わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

騙しのテクニック9 二度焼き 3

2014-06-25 17:39:30 | 騙しのテクニック
5) 後絵後の二度焼き。

 ③ 無地の古陶磁に後染付けする。

  釉面に染付け用の絵の具(コバルト、呉須)で、絵を描き高温で再焼成すると、以下の様に

  成ります。

  ) 釉が熔けますので、釉の上に描いた絵が、若干流れると考えられますが、ほとんど流れる

    事は無い場合もある様です。但し、釉の流れ易さや、再焼成温度によっては、若干流れ、

    絵が滲む場合もあります。

  ) 筆で描いた絵は、釉の下に描いた通りに定着し、釉も絵の上を完全に覆います。

  ) 釉は艶(つや)や透明感が増します。

  ) 「カセ」や「貫入」に着いた汚れが可燃性の場合は、綺麗に無くなりますが、非可燃性の

    汚れは釉に取り込まれ、釉を汚す事に成ります。

  ) 陶器の「ニュウ」は再焼成で、広がり太くなる事が多いですが、磁器の場合には陶器程

    の変化はありません。

   ) こびり付いた土銹(どしょう)は無くなる場合が多いです。

 ④ 後色絵、後赤絵、後金彩に付いて。

  ) 無地や古染付けの陶磁器、又は上絵や金彩が薄くなったり、絵が剥落してしまった物を、

   商品価値を高める為に、後絵で赤絵(色絵)を施し、色絵窯(錦窯)を使い800℃程度の温度で

   再度焼成する方法です。尚、後で述べる様に、窯に入れずに後絵を施す方法もあります。

  ) 後絵の技法その物は、通常の上絵付けと同様ですので、困難でありません。

   但し、焼き物が焼かれた当時と同じ色調の絵の具が手に入る事と、描かれている絵の具と同じ

   絵の具が調合できる事、更には、同じ描き方(描き振り)が出来るかが難問に成ります。

   a) 白磁皿に柿右衛門様式の後絵施した偽の作品が、多く出回っている様です。

    図柄も柿右衛門様式で描かれていますが、色調や描写方法もオリジナルとは異なる様で、

    目の肥えた人には、後絵と解かるそうです。

   b) 染付けのみの磁器に、部分的に色絵で後絵を施した作品も多く存在しています。

    これらの作品では、染付けのみで絵が完成している為、後絵が邪魔になっている場合が多く

    構図的にも、不自然さが出るとの事です。(後絵が蛇足になっている)

   c) 本体が作られた時代と、絵柄が一致しない物もある。

    白磁の壷や大徳利などに、元禄美人を描がいてある物があるそうですが、壷や徳利の作ら

    れた時代(様式から判断する)と元禄美人がが流行した時代に「ズレ」があり不自然です。

  ) 窯に入れない方法。

   a) 「焼継ぎ」の方法。

    幕末から昭和初期まで盛んに行われていた方法で、現在ではほとんど見る事がなくなった

    方法です。「ニュウや割れ」などの傷を、低い温度で熔着する方法で、最も強力な接着

    方法と言われています。主に、大切な食器類の補修に使われ、茶陶器の直しには使われて

    いないとの事です。この方法で、後色絵を焼き付けます。

    後色絵の上に、白玉粉(鉛ガラスの粉、楽焼用の釉に使用)を置き、ガスバーナー等で

    加熱し焼き付けます。新たなガラス部分が盛り上がったり、上絵に泡が生じ易く、色調も

    異なる為、真作とは大きく異なります。

   b) 硬質ワックスを用いた後上絵付け。

    色絵の中で、本物の緑、黄、紫、藍色は、ガラス質で盛り上がった感じになっています。

    熔した硬質ワックスに絵の具を混ぜ、垂らす様にして作品に落として行きます。筆塗り

    同様の曲線も描く事が出来、色調や透明感や盛り上がり感も自然に見えます。

    更に、薄く塗る事で赤や黒などの色や、汚れや黒ずみ等の古色を付ける事も可能です。

    硬度も強く、爪で押しても凹む事はありません。

    ・ タイ、インドネシア、中国南部などの東南アジアを中心に、安南赤絵、呉須赤絵、

     明朝赤絵などの作品に多く見られるものです。

   c) 塗料を用いて色絵を描く。

     最も簡便な方法ですが、その場限りの誤魔化した物です。

     強い接着力は無く、布で強く拭いたり、爪で擦ると剥がれます。

     使われる色は、赤、黒、金など盛り上がりの無い平たい線が多いです。

以下次回に続きます。
コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 騙しのテクニック8 二度焼... | トップ | 騙しのテクニック10 二度... »

コメントを投稿

騙しのテクニック」カテゴリの最新記事