伏見稲荷の暗号 秦氏の謎

2012-12-30 15:24:43 | 日記

関 裕二著   講談社刊

テーマはいい。しかし、このページ数(298頁)で消化するにはテーマが大きすぎる。著者が挙げたテーマのひとつは、乙巳の変以後歴史の表舞台から姿を消したのは何故か、である。もうひとつは、稲荷信仰と八幡神がなぜこれほどまでに日本全国に広まったのか、である。さらに、秦氏が被差別民族に貶められた理由である。
なかなかユニークなアプローチではあるけれど、決定的な根拠に欠けている。一応それらしき傍証が挙げられているが、資料のいいとこ取りで、しかも著者の主観が入り込みすぎている。二つ目のテーマに至っては、庶民の間に広まったプロセスが全く証明されていない。要するに、舌足らずなのである。
テーマはこれからの研究が待たれるものであるが、著者のアプローチは雑すぎて独りよがりのように思える。