575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

色なき風句会   麗

2019年09月19日 | Weblog
ようやくしのぎやすくなった昨日、9名の参加で句会が行われました。
初めての季語「色なき風」「風の色」に挑戦しました。目にはみえない秋の風の色をどう表現するかで、皆さん苦戦しましたが、句座にもようやくさわやかな秋風が吹いた一日でした。
それでは恒例の一言講評です。


①晩鐘や色なき風に響きおり

信濃比叡の天台宗のお寺で鐘をつきました。「ご~ん」という鐘の音がいつまでも風にのって響きました。秋のちょっと淋しい感じと晩鐘を合わせました。

②乱読のページめくるか秋の風

やや乱雑に置いた本のページをパラパラと秋風がめくります。風も本を読んでいるのでしょうか?

③エアコンの風は何色秋暑し

機知に富んだ面白い句。まだまだ暑い秋の日。本当にエアコンの風って何色なのでしょうか?水色?

④窯跡に拾うひとひら風のいろ

かつては活気のあった陶磁器の産地。窯跡の陶片をそっと手に取る。秋の光に映えて風の色が目に見えるようです。「ひとひら」がいいですね。

⑤風景画絵筆自在に風の色

目にみえない風を画家は自由自在に色をつけて絵にします。風を描けるなんて素敵ですね。印象派の絵を思い出しました。

⑥見舞不要の友の便りや秋の風

敢えて「見舞いは不要」という友の本心はいかに?そんなに病状が重くない感じがして救われる気持ちも。一方、なんとも言えぬうら淋しい秋の風が吹き抜けます。

⑦手のひらの透けて色なき風の過ぐ

思わず「手のひらを太陽に」を歌い出したくなる一句。自分の存在を確かめたくなります。風の感触を俳句にされました。「手のひらに」とするとまた違った趣も。

⑧子供らの声高らかに秋の風

さわやかな一句。「高らかに」にもう一工夫欲しいところ。

⑨秋風や先祖のそばの犬の墓

ユニークな一句。今やご先祖より犬の方が大事にされます。秋風に皮肉を込めました。

⑩秋風やわが身の憂い奪いされ

下五の「奪いされ」を何か違う言葉にして欲しいという声がありました。

⑪薬師寺塔あかねだちたる風の色

夕焼けの美しい奈良。薬師寺の塔が茜色に染まります。それを風の色として詠まれました。「薬師寺や」と切った方がいいとの指摘あり。

⑫色なき風光る鋼の大正池

透明感あふれる硬質な水面を鋼と表現されました。「風光る」は春の季語なので、「大正池光る鋼の風の色」としてはどうか?という推敲も。

⑬秋風や嬉し寂しい滑り台

情景は目に浮かびますが、「嬉し寂しい」にもう一工夫をという声あり。

⑭追憶のメモリー起動秋の風

メモリー起動という言葉が斬新です。ただ、追憶とメモリーが同じことなので、何か違う言葉にしてはという声がありました。「失恋のメモリー起動秋の風」

⑮路地の奥露草色の風揺れる

ひっそりとした路地に露草が揺れています。秋の風という季語はありませんが季感があるのでいいのでは?「路地の奥」にもう一工夫欲しいところ。


⑯狭き門色なき風の濁りけり

医学部の女子を不正に不合格にした問題か?あるいは韓国の一件か?とにかく風が濁るのが問題です!世評を表す一句。作者の意図はアメリカの大学の裏口献金問題でした。グローバルな一句となりました。


⑰服そろえ秋の初風待つメール

デートでしょうか?楽しいお出かけ?秋風とともに返事のメールを待っています。


いかがでしたでしょうか?
紀友則の
「吹き来れば身にもしみける秋風を色なきものと思ひけるかな」から出た言葉。
中国では秋風の色は白とされたそうですが、色なき風と言った昔の日本人の感性はすばらしいと思いました。
実際には色はついていないけれど、俳句の中ではさまざまな光景に多彩な色が目に浮かびました。
想像力を働かせて風に色をつけていく作業は難易度は高かったけれど面白かったです。

さて、来月は物思いにふける秋。
お題は「秋思」と決まりました。
10月16日(水)午後1時20分 愛知県芸文センター会議室Dでお待ちしています。




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