でなく「解体」。
『地方インフラ、維持より解体 人口減で市町村限界
【イブニングスクープ】 地域総合 2018/1/17 18:00日本経済新聞 電子版
人口減少が進む市町村で公共施設を縮小する動きが始まった。高度成長期につくられたインフラの老朽化が進む中、財政難で維持費もままならず施設を取り壊す自治体も出始めた。人口減少が激しい市町村を対象にした日本経済新聞の調査では5~10年後にインフラの新設をやめる自治体が5割に上る。身の丈に合わせて縮め方を探る動きが各地に広がる。
東京から車で2時間、多摩川の源流部にある山梨県小菅村は2017年3月、旧校舎や公民館などの公共施設を減らす計画をまとめた。活用が見込めない施設は処分するのが柱で、建物の階数や面積を減らす「減築」にも取り組む。利用の乏しい村民プールなどが解体の対象になる見通しだ。
公共施設を減らすのは更新などの費用が重くのしかかるため。維持・更新費は17~56年の40年間で165億円。1年当たり4億円は村予算の投資的経費3.4億円を上回る。村の担当者は「人口減少に見合った対応が必要だ」と話す。
JR四国バス(右)が運行を取りやめた区間を代行する町営バス。接続するバス停で住民は乗り換えが必要になった(1月5日、愛媛県久万高原町)
日本海に面した秋田県北西部の八峰町は公共施設の削減に着手した。17年3月に「廃校は需要がなければ順次解体する」との方針を打ち出し、17年度は老朽化した旧こども園など3施設を解体。統廃合した旧小学校2校も20年度末までに使い道が見つからなければ取り壊す方針だ。
同町では1970年代に集中投資した施設が今後、一斉に更新時期を迎える。人口が40年に4割減る見通しの中、このまま施設を保有し続ければ、35年度に約85億円の資金不足になるという。
多くの自治体は既存施設を維持したいと考えるが、実際は八峰町のように解体まで踏み込まざるをえないところが多い。「新規をやめる」とはしなかった自治体もインフラ新設には慎重だ。
京都府南部に位置する和束町は、住民の要望に基づく道路の新設では「原則、用地の提供を求める」という異例の方針を打ち出した。地権者が土地を無償で提供し、財源も国の補助金を活用するという。
府内の茶生産量の4割を占める宇治茶の一大産地だが、最近は耕作放棄地が増加。鉄道がないため大阪や京都市へのアクセスが悪く人口は10年で2割減った。「住民の要望にはできる限り応えたいが、今の財政状況では厳しい」(町総務課)のが実情だ。
人口減の影響は幅広く、バスや小売店など民間の事業者が撤退し、生活に支障をきたしている地域があるとした市町村は41%あった。こうした地域では民間の代わりに自治体がサービスを引き継いで提供している。
夏は避暑、冬はスキーで「四国の軽井沢」とも呼ばれる愛媛県久万高原町。この四国山地の山里と松山市を結んでいたJR四国バスは17年春、町中心部からさらに山間部に入る20キロの区間を廃止した。利用者減で採算が合わなくなったためだ。
廃止区間は1日60~70人が利用していたが、通勤通学の足がなくなれば町外への流出が加速しかねない。町は「主要な道路では公共交通を維持し、転出に歯止めをかけたい」として、代わりに町営のバスを運行。通学する学生や通院するお年寄りは今、町中心部で町営バスからJRバスに乗り換えて松山に向かう。
インフラ維持が難しくなる中、対策として都市部の自治体が進めるのが、公共施設や居住地を街中に集約するコンパクトシティーだ。費用がかかるため地方の市町村にはハードルが高いが、北海道美深町はまとまって住むよう一部で集合住宅化に取り組んでいる。
人口減は日常の公共サービスにも支障をもたらす。その対策の一つになるのが住民や民間など地域を挙げた取り組みだ。紀伊山地の奈良県川上村は、行政だけでは難しくなった高齢者福祉サービスなどを民間と手を組んで継続している。
村や民間が一般社団法人「かわかみらいふ」を立ち上げ、移動スーパーや宅配と組み合わせた高齢者の見守りや安否確認などのサービスを提供。出張診療所や健康教室、住民が集まる施設の管理も担い、住民の暮らしを支えている。
ただ街の集約は費用と時間がかかり、公共サービスを地域で支える取り組みにも限界がある。人口減少の影響は今後5~10年で深刻になるとみる市町村が多いが、それに備えた身の丈に合ったインフラや公共サービスの検討は待ったなしの状況にある。
調査の方法 最近5年間に人口が10%以上減った220市町村に日経リサーチを通じて17年秋にアンケート。175市町村から回答を得た。』
※その通り。なので、新設など、もってのほか!