京舞つれづれ

2016-12-19 15:46:36 | 日記

井上八千代著  岩波書店刊

今時、珍しい函入りの本である。装丁も、いかにも京舞の家元の著者に相応しい雰囲気がある。昔の歌舞伎役者の本には、凝った、しかし嫌味のないその人の人柄が出ている本が沢山あった。
それはともかくとして、京舞が現実に直面している難しさを痛感した。
第一に、井上流の舞は花街のお座敷芸である。つまり、流儀の存続は、京の花街が健在であることが重要な条件になる。ところが、今…。
それに加えて、舞を観る側の問題がある。地唄、義太夫、上方唄他、その詞章を理解してこそ舞の意味が分かるのだが、それを観る人に求めるのは、今は難しい。もちろん、分からないまま鑑賞する、というのも悪くはないのだが…これに付随して、地方(じかた)の減少という問題もあるのらしい。
三つ目。舞に限らず、芸の習得には途方も無い修練が必要なのだが、著者は六十余年弱舞っていて、まだ満足に舞うことは出来ないと言っている。一芸を極めるというのは大変なことなのだろう。
実は、私は都をどりにに凝ったことがあって、若いころ頃は毎年祇園甲部歌舞練場に通ったことがある。多分、その時、先代の舞い観た筈である。きちんと観ておけば良かった…。
舞踊に関心のある方はぜひ一読をお勧めしたい。とても…きれいな言葉遣いで書かれています。