おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

白ゆき姫殺人事件

2021-04-02 07:56:17 | 映画
「白ゆき姫殺人事件」 2014年 日本


監督 中村義洋
出演 井上真央 綾野剛 蓮佛美沙子 菜々緒
   金子ノブアキ 貫地谷しほり 谷村夕子
   谷村美月 ダンカン 秋野暢子 生瀬勝久

ストーリー
長野県のしぐれ谷国立公園内で、化粧品会社のOL・三木典子(菜々緒)が滅多刺しにされ燃やされた遺体となって発見される。
テレビワイドショー『カベミミッ!』の制作を請け負う契約ディレクターの赤星雄治(綾野剛)は、知人の狩野里沙子(蓮佛美沙子)から三木殺害に関する情報を知らされると、その内容をツイートし始めTwitter上で注目される。
赤星は狩野から、三木に恨みがあり、事件の日から失踪している同僚・城野美姫(井上真央)の存在を知る。
評判の美人だった三木の事件は、いつしか勤務する会社の目玉商品になぞらえて「白ゆき姫殺人事件」とネット上で呼ばれるようになる。
赤星がワイドショーに取り上げるべく周辺に取材すると、地味で目立たない城野は上司の篠山聡史(金子ノブアキ)と交際していたが三木に彼を奪われていて、また同期として何かと比較される存在とされていた。
赤星は城野を犯人と断定して取材を進めツイートを続けてゆく。
やがて匿名の何者かが城野の実名や学歴までもネット上で暴露する中、赤星は彼女の故郷で取材する。
知人たちは子供の頃城野が放火騒ぎを起こしたことや、呪いの力を持っているという噂を話し、城野の両親も娘を犯人と考えカメラの前で謝罪する。
だが、小学校時代の親友で引きこもりの谷村夕子(貫地谷しほり)は、『赤毛のアン』の世界に浸っていた二人の少女時代、夕子をいじめる級友を改心させようとしたおまじないで火災を起こしてしまい、以来付き合いを禁じられたことなどを語る。
しかし放送された番組の内容は城野を犯人と決め付け、魔女のような女性であると強調するものになる。
ついに城野の大学時代を知る友人が番組に抗議文を送り、赤星の行動も上司にばれたためTwitterから遠ざかるが騒ぎは収まらない。


寸評
誤解、噂、中傷などは以前からあった社会での醜いコミニュケーション部分だが、今はネットワーク社会となってツイッターなどのSNSが加わり、その広まりの速さは想像を超えるものになっている。
そして従来は発信者が曖昧ではあるがある程度特定されたのに、ネットワーク社会は発信元が誰なのかわからないケースも多い。
SNSは真実も暴き立てたり、あるいは伝えたりもするが、デマや誤報も多いのも事実で、それによる被害も現実に発生している。
本作はそのような社会で、ひとりの女性が犯人に仕立て上げられてしまう怖さと、真犯人は誰なのかというミステリー性を追求した作品だが、どちらかと言えば、サスペンスよりも無責任なネット社会の恐ろしさとそこで巻き起こる人間ドラマがメインになっていて、結構面白く仕上がっている。
主要な登場人物である映像ディレクターをツイッター利用者に設定することで、ネットでの噂の拡散とテレビのワイドショーによるいい加減な放送を重ね合わせているのが興味深い。

事件そのものを描くのではなく、人々の証言から事件及び犯人像を浮かび上がらせるのは時々見られる手法ではあるが、そこにツイッターを絡ませているのが今時の作品だ。
マスメディアもインターネットも一緒になって人間を押しつぶしていく。
作り上げられた雰囲気は、両親ですら娘を信じられなくしていく。
「ゴメンな」と誤っても、失った信頼はそう簡単に取り戻せるものではない。

映画的に見れば、井上真央の城野美姫が犯人ではないことは当然のことで、今ここでそれを明かしてもネタバレにはならないと思う。
では誰が真犯人なのかはある程度推測され、殺された三木典子が「犯人はわかっているの」といった時点でほぼ確定する。
そのへんがサスペンス性をそいでいる原因だ。
むしろ人びとの証言による城野美姫の行動が、実はこうだったのだという描き方に興味がわいた。
城野が笑っていた理由とか、魔女であると誤解される振る舞いなどだ。

菜々緒の三木典子はイヤ味な女だが、入社式だかで彼女と並んだ井上真央の 城野美姫は本当に地味だ。
映画での彼女は本当に不運な女なのだが、井上真央はこんな役がよく似合う。
小池栄子あたりがやればまた違った印象の作品になっていたかもしれない。

ワイドショーが犯人と示唆した女性が関係なかったことに関して、一言訂正とお詫びを入れるだけで済ませてしまうのは、マスメディアの報道姿勢あるいは事件を劇場化して伝えるワイドショー番組を避難していたように思うし、最後に主人公が原始的な方法でコミュニケーションをとるのは、ネットワーク社会への警鐘のように感じられた。
城野の故郷へ謝罪に訪れた赤星を、暴走する車が危うく轢きかけるが、心配して運転席から出てきたのは城野で、その彼女に赤星は愚痴ってしまい、城野は「きっと何かいいことがありますよ」と励ます。
当事者同志なのにお互い顔も知らないでいるネット社会への皮肉だったのだろう。


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