わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

質問3 青磁釉の厚掛け方法

2013-03-27 14:15:02 | 質問、問い合わせ、相談事

kiyoshi様より以下のご質問を受けました。(2013-3-25)

自宅で陶芸活動を行っている者です。青磁の綺麗な貫入を皿ではなく壺など縦型の作品に出す

にはどの様な方法があるのでしょうか?厚掛けしないと貫入が入らないし、厚掛けすると自重で

流れ過ぎる。薄掛けや温度を下げると綺麗な貫入が入りません。

何か良い方法は有るのでしょうか。よろしくお願いします。

 

明窓窯より

青磁釉は厚掛けする事により、青に発色する釉で、還元焼成により得られます。

貫入は、土と釉との収縮率の差(釉>土)によって、釉に「ひび」が入る事をいいます。

土(主に粘土)と釉との関係で、細かい貫入から大きな貫入(氷裂青磁など)まで色々あります。

さて、質問の要旨は、以下の二つの問題では無いかと思います。

  (または一方かも知れません。)

1) 釉を厚く掛ける事が出来ないと言う施釉上の問題。

2) 焼成時に厚掛けにした釉が流れ落ちて仕舞う問題。

   この問題の解決には、釉の問題(流動性、熔融性及び、ご自分で調合か、市販の釉か。)、

   焼成の問題(焼成温度、焼成時間、窯、他の作品の有無など)など複雑に関係しています。

ここでは、1)に付いてのみお話しますので、質問の趣旨が2)の場合には、改めてお問い合わせ

下さい。その際できるだけ、詳細な状態を示して頂けると、より的確なお話が出来ると思われます。

1) 釉を厚く掛ける方法。

  ① 施釉の現象(原理):すでにご存知の事と思いますが、お話します。

    素焼きした作品に釉を掛けると、1分もしない内に表面が乾き、直ぐに持てる様になります。

    これは、作品本体が溶けた釉の水分を吸い取る為です。

    それ故、本体が水分を吸収できなければ、いくら厚く釉を掛けても、上に載せられず、ただ

    流れ落ちるだけです。

  ② 施釉の方法。

   ) 浸し(漬け)掛け: 最も一般的な方法で、釉が均等な厚みに掛ます。

      一度の作業で、上手に施釉できる利点があります。

      但し、他の施釉方法と比べ、多くの水分を吸収し易いです。

   ) 流し(柄杓)掛け: 大物の作品の施釉する際に行われます。

      一度或いは二度三度と重ね塗りが可能です。特に異なる釉を重ね塗りする際には、便利な

      方法です。浸し掛けに次いで、水分を多く吸収し易いです。

   ) スプレー掛け(ガン吹き): 霧吹きを用いて施釉する方法です。

      少ない釉の量で施釉出来る事や、マスキングの方法で、好みの位置に違う色の釉を掛ける

      事が出来る利点があります。水分の吸収量は少なくなります。

   ) 刷毛塗り: 釉が斑(まだら)に掛かる為、余り一般的ではありませんが、作品によっては

      この方法が使われます。重ね塗りにはある程度の練習が必要かも知れません。

      なぜなら、重ね塗りの積もりが、下地の釉を剥ぎ取る危険があるからです。

      刷毛で塗ると釉は薄くなり勝ちです。

  ③ 本質問の回答。

   ) 青磁釉を厚く掛けるには、)の方法は向いていません。)~)の方法を取ると良い

      でしょう。

   ) 基本は薄い釉を数度に分けて塗る事です。但し、下地の釉が十分乾燥後に行わないと、

      釉は流れ落ちます。塗り重ねるに従い、本体の水の吸収率は低下します。

      更に、本体の肉厚が薄いと直ぐに飽和状態に成ります。表面の釉が乾いている様に見え

      ても本体が乾燥していない場合が多いですので、ある程度の時間を置いて施釉する必要が

      あります。但し、乾燥した釉の表面に濃い目の釉を掛けると、釉が剥がれる危険もあります

   ) 結論として、

    a) 流し掛けでは、2~4度程度の施釉とします。但し、徐々に施釉する間隔を長くする

      必要があります。

   b) スプレー掛けは、水分の吸収が他の方法より少ない為、全体を均一に施釉した後再度

      施釉する事が可能です。但し3~6度塗りと回数を増やすに従い、時間を置く必要があり

      ます。但し、霧状の飛沫が飛びますので、それなりの設備や、少なくともマスクは必要です。

   c) 刷毛塗り: 以下は著名な作家さんの施釉方法です。参考にして下さい。

     茨城県在住の浦口雅行氏は、貫入が虹色に輝く青磁を発表し、浦口青磁と呼ばれる作品を

     作っている注目の作家ですが、その施釉の方法が刷毛による方法だそうです。

     青磁釉は厚く塗るほど、色彩が重厚に成り貫入も大きくなります。厚みが薄いと細かな貫入と

     なり、素地の影響を強く受ける様になります。

    ◎ 青磁釉は乾かしながら何度も塗り重ねます。多い時には10~15回程重ねるそうで、

      一回の施釉では0.2~0.3mm程の厚みに成ります。

      縦に長い作品では、下部を手に持ち、上部を刷毛塗りし、ストーブで乾燥後、上部を持って

      下部に施釉する事を繰り返します。

以上 お役に立つ回答になっていないかも知れませんが、不明な点がありましたら再度お問い合わせ

下さい。

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