共通テーマ「贋」でAが書いた詩を投稿します。
苦虫の衣
生まれ出たとたん真綿に包囲され
何かを真似た高い声であやされる
もがいて脱ぎ捨てても
辛抱強い大人に着せ掛けられる衣が
君の皮膚に、肉に、骨になろうとする
そうやって君は培養され成長する
幻の生産に余念がない人々は
年中作っている贋の織物で
世界を覆いつづけている
どうであれ現実は真実
人は自然の一部なのだから
人が作る不自然なものごとも自然な真実
世界中を幻想の織り模様で粉飾するのだ
古い織物の上に柄を変えた織物が
ところどころねばつきながら
幾層も疎に密に重なっていく
激しく巡る風が飛ばしても
辛抱強く着せ掛けられる
先祖代々の思想に侵略された黄土色の家族が
生存のためひとつの職場に集う苔色の仲間が
いない場所で
君は肌色の虫になる
苦い言の葉を噛み砕き
吐き出し紡ぎ世界に託す
費消されくすむものを装わず
幻想の一部になるのを免れつづける
―いつもにこやかなのに
ひとりになると苦虫を噛んだような顔をするんだね―
見つかってこう言われたら
人違いですと返事する
苦虫の衣
生まれ出たとたん真綿に包囲され
何かを真似た高い声であやされる
もがいて脱ぎ捨てても
辛抱強い大人に着せ掛けられる衣が
君の皮膚に、肉に、骨になろうとする
そうやって君は培養され成長する
幻の生産に余念がない人々は
年中作っている贋の織物で
世界を覆いつづけている
どうであれ現実は真実
人は自然の一部なのだから
人が作る不自然なものごとも自然な真実
世界中を幻想の織り模様で粉飾するのだ
古い織物の上に柄を変えた織物が
ところどころねばつきながら
幾層も疎に密に重なっていく
激しく巡る風が飛ばしても
辛抱強く着せ掛けられる
先祖代々の思想に侵略された黄土色の家族が
生存のためひとつの職場に集う苔色の仲間が
いない場所で
君は肌色の虫になる
苦い言の葉を噛み砕き
吐き出し紡ぎ世界に託す
費消されくすむものを装わず
幻想の一部になるのを免れつづける
―いつもにこやかなのに
ひとりになると苦虫を噛んだような顔をするんだね―
見つかってこう言われたら
人違いですと返事する