おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

愛にイナズマ

2024-04-06 09:00:51 | 映画
3巡いたしましたが振り返れば重複して紹介した作品もあったようです。
記録を辿りながら思い出したものを引き続き紹介していきます。

「愛にイナズマ」 (2023) 日本


監督 石井裕也
出演 松岡茉優 窪田正孝 池松壮亮 若葉竜也
   仲野太賀 趣里 高良健吾 MEGUMI
   三浦貴大 芹澤興人 北村有起哉
   中野英雄 益岡徹 佐藤浩市

ストーリー
26 歳の折村花子(松岡茉優)は気合いに満ちていた。
幼い頃からの夢だった映画監督デビューが目前に控えていたからだ。
花子は突然いなくなった母を含む自分の家族をテーマに描こうとしていた。
花子の若い感性をあからさまにバカにし、業界の常識を押しつけてくる年上の助監督(三浦貴大)には困りものだが、空気は全く読めないがやたら魅力的な舘正夫(窪田正孝)と運命的な出会いを果たし、ようやく人生が輝き出した矢先…。
卑劣で無責任なプロデューサー(MEGUMI)に騙され、花子は全てを失ってしまう。
ギャラも貰えず、大切な企画も奪われた。
失意のどん底に突き落とされた花子を励ますように正夫が「夢をあきらめるんですか」と問いかける。
「そんなワケないでしょ。負けませんよ、私は」静かに怒りをたぎらせ闘うこと誓った花子が頼ったのは、10 年以上音信不通だったどうしようもない父(佐藤浩市)と兄の誠一(池松壮亮)、雄二(若葉竜也)だった。
正夫と家族を巻き込んだ花子の思いもよらない反撃が始まる。
そんな中で正子たちは海鮮レストランを営む則夫(益岡徹)から意外な事実を知らされる。


寸評
この映画は前半と後半に別れているのだが、映画監督として不当な扱いを受ける正子の悪戦苦闘ぶりからスライドして家族の相互理解と再生に変化していく。
その変化が非常に面白い。
前半部分は石井裕也の経験談か、あるいはグチとも思える内容である。
五社体制が京子だった時代では、専属監督、専属俳優の仕組みがガッチリしていて、監督を目指す人は助監督として何名かの先輩監督につき監督業を学んでいたのだと思う。
三浦貴大が演じる助監督の荒川はそんな時代の生き残りのような男である。
「こんなやり方ありえない、業界の常識だよ」と先輩風を吹かせ、なにかと理由付けを求めてくる嫌味な助監督だ。
嫌悪感を抱かせる助監督や原というプロヂューサーの存在は、いきなり監督デビューする若い映画作家たちの反撃とも思える。
正子は「監督は病気で降板しました」ってことにされて降ろされてしまう。
この正子のキャラクターは、石井裕也の処女作「川の底からこんにちは」における満島ひかりの佐和子と同じだ。
石井裕也はこんな感じの女性が好きなのかもしれない。
実際、満島ひかりとは結婚していた時期もあった。

後半の雰囲気はガラッと変わるが、ここからは面白い。
コロナ禍や闇バイトなど、今を騒がせる社会も描き込まれていく。
レストランで大ぴらに闇バイトの話をする奴は実際にはいないだろうと思われるが、長男を意識している誠一は注意にいきボコボコ(?)にされる。
彼はコロナ禍の振る舞いを注した学生と注意された男二人のもめ事を止めに入ってノックアウトされた正夫と同類だ。
まったく違う性格と思われた二人が、実は同じような気性の持ち主だったという事だろう。
見た目では分からないのが人の内面なのだ。
その内面性はコントロールの効かない行動を起こさせ、敬虔なクリスチャンである次男の雄二も「俺も行く!」と叫ぶ。
思いもよらなかったことが突然起きるのが人生で、人生はコントロール不可能なのだと言っているようでもある。
世界中が新型コロナに翻ろうされたこともそうなら、母親が突然いなくなったことそうなのだ。
そして人は普段から演技をしていて、自分の真実を隠している所がある。
争いを避けるために不本意ながらも同庁の笑みを帰すし、反論を避けるような所もある。

正子は手持ちカメラを持ち歩き、正夫はスマホを利用して撮影を行っているのだが、彼らのとる映像がサイズを変えて挿入される。
それは彼らが見て感じた真実の映像なのだろう。
家族崩壊は突然起きた予期せぬ出来事だったのかもしれないが、彼らは再生を果たしたように思える。
正子と正夫は雷に打たれたように、二人は突然愛を感じ始めるが、これから先は二人が紡いでいくことだ。
コントロールできないことは起きるが、完璧でなくてもある程度は何とかなるもので、「山よりでかいシシは出ん」であり「この世で起きたことはこの世で治まる」と言うことなのかな。


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