おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ホワイトアウト

2023-03-23 07:58:02 | 映画
「ホワイトアウト」 2000年 日本


監督 若松節朗
出演 織田裕二 松嶋菜々子 佐藤浩市 石黒賢 吹越満 中村嘉葎雄
   平田満 橋本さとし 工藤俊作 古尾谷雅人

ストーリー
日本最大の貯水量を誇り、150万キロワットの電力を発電する新潟県奥遠和ダム。
辺り一面、雪に覆われた12月のある日、ダムの運転員・富樫輝男(織田裕二)は、遭難者救助の為に猛吹雪の中を出発するが吹雪と霧で作り出された視界0の世界「ホワイトアウト」に見舞われ、親友で同僚の吉岡和志(石黒賢)を亡くしてしまう。
それから2カ月後、吉岡のフィアンセ・平川千晶(松嶋菜々子)が奥遠和ダムを訪れた。
ところが、千晶がダムに到着したまさにその時、ダムと発電所がテロリストに占拠される。
犯人グループは、ダムの職員と千晶を人質に取って50億円を政府に要求。
拒否すれば人質を殺し、ダムを爆発すると通告してきた。
ダムが決壊すれば、下流域の住民20万世帯は一瞬のうちに洪水に飲まれてしまう。
期限は24時間、ダムに通じる唯一のルートは犯人グループが爆破しており、悪天候で警察は成す術もない。
そんな中、偶然逃げおおせた富樫は、仲間と住民を救うことを決意。
犯人グループの攻撃をくぐり抜けダムの放水を防ぐと、外部との連絡を取る為、たったひとりで8キロ先の大白ダムへと向かう。
富樫の連絡によって、犯人グループが宇津木(佐藤浩市)を中心とした過激派・赤い月であることが判明した。
しかし、未だ対策本部がダムへ乗り込むことは叶わない。
そこで、富樫は人質を救出する為、再び奥遠和ダムへ戻る。
その頃、ダムの方でも動きがあった。
犯人グループの中に、かつてテロで家族を殺された男が潜入していたのだ。
このことから、大きく崩れ始める宇津木の計画。
やがて、それは富樫の活躍によって完全に阻止され、千晶も無事救出されるのであった。


寸評
テレビでは一時期トレンディ俳優として人気のあった織田裕二と松嶋菜々子であるが、ぼくは二人とも上手い役者とは思っていないのだが、本作における役柄は彼等に合っていて特に織田裕二は頑張っていたと思う。
雪に閉ざされて要塞と化したダムをテロリストが襲うという発想は面白い。 日本版「ダイ・ハード」だ。

ダムに向かっていた車が襲撃されて平田満が射殺されるが、テロリストからすれば予定外の車で、当然同乗者の松嶋菜々子を射殺して邪魔者を取り除いてもいいはずだが、それでは映画にならないので人質にされてしまう。
単純に人質としているのは脚本的に少し無理のあるものだったのではないか。
もう一ひねり欲しかったところである。

テロリストの攻防と並行して描かれるのが警察内部の権力抗争である。
現場を知り尽くした地方警察と県警との対立で、県警はその立場を誇示し「指揮を執るのは我々だ」と恫喝する。
現場に口出しする上層部の姿は現実社会でも起きていることで、福島原発事故時の政府対応などはその悪い姿が出てしまった典型だったように思う。
逆パターンもあって、それは「突入せよ!あさま山荘事件」などで描かれていた。
本作では地方警察側を正として描いていて、その代表が中村嘉葎雄の警察署長だ。
かれはテロリストの行動に疑問を持ち、なぜ同志の解放を要求してこないのだといぶかる。
そして富樫がもたらしたテロリストの一人が、かつて彼らが起こした爆破事件の被害者家族であることが判明し、なぜそのような人物が加わっているのか疑問に思う。
その人物の目的は最後に明かされるが、この人物の描き方はアクションの陰に隠れて薄っぺらい。
この人物の描き方にも、もうひとひねり欲しかった。
そして署長は彼等の拠点の実態を見抜くのだが、先のことも含めここの盛り上がりも欲しかった。

富樫はダムの現場に精通しているのだが、そのことが発揮されたのは放水路を使った脱出時だけだったような気がするし、その脱出スペクタクルも省略されていたのは残念だった。
そこまでして状況を警察に通報したのだが、その成果は救出時に役立っただけで、あまり意味のないものになっていて、結局事件は富樫一人が解決したことになる。
富樫は職員の救出に奮闘するが、人質となった千晶は「彼はこない、彼は逃げる」とさかんにつぶやく。
それは婚約者である吉岡を見捨てたと誤解しているからなのだが、その誤解は彼女のつぶやきだけで表現されているので、最後にわだかまりが解けるエピソードはあっけない。
と、いろいろ欠点を挙げればきりがないのだが、それはこの作品が結構まとまっていて十分に楽しめる作品になっていたし、もう少し頑張ればアクション映画の傑作になる可能性を持っていたからの欲望である。

21世紀はテロの時代とも言われているけれど、日本でもそれは起こりうるのだと思わせる。
狭い国土にダムは点在しているのだから、それが爆破されたら下流の村は壊滅となってしまう。
存在する原発が襲われたらどうなるのか、原発の電源を切断されたらどうなるのか?
テロはどこでも起きうるのだから怖い世の中だ。
その時、富樫輝男のような人物がいるわけではないのだから。


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