1) 素焼きをする理由 (前回の続きです)
② 素焼きは施釉と密接に関係しています。
) 生掛け焼成は作品が破損し易い為、完成数が少なくなります。(歩留まりが悪い。)
) 生掛けの問題点(素焼きの利点)
陶芸では一般に、素焼き後に施釉する事が多いと述べましたが、陶芸家の中には好んで
生素地に施釉する人も多く存在するのも事実です。その理由として、素地との密着度が
良い事が挙げられます。即ち、生素地では釉の中にある水分が、素地の表面から吸い
込まれる際、その水分が素地の表面の一部を溶かし、釉と粘土が融合する為密着度が
良くなります。即ち、素地の表面に釉が食い込みます。
但し、素焼きの場合でも表面に気泡が多く存在する為、釉の一部は素地に食い込みます。
・ 生素地での施釉や本焼きで焼成する際には、慎重に作業する必要があります。
それ故、一般には余りお勧めできません。
c) 生掛けで起こる問題点。
化粧土には、生素地用と素焼き用を使い分ける必要がありますが、釉には使い分ける
必要はありません。
イ) 生素地は、素焼き素地より水に弱いです。
施釉する方法には色々ありますが、一般的なのが「漬け掛け」、「流し掛け」です。
いずれも、大量の水に晒す事になります。それ故、生素地の場合には、なるべく短時間で
作業を終わらせるか、 時間を置いて数回に分けて、徐々に施釉する必要があります。
例えば、袋物の場合や大皿の場合、内側を施釉したら直ぐに外側を施釉すると、作品が
崩れる場合が有ります。丁度、化粧土を粉引きの方法で塗ると、作品が崩れるのと
同じ原理です。
・ 但し、スプレー(霧吹き)掛けの様に、徐々に釉を塗る方法で行えば、水分も少なく
上記の問題も解決出来ます。
ロ) 生素地は素焼き素地より、強度が低く、乾燥が遅く、吸水性も劣ります。
素焼きは結晶水までも取り除いた状態になっています。それ故、再度水に晒されても
元の粘土にも戻る事は有りませんし、機械的強度も格段に強いです。
更に、生素地では、水を吸うと体積が若干膨張し、機械的強度も落ちます。
施釉中に一気に膨張すれるので無く、水分が素地に浸透するに従い、膨張量が徐々に
増えます。その際には釉は水分が無くなり融通性はありません。その為、膨張と共に、
釉の表面に「ひび割れ」が発生し、最悪表面より剥離する恐れもあります。
ハ) 本焼き中に釉が剥離し易い。
素地に吸水性が劣る事は、水分の放出性も劣る事になります。
即ち放出には時間が掛かる事になり、長時間水蒸気が釉と素地の間に供給され続け
る事になりますので、これは、釉と素地を剥離する方向の力となります。
ニ) 生素地に施釉した場合、水分が抜け切る400℃程度までは、ゆっくり昇温させ
ないと、作品が爆発する可能性が大きいです。(素焼きの昇温速度と同じにする事)
一方、素焼き後に施釉した作品では、例え素地中に水分が残っていたとしても、
素地中の気泡や釉中の隙間を通って、速やかに外に排出されますので、どんどん
昇温させても、爆発の危険性はありません。
2) 素焼き時、及び本焼き時の粘土の質的変化について。
以下次回に続きます。