泣きながらうずくまる松太郎。「おじちゃん、どうしたの」を何度もすがりながら言う幸。やがて、沢山の人だかりとなる。びっくりした警察署の守衛が近づく・・・・。次のシーンは、松太郎が刑務所を出所する場面。そこには、幸の出迎えの姿が・・・、しかし、これは幻影であった。
バックには、井上陽水作詞・作曲の「傘がない」を歌う女性ハスキー・シンガー「UA」の歌が流れる。「いかなくちゃ、君に会いにいかなくちゃ、だけど、傘が無いーーー♪」
本当に、深く感じ入ってしまう映画です。幸の閉ざされた心が、次第に旅の中で開かれていく、笑顔を取り戻していく、これまで人を信じることを拒んできた気持ちが変わっていく。松太郎と幸の人間愛、松太郎も忘れていた人生を省みる旅、本当に拍手喝采の映画です。
試写会を終わって、会場を出ると、送り迎えを奥田監督がしていた。私は、「本当に素晴らしい作品でした」と言って握手を求めた。奥田監督も、キリっとした顔で握手に応じてくれた。感激でした!!