おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

遥か群衆を離れて

2021-09-16 07:10:04 | 映画
「遥か群衆を離れて」 1967年 イギリス / アメリカ


監督 ジョン・シュレシンジャー
出演 ジュリー・クリスティ
   テレンス・スタンプ
   ピーター・フィンチ
   アラン・ベイツ
   プルネラ・ランサム
   フィオナ・ウォーカー

ストーリー
牧羊農民のゲイブリエルは、隣人のバスシーバに結婚を申し込んだが、きっぱりと断わられた。
その後ゲイブリエルは、すべての羊を失い、一介の羊飼いとして、ある農場に雇われた。
ところがこの農場の主人はバスシーバで、伯父の死で農場を受けついだというのだ。
この農場にはファニーという女中がいて、彼女は評判のよくないプレイボーイの軍曹トロイと結婚することになっていた。
結婚式当日、彼女は教会に来るのが遅れ、トロイの怒りをかって、この話は立ち消えになった。
バスシーバの隣人にボールドウッドという豪農の独身男がいた。
バスシーバが、からかい半分に恋文を送ると、彼の方は本気になってしまい、結婚を申し込んできた。
しかしバスシーバの心を深くとらえていたのはトロイで、やがて二人は結婚した。
しばらく後、ファニーが死に、彼女の死はトロイの心に深い悲しみと悔いを残した。
そしてトロイは、どこへともなく去っていき、消息のない彼を、人々は死んだものと思うようになった。
そして再びボールドウッドがバスシーバに求婚してきた。
男の熱意に負けて彼女もこれを受けいれ、盛大なパーティが開かれたが、その夜、トロイは帰ってきた。
ボールドウッドの銃が火をふきトロイは倒れた。
夫に取りすがり、気が狂ったように彼の名を呼びつづけるバスシーバ。
ボールドウッドは獄舎につながれる身となった。
それから八ヵ月。夫の墓の前で、バスシーバはゲイブリエルに会った。
彼はカリフォルニアに発つため、別れを告げに来たのだ。
長い間、一緒に働いていた人、というより、彼女にとってゲイブリエルは、もはやなくてはならない人だった。
ずっと昔、求婚を断って以来、何年になるだろう。
しかし、彼の変らない誠実な愛が、彼女の胸の中で大きく広がっていくのだった。


寸評
英国の牧草地帯と周辺の村の雰囲気がよく分かる描写はいいと思うのだが、映画の出来栄えがどうのこうのより描かれている内容がどうもしっくりこない。
僕にはバスシーバというヒロインがどうも悪女に見えてしまう。
自分に好意のある男を手玉に取るような所があるし、思わせぶりな態度を見せたりもする。
バスシーバへのゲイブリエルの求婚に対して伯母は言い寄る男はいっぱいいるのだと告げるが、バスシーバはわざわざゲイブリエルを追いかけてきて、その話を打ち消しながら結婚話に乗る気はない。
羊を失って破たんしたゲイブリエルがバスシーバの農場に雇われると、女主人としての態度があからさまだ。
当たらに農場主となったバスシーバは隣の農場主ボールドウッドにイタズラ気分で思わせぶりなカードを贈る。
ボールドウッドがその気になると、あれは冗談だったのだとあしらうが、まんざらでもなそうだ。
ボールドウッドに求婚されながらも若いトロイ軍曹に熱を上げる。
愛している苦しい胸の内を涙を流して打ち明けられても、こちらとしては彼女に同情する気持ちは湧いてこない。
それどころか、なんて浮気性な女なんだと嫌悪感すら湧いてきてしまう。
結局トロイ軍曹と結婚するのだが、夫が溺死したとの知らせを受けるとボールドウッドには6年後に死亡が認定されれば結婚すると約束する。
バスシーバの恋愛物語なのだろうが、この変節にイマイチ乗り切れないものがある。

バスシーバがトロイ軍曹に熱を上げるようになるのが突拍子過ぎて盛り上がりに欠けている。
トロイのどこに魅かれたのか、どのようにして愛し合うようになっていったのかが省略されているように感じるので、僕はバスシーバの気持ちにも冷ややかな目線しか送れない。
トロイは本当にファニーを愛していたのだろうか。
協会を勘違いして結婚式に間に合わなかったことでトロイはファニーとの結婚を破棄している。
お腹に彼の子供が宿っていることを知らなかったのだろうか。
それにしては死産した子供は大きく育っていた。
トロイのバスシーバからファニーへ気持ちが戻る変節もよくわからない。
一途に相手を思い続けているのはゲイブリエルとボールドウッドだけである。
ファニーが惨めに死んでいき、トロイも死んでしまい、ボールドウッドは農場主でありながら獄中の身となる。
すべてがバスシーバがもたらしたことのように思うのだが、バスシーバは彼らを踏み台にして幸せを勝ち取った感じがしないでもない。

しかしだからと言ってバスシーバに対して決定的な嫌悪感が湧いてこない。
魅力的な女性が見せる思わせぶりな態度に翻ろうされる男の気持ちが分からぬでもないからだ。
好意を寄せる女性から甘い言葉をかけられれば舞い上がるし、イジワルとも思える言葉にオロオロしてしまう情けなさが男にはある。
女はそれで自惚れを満足させるのか、あるいは恋愛ごっこを楽しんでいるのか、小悪魔的な要素を持ち合わせているのが女だと思うし、そう思えばバスシーバは女らしい女だったのかもしれない。
しかし、バスシーバは僕の判断基準からすれば、よくわからない女性だったなあ。


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